ミーン ミーン ミーン
「………暑い」
今時な感じでに言えば、超暑い。
でも言わない。お姉さまに怒られちゃうから。
まぁ、今はいないけど。なんとなくね。
夏が暑いのは当たり前であって。誰にも止められない。
クーラーやら扇風機やら、そういったモノを使えば楽にはなる。はずなのに……
クーラーは故障。扇風機からは温風しか流れてこない。
なんだろう。生き地獄?拷問?マリアさま。私何か悪いことしましたか?
「……乃梨子さん。暑いからといって独り言をブツブツ言わないで下さいますか?」
「そうね。こっちまでまいってしまいそうだわ」
そんな私に、友人2人は厳しい言葉をかける。瞳子と可南子さんだ。
夏休みの宿題をみんなで分け合って終わらせるという、学生らしい行動中な私たち。
さっきから瞳子は「だから私の家でやればよかったですのに!」とお冠だ。
可南子さんは可南子さんで、「暑い……部活中より暑い…」と時折呟く。
まるで、というかモロに私に聞こえるように。
でも、しかたないじゃないだろうか。せっかく友人と遊ぶ(?)んだ。自分の家に招きたいじゃないか。
幸いにも、菫子さんは夜まで帰ってこない。
「それに、暑いって言えばどうにかなるわけでもないでしょう?」
「瞳子、なんだかお母さんみたいな感じだね」
「アイス無いの?乃梨子さん」
って、勝手に冷蔵庫を物色するんじゃないよ。
「探しても無いよー。昨日私食べちゃったし」
「まぁ。じゃあ丁度いいじゃないですの!勉強も身に入りませんし、みんなで買いにいきません?」
逃げたいだけだろう瞳子は。なんて、口が裂けてもいえなかった。
だって、私も今の状況から逃げ出したいから。
で。可南子さんも二つ返事でOKをくれたので、みんなで意気揚々とコンビニに出かけることにした。
ミーン ミーン ミーン
「………暑い」
今時な感じでに言えば、超暑い。
でも言わない。お姉さまに怒られちゃうから。
まぁ、今はいないけど。なんとなくね。
夏が暑いのは当たり前であって…
「ちょっと、乃梨子さん!その独り言さっきも聞きましたわよ!」
「帽子も持ってこないで、よくやっていけるね」
可南子さんの言葉が痛い。瞳子は麦藁帽子。可南子さんはなんかかっこいい野球帽だ。
もちろん私は帽子なんか持ってきてなくて。太陽を甘く見ていたということか……
このまま直射日光を受け続けていたら、そのうち志摩子さんと瞳子の顔も見分けのつかない頭になってしまいそうだ…
「あれ、乃梨子さんの症状、ヤバい段階にはいってない?」
「まぁ、これは拙いですわね…って時に都合よくコンビニ発見ですわ!」
あぁ、なんだか瞳子のテンションが上がってる気がするけど、今の私には何かを言う気力も……
「ちょっと、乃梨子さん?顔真っ青よ?」
「とりあえず店内で寝かせておきましょうか」
お前ホントに親友かよ!!
……それが、乃梨子の最後の言葉だった。
「…なんて言葉を呟きながら起きるのよ貴方は」
気がついたら、私の部屋だった。というか、ベットの上だった。
私の横に座ってた可南子さんは、ガリガリくんを食べている。
「あ、やっと起きましたわね。はい、アイス」
瞳子はバニラのアイスを食べながら、私に近寄ってチョコのアイスを手渡す。
というか、寝起きの人間に普通に渡すのか。
「えっと、確かコンビニ前で瞳子が突然踊りだして…」
「どんな夢を見てたんですか!乃梨子さんがコンビニに入って突然倒れたから、心配したのに」
「まぁ、ちゃんとアイスも買ってきたけどね。勿論家までおぶってきたのは私だけど」
さすが可南子さんだな。なんて思いつつ、とりあえず拝んでおいた。ありがたやありがたや。
「ごめんね、まさかこんなに暑いとは思わなくてさ」
「もう、心配させないでくださいよ」
「まったくもって、その通りね」
なんて、友人2人の厳しい言葉を受けつつ、私もアイスを食べることにした。
「ところで瞳子」
「なんですか?」
これは、ツッコむ所なのだろうか。
「なんで私のアイス、半分以上溶けてるの?」
「乃梨子さんが心配で心配で……思わず冷やすのも忘れていましたの…」
なんか泣くフリしているけど、私が起きたときに普通にアイス食べながらテレビ見てたのを、私は知っている。
「わざとだろ!瞳子お前わざとだろ!!」
「そんな!冤罪ですわ!乃梨子さんのイジワル!!」
どこでそんな言葉覚えてきたんだ!なんてお父さんみたいな怒りかたしつつ、仲良く喧嘩する私たちを、
可南子さんは興味なさげに見ながら、次にはテレビに視線を移した。いいよね、冷静な人って☆
なんて事をしているともう夕方になっていて。
結局勉強少しも進んでないけれど、まぁ友情を深めれた――殴り合って確かめる、少年漫画的ではあるけれど――
からいいとしようかな。なんて思った夏の日だった。