【1771】 スキンシップ増殖志摩子におまかせ  (C.TOE 2006-08-10 20:48:21)


【No:12157】いぬいぬさまのネタ提供に因る
【No:1753】の続き(らしい)



「大丈夫、乃梨子?」

志摩子さんが心配そうに乃梨子のひたいに手を置く。志摩子さんのやわらかい白魚のような指が乃梨子のひたいにそっと触れる。志摩子さんの何気ない行為にそれだけで乃梨子は熱くなる。

「大丈夫、大丈夫」

乃梨子は布団の中から応える。

「そう?
乃梨子、つらかったら正直に言ってね」

どうやら志摩子さんは、今日が乃梨子の旗日だと勘違いしたようだ。
本当は違うのだが、志摩子さんに本当の話をしても理解できるかどうか怪しい。それ以前に乃梨子が恥ずかしい。だから乃梨子にとっては非常に不本意ながら、志摩子さんには誤解したままでいてもらう事にした。

「こんな日にあたってしまうなんて・・・」

志摩子さんが乃梨子のひたいからそっと手を放す。
当然の行為なのに、乃梨子にはそれがなんとも心惹かれる、別ち難い行為に思えた。

「今日は乃梨子の代わりに私が小母さまを手伝うから」

メイド服の志摩子さんに萌えてしまった乃梨子は、リリアンの乙女にあらざる出血をしてしまった。
菫子さんは正確に洞察していたが、心配した志摩子さんはわざわざ布団を敷いてくれたのだ。志摩子さんに敷いてもらった布団に乃梨子が寝ないわけにはいかない。いそいそと布団にもぐり込んだ乃梨子は、これが大いなる誤りの第一歩だと気付いたのはもっと後の事だった。

「志摩子ちゃん、私の事はいいから、リコに付いていておくれ。
夕食の用意も下ごしらえは一通り終わってるから、そんなに手間かからないし」

菫子さんがなんだかニヤニヤしながら言う。これはあまり良くない兆候だ。まるで乃梨子のことをイジル道具を見つけたかのような―

それとは対称的に志摩子さんは「ありがとうございます」と答えている。
どこまでも人を疑う事を知らない、天使みたいな人だ。いや、乃梨子にとっては天使そのものだ。今も乃梨子専属の天使さまはメイド服を着て、枕元で心配そうに乃梨子を見つめている。その瞳はどこまでも澄み、表情は憂いで曇っている。
なんだか乃梨子はイケナイコトをしているような気になってきてしまった。志摩子さんに心配をかける―乃梨子にとってこれほど良心の呵責を覚える行為は無い。しかし布団に入ってしまった以上、いきなり「平気」とか言って布団から出るわけにもいかない。ここはしばらくおとなしく寝ているしかない。

「あ」

志摩子さんはポンと可愛らしく手を打ちながら、いきなり何か思い出したように枕元から立ち上がると、荷物の置いてある部屋の隅に行く。そして、「そう言えば、お父さまがコレも持っていけと・・・」と言いつつ、鞄からなにやら白いものを取り出した。そして躊躇無く、メイド服を脱ぎ始める。どうやら着替えるようだ。
・・・白、白。リリアンの制服は体形を覆い隠すので普段わかりにくいけど、志摩子さんは着痩せするタイプなんだよな。志摩子さん、Cは確実にある。Dぐらいあったりして。まさかE―

(全力回避ィー!!!)

乃梨子は咄嗟に反対側を向いた。
危なかった。
また自爆するところであった。

「コホン」

わざとらしい菫子さんの咳が聞こえた。乃梨子は菫子さんと目が合う。菫子さんは首を横に振った。仕方なく乃梨子は目を閉じた。

「お待たせ、乃梨子」

そう言って志摩子さんが戻って来た。
戻って来た志摩子さんは―

(和尚!!
私の志摩子さんになんて服渡してやがる!!?)

