初めて書いてみたクロスものです。
このお話は「serial experiments lain」の世界観を解釈していないと意味不明になります。
lainを知らない方はスルーしてください。(全員だったらどうしよう…)
「祐巳さまって、機械類は本当に苦手なんですね」
そういいながら、乃梨子は図書室にある端末のパソコンを操作して、目的の情報を探していた。
「ごめんね乃梨子ちゃん。
明日会議用があるでしょう。そのための資料を今日中にしあげなきゃならないの。
お姉さまに1週間前に頼まれてたんだけど…忘れてて…」
その言葉に乃梨子の指は一瞬止まる。が、すぐに何事も無かったかのようにキーボードの上を踊る。
そして、思った事を口に出してみた。
「今日中って…祐巳さまお1人では不可能だと思いますけど?
今探してる本だけでも、軽く20冊越えてるじゃないですか。
そこからさらに情報となる部分を探して書き出すとなると…祐巳さまだけだと一体どれだけかかるか」
「それって私がとろいってことかな?」
「いえ、何の比喩でもなく、誰であろうとこれだけの資料を1人で・しかも1日で纏め上げるのはまず不可能です。
薔薇さま3人が揃って徹夜すれば何とかなるかもしれませんが」
「そ・そんなにあるの!?」
「まぁ、手書きで・という条件でですけどね。
パソコンが使えれば1人でも何とかなるかもしれませんが…祐巳さまには無理ですよね」
「…うん…」
話しながらも、乃梨子の手はキーボードの上を動き続けている。
まるでピアノを弾くように、流れるようにタイピングをしていた。
祐巳は『すごいな〜』と感心する程度だが、見る人が見ればその速さはかなりのものだと感心しただろう。
「多分祥子さまは、祐巳さまなら1週間あれば出来る・とおもって頼まれたのではないでしょうか。
それで、どうなさるおつもりですか?
今日は志摩子さんが委員会で忙しいので、私でよければ手伝えますけど…黄薔薇さまや由乃さまは確か…」
「剣道の試合が近いから、練習…だったよね」
「結局、私と祐巳さましかいない・と…」
「ご、ごめんね。乃梨子ちゃん」
「いえ、乗りかかった船ですから」
しばらくキーボードを叩く音が響いたが、目的の物を探し終えたらしく、乃梨子はキーボードから指を離す。
と、祐巳が探していた資料が図書室のどこにあるかが書かれた紙が、接続されていたプリンターからプリントアウトされる。
…しかし、その紙は1枚だけではなく…10枚あった。
そこに書かれている本の総数となると、もう一桁は軽く上がるだろう。
「祐巳さま。これがお探しの資料の一覧です…が、やっぱり量が半端じゃないですよ。
祐巳さまが拒否しても絶対に手伝いますから!」
「ほ…ほんとにごめんね、乃梨子ちゃん」
「し・資料が遅れて、志摩子さ…お姉さまに迷惑がかかるのが嫌なだけです」
そういいながらも、乃梨子が照れているのは誰の目にも明らかだった。
「じゃあ、祐巳さまはここからここまでをお願いします。資料のある場所は、
私は、残りを作りますので」
そういって渡された紙は、先ほどプリントアウトされた中のたった2枚…つまり、祐巳が2割で乃梨子が8割を分担するということ。
「の、乃梨子ちゃん。さっき『薔薇さま3人で徹夜するくらい』って言ってたよね?
それなのにそんな量、絶対に無理だよ!」
下級生に頼んで・なおかつその8割を下級生に押し付けては…上級生として立つ瀬がない。
が、乃梨子は平気な顔をして、
「『手書きで』と付け加えたはずですが。
私は自宅にパソコンを持ってるので、これくらいなら何とかなります」
そういいながら、必要な情報を愛用のお守り型記憶媒体に転送してゆく。
「言っておきますが、それだけでも祐巳さまにとっては大変ですよ?
私はパソコンで資料を作りますのでそれほどではないですが、祐巳さまの場合…」
「うっ…ごめんなさい。私の資料っていつも手書きです」
「じゃあ後は、自宅のパソコンで資料を作ってきます。
情報はネットで検索できますし、ネットの知り合いに聞いた方が良いことも結構ありますから」
「えと…仏像好きな人って、コンピューターが得意なの?」
「…その一言で、祐巳さまが私の事をどう思ってるのか、完璧にわかった気がします」
「ご、ごめん、乃梨子ちゃん」
「冗談ですよ。
でも、その量を手書きでとなると、やっぱり徹夜は覚悟した方がいいと思いますよ。
では…ごきげんよう」
「ごきげんよう。乃梨子ちゃん」
乃梨子はプリントされた用紙とデータをかばんにしまうと、図書室を後にした。
閉めようとした扉の向こうから『図書室で走らないでください』という声が聞こえてきたのは、多分空耳ではないだろう。
その光景を想像して…くすっと笑ってしまう乃梨子だった。
「ただいま〜」
玄関の鍵がかかっていたのでわかってはいたのだが、部屋から返事がない事を確認すると、乃梨子は安堵のため息をついた。
「………今日は叔母様が留守でよかった。
この姿を叔母様に見られるわけには行かないから」
そう言いながらすぐに自分の部屋へ入り、椅子に座る。
目の前には愛用のパソコン。
いつもなら普通に電源ボタンを押すのだが、瞑想するかのように目を閉じ………目を開け…
「Hello Navi」
自分のパソコンに向かって一言呟く。
と…電源さえ入っていないはずのパソコンが、乃梨子の声に答えるかの様に自ら起動した。
そして…
『Hello lain』
乃梨子ではない声が、乃梨子ではない別の人物の名前を返してきた。
しかし、それが当たり前であるかのように、乃梨子は指示を出す。
「Connect Wired…」
『Connect』
すると、乃梨子の正面にしかないはずのディスプレイの画像が、まるで乃梨子を取り囲む様に何もない空間に何枚も何枚も現れる。
しかもそれらは全て異なる情報を表示し…乃梨子の言葉に従って、まるで明滅を繰り返すだけにしか見えないほどの速さで情報を流していた。
「…久しぶりだなぁ…この能力を使うのも…」
そんな非日常な空間にありながらも、乃梨子はそれが当然のように画面を見続けている。
瞳の中でも、文字としての情報が流れている。
…しかし…その指はキーボードの上を踊ってはいない…
にもかかわらず、コンピューターは乃梨子の思考を読み取っているかのように働き、作成された資料をプリントアウトしてゆく。
「前の世界では使いすぎて失敗したけど…今回は…」
山百合会の資料を纏め上げた頃には、日も暮れていた。
「ありがとう、ナビ」
『You're welcome』
と、玄関の方から声した。叔母が帰ってきたらしい。
たわいのない話が始まる。
夜
乃梨子はベッドに入る。
「おやすみ…ナビ」
『…おやすみなさい…lain』
そして、乃梨子が眠りにつくと同時に、パソコンはそれが見えていたかのように電源を自ら落とした。
TV版では祐巳の部屋にパソコンがあったけど…ど素人という事にしてしまいました。
訳のわからないお話でもうしわけありません。中の人が同じなのでつい…
あ、続きません♪(きっぱり)
書いてる途中でlainよりも灰羽二次で書いてみたいな〜・と思い始めた自分がいました(ABE関係の単語登録無くてよかった…)
…ラストは灰羽に頭が逝ってしまったので、尻切れ蜻蛉…
他の方とネタがかぶっているようでしたらご指摘頂ければ幸いです。