「祐巳ちゃん」
早朝に、マリア像の前で手を合わせていると楽しそうな声で呼びかけられた。
すぐ、誰かわかったがゆっくり振り返りってから返事をした。
「ごきげんよう。白薔薇さま」
「うん。ごきげんよう。祐巳ちゃん。
でも、白薔薇じゃなくて名前で呼んでほしいな」
「えっ!?どうしてですか?」
「んー名前で呼んでほしいからー」
そう言いながら、聖さまは抱きついてきた。
「ぎゃー、やめてください!」
早朝ではあるがちらほらにであるがこちらを見ているのだ。
「名前で呼ぶって約束してくれたら離してあ・げ・る」
「わ、わかりましたから離してくださいー」
そう言うと聖さまはすぐに体を離して言った。
「じゃー名前ではい」
そう、聖さまはテンポをとった。
「・・・聖さま。で、でもこんなに朝早くにどうしたのですか?」
「ちょっと、野暮用でね」
「野暮用ですか、良いんですか急がなくて?」
「大丈夫。野暮用って祐巳ちゃんにだから」
「へっ、私にですか?」
「そう祐巳ちゃんにちょっとね」
「はあ。わかりました。ところで野暮用とはお仕事ですか?」
「違うよー。私の個人的ことだよ」
聖さまは、笑いながら言った。
「ここで、すみますか?それともどこかに移動しますか聖さま?」
「んーここですむかは祐巳ちゃん次第だなー」
「えっ。私次第ですか?」
何なんだと、少し不安に思いながら聖さまを見るのだった。
「うんとね。祐巳ちゃんにお願いがあるの。聞いてくれる」
そう、聖さまは真剣に聞いてきたのだった。
「わかりました」
少しどきどきしながら次の言葉を聞いたが、
「あのね。祐巳ちゃんの妹にして」
その、すぐに言葉が出なかった。
言葉が出ないとは久しぶりの気持ちだったのではないか。
「な、何言ってるんですか!」
言いたいことがいくつもあって言葉にできないなんて初めのことだった。
「本気だよ、祐巳ちゃん。本気で妹になりたいの」
祐巳には聖さまがふざけてるようには見えなかった。が、
「聖さまは先輩で、私は後輩で、妹にできるはず無いじゃないですか。
それと、聖さまにはお姉さまがいるじゃありませんか。」
そう、聖さまにはっきり言った。
「大丈夫。お姉さまもわかってくれるから。」
そう言う問題じゃないはずなに冷静を失っていたのだろう。そのときには祐巳は全く気づかなったのだった。
「で、でも、聖さまは上級生です。」
う、負けそうです。お姉さま助けてー!
「それも、大丈夫。姉は上級生でなければいけないという規則は無いわ。」
そう、聖さまは胸を張って言った。
「そ、そうじゃなくて・・・」
「よし、そうと決まれば、紹介だ。じゃー薔薇の館にって、人いないかー」
嬉しそうに話し出したのだった。
「えっ、えー。何でそうなるんですか聖さま」
「ちがう。聖さまじゃなくて、聖ね。わかった、お姉さま」
「だから、えっ、なんで。」
もう、なんだかよく分からないまま手を引かれていく祐巳だったのでした。
おわり?