枕元にいたのは間違いなく天使さま。
白衣を着た天使さま。
なんと志摩子さんはナース服を着ていた。

「し、志摩子さん、その服・・・?」
「お父様が、こういう時はこれを着ろとおっしゃって。
・・・どうかして?」

頭にナース帽を乗っけて小首をかしげる志摩子さん。

(やば、鼻血出そう)

それほど現在の志摩子さんは破戒的に可愛かった。
白い服が白い志摩子さんに映えている。
これで志摩子さんに「お熱を計りましょうね」とか言われたら、乃梨子は間違いなく42℃を超す自信があった。

「どうしたの、乃梨子?目にごみでも入ったの?」

本当は鼻を押さえているだけなのだが、心配そうな表情で志摩子さんは無防備に乃梨子に近寄って来る。
マズイ。これ以上近寄られたら再出血しそうだ。

「ナンデモナイデスヨ?」

既に乃梨子はただの怪しい人になっている。
そしてこれも和尚の策謀だ。
それは乃梨子にもわかっていたが、どうしようもない。

「まー、これは可愛い。良く似合うね、志摩子ちゃん。
これならリコもすぐに良くなるでしょう」

菫子さんが感心したように言った。
たしかにナースエンジェル志摩子さんに看病してもらえば、癌だって治るだろう。
だが、乃梨子の現在の症状は潰瘍でも白血病でもない。
動悸・息切れ・めまい。救心でも治らない。

(やば、鼻血出そう)

慌てて乃梨子は違う事を考える事にした。このままでは再出血はまぬがれない。
こういう時は難しい事が良い。難しければ難しいほど良い。

(えーと・・・そうだ、瞳子。
瞳子、祐巳さまの申し出を断って・・・どうするつもりなんだろう。
瞳子が祐巳さまの妹になりたがってるのは間違いないのに。
なにが瞳子の行動を阻んでいるのか・・・?
祐巳さまも慎重なくせに、よく“後先考えずなんとなく”行動するからな。
タイミングが悪かったのかな・・・?
瞳子も意地っ張りだし・・・)

見事に動悸・息切れ・めまいが治った。救心もびっくり。
しかし今度は頭が痛くなった。半分が優しさでできているバファリンが欲しいところだ。
「・・・ぅー・・・今度は耐えるね」

「・・・え?菫子さん、何か言った?」
「いや、何も言ってないよ」

何も言ってない事はない。
確かに乃梨子は菫子さんの不穏当な台詞を聞いた。
この期に及んで菫子さんは何かする気だ。目がきら〜ん☆と輝いている。その輝きに乃梨子は、この人は間違いなく半世紀前リリアンの生徒であった事を再確認した。

「志摩子ちゃん。
リコ、思ったよりつらいみたいね。ちょっと協力してくれないかな」

菫子さんが行動を起こした。なにかする気だ。
それに対して志摩子さんは「私にできる事ならば」と言っている。本当に人を疑う事を知らない、天使さまだ。

「リコ、一旦起きてくれないか」
「え?」

今の菫子さんに乗せられたくはなかったが、志摩子さんが支えて乃梨子を起こしてくれようとする。乃梨子が志摩子さんに逆らえるわけがない。

(何をする気だろう?)

訝る乃梨子をよそに、菫子さんは枕をどかせた。

(枕をどかして何をする気・・・枕?まさか!?)

「さ、志摩子ちゃん、ここに座って」

菫子さんに言われたとおりに座る志摩子さん。
その場所は・・・

「さ、リコ。もう一度横になって」
「あの、枕というか、そこに志摩子さんが座・・・」

志摩子さんは枕元というか枕があった場所に座り、いまや素敵な乃梨子専用枕である。白くて綺麗な膝小僧が今の乃梨子には目の毒だ。

「志摩子ちゃん。リコのために協力してやってくれないかね」

素直に頷く志摩子さん。

「えーと、志摩子さん・・・?」

「乃梨子。いらっしゃい」



世界一の枕だった。
この枕で寝られるなら、両親妹を質屋に入れても惜しくはない。
後門の枕。
前門の志摩子さんの笑顔。その途中に志摩子さんの二つの胸のふくらみがある。このナース服はどうやら意外と体形がわかりやすいようだ。

「リコ、どうだい、具合は。
これならすぐに良くなるだろう」

菫子さんが言った。
たしかにナースエンジェル志摩子さんに膝枕してもらえば、肝炎だって治るだろう。
だが、乃梨子の現在の症状はB型でもC型でもない。そして目の前には志摩子さんの推定Dが―

「乃梨子!?」

自爆してしまった。
鼻から生温かいものが。

しかし乃梨子は動かなかった。
志摩子さんに膝枕してもらっているのである。
それも白衣の天使ナース服で。





我が生涯に一片の悔い無し!





あとがき

当初のプロットと全く違う方向を向いてしまったけど・・・おもしろいからいいか。
見なおしてみると・・・13禁(いろんな意味で)かな?


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