【1723】 雨の日の過ごし方  (姶良 2006-07-26 18:08:29)




今日は雨が降っている。
まあ、一応傘を持っているけどまったく意味をなさないっていうか。
雨きつすぎ!
冬なのに雪じゃなくて雨が降るたぁどういう了見でぇ!
けど、そうも言ってられないけどね。
だって隣には今回の計画の鍵を持つ人物がいるのだから。

「で、なんで聖さまはこんな雨の降る中わざわざ駅前に呼び出したんですか?」
「祐巳ちゃんなら志摩子の好きなもの結構知ってるでしょ?」
「話が見えないんですけど。早く帰りたいんですけど」
「いいでじゃない。今度おいしいパフェに連れて行ってあげるから」
「なんなりとお申し付けください」

……扱いやすい…

「それで、今回の計画は名付けて『プレゼントをあげて志摩子とラブラブ大作戦!』。で、内容は…」
「いえ、もう大体分かりました」

……そして冷たい…

「志摩子さんの好きなものを聞こうと私を呼んだんですね?」
「いや、なんか私じゃ変わったものに目移りして変なもの買っちゃうかもしれないから。祐巳ちゃんに選んでもらおうと…」

すると祐巳ちゃんは私にVサインをしてきた。
なんだ?

「パフェ二つで手を打ちましょう」

まったく、たくましい娘に育っちゃって。

「わ…わかったわかった」
「まあ、一応聖さまはともかく志摩子さんには幸せになってもらいたいですし応援してるので頑張ってくださいね」

なんか気になる所だらけだけど、ま、いっか。しかし、味方が得られたとは…昨日志摩子の誘いを断ってまで来た甲斐があるってもんだよ。

ふと、目の前に傘をさしてたっている女の子が気になった。
さっき、からずっとコッチを見てる。
傘をさしていて顔はよく見えないけど、見た事があるきがする。
あの特徴のある長髪…まさか!

「し……志摩子?」
「お姉さま…どうして…」

ヤバイ!ヤバイって!
絶対誤解してるよ!

横には祐巳ちゃんがいるし、前日に明日は用事があると言って志摩子のデートを断ったと言う事も+αすると非常にまずい事になる。
それに…今日は雨だ。
マズイ…なんだかこんなシチュエーションごく最近聞いた事があるきがする。
…バサッ。
視点を空から志摩子へと戻すと志摩子が傘を落としていた。

落ち着け私。志摩子に誤解をされ、どこかに走られでもしたらまさにアレだ!
まず、最初の一言で私は何もやましい事をしていないと証明するんだ。

「し…ししし…志摩っ」

ど…動揺してるのバレバレじゃん!

ああ、志摩子そんなに信じられないと言う顔で私を見ないでぇ

口を金魚みたいにパクパクさせないでぇ


「お…ねえさ…ま…」
「…あ…あのね志摩子…これにはマゼラン海峡より深い訳がね…」
「…くぅ!」
「くぅ!って…ちょ…ちょっと志摩子!?」
走り出す志摩子を止めようとしたが、タッチのさで間に合わなかった。
志摩子の後ろを必死に追いかけるが一向に追いつけない、いや、むしろ離されてる気がする。
くっ、体育には自信があったんだけど……


「志摩子!ギンナン落としたよ!」


やけくそにいった私の言葉が聞こえたのか志摩子は雨で滑る中ハリウッドスターも裸足で逃げ出すほどの急ブレーキをかけてようやく停止した。

「ギ…ギンナン!ギンナンどこ!?」

やっと追いついたけど……

「ギンナン!ギンナン!ない!ない!ない!私の可愛いギンナンが!」

なんて声をかければいいんですか?
志摩子は必至に座り込んであるはずのないギンナンを探していた。
なんか眼が血走ってて滅茶苦茶怖いんだけど…

「あの…志摩子…?」

私の声にようやく我を取り戻したのか急に立ち上がった。

「…お姉さま!?…こ、これは違うんです!私と同じ名前の人が…そう!私と同じ名前の志摩子さんがギンナンを落としたと思って探してあげてたんです!」

いや、さっき私の可愛いギンナンって言ってたし、て突っ込むのはさすがに可愛そう…だよね…

「あ、うん、わかってる。それより私の話を聞いて」
「…祐巳さんとデートしてた事ですか?」
「ち…違う!あれは偶然駅前で出会っただけだって」
「…本当ですか?」
「ホントだって、私は志摩子に嘘なんてつかないよ」

祐巳ちゃんとプレゼント買いに行こうとしたなんていったら折角の計画が無駄になるから、死んでもいえない……ん?

あっちから来るのは…祐巳ちゃん?

「あ、やっと追いついた」
「祐巳さんごめんなさい、私早とちりしたみたいで…駅で偶然出会っただけなのに……」
「話見えないんだけど…」
「え?違うの?」

私の奥に眠っていた野生の勘が逃げろと言ってる気がする…

「うん、聖さまと一緒に買い物してただけだよ」

祐巳ちゃん、君は応援してくれるのか邪魔してくれるのか一体どっちなのかな?
いきなり私の右手に激痛が走った。
右手を見たら志摩子が私の手を握って…いや、掴んでいた。

「お姉さま…お姉さまはさっき私に嘘をつかないって聞こえた気がするんですけど、あれは幻聴だったんですか?」

一層右手に力が加わる。
プレゼントの事は死んでも言わないぞ!

「では、準備はよろしいですか?」
「な…なにの準備かな?」

プレゼントの事は死んでも…
私の意志は固いんだ死んでも…死んでも……死んでも…

「…天に召される前に言い残す事はありますか?」
「…あります」

その後約30分かけて説得した後ようやく仲直りする事が出来た…

説得してる中、気が付いたことがある…いや、多分気のせいだ…。

気のせいだと思うけど、私が志摩子に説得している最中に…

横にいた少女の口元がニヤリと弧を描いた…そんな気がする。








 ―――了―――



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