がちゃSレイニーシリーズです。
このお話はくま一号さんが書かれた「【No:160】乃梨子にお姉さまと決着」の続きとしてかかれています。
私は、今までのあらましを由乃さんたちに話した。
瞳子ちゃんが私に対して妹にして欲しいと言ってきたこと。
瞳子ちゃんが言ったあの台詞
その言葉に対して私が返した言葉。
飛び出していく瞳子ちゃんを追いかけられなかったこと。
瞳子ちゃんは乃梨子ちゃんが追いかけていったこと。
その乃梨子ちゃんに対しても何も言えなかったこと。
私の説明を聞いた由乃さんは、腕を組んだまま私のことをじっと見ていた。
「それで?」
由乃さんの行動を補足するかのように、令さまが、問いを投げかける。
「それでって?」
いきなり投げられた問いを理解できず、オウム返しに聞き返す私。
「決まってるじゃない。祐巳さんの気持ちよ。瞳子ちゃんを妹にしたいの?」
由乃さんがじっと私を見ながら静かに言った。
普段いけいけの由乃さんが私の心を確かめるように、静かにその言葉を口にした。
私は、その言葉にうつむいた。
今の私はその問いに「はい」とも、「いいえ」とも言えなかったから。
答えることのできない私を由乃さんはただじっと見つめていた。
結局、その日は何もせずに解散と言うことになった。
おやすみなさい。そう家族に声をかけて、電気を茶色にしてベッドに潜ったけれど、全然眠くなかった。
学校から家に戻るまでも、家に戻ってからも、そして今もあのときの瞳子ちゃんの言葉が、表情が私の中でぐるぐる回っていた。
よっぽどひどい表情をしていたのか 今日は家族のみんなから心配されてしまった。
原因はわかっている。でもどうすればいいか全く思いつかない。
「はぁ〜」
大きなため息がこぼれた。……正直どうすればいいか本当によくわからないのだ。いままで、瞳子ちゃんはお姉さま――祥子さまを見ていると思っていたのだから。
それが私のことを見てくれているだなんて夢にもおもわなかった。
瞳子ちゃんは私の言葉をほとんどちゃんと聞き入れてくれたことがなかった。
運動会の時も、祥子様と踊りたくて向こう側に回っていたと思ったし、演劇部練習を一緒にしようと誘ったときも、愚痴を言いに……云々って言ったときも、それが実行されることはなかった。
そして、今日瞳子ちゃんが言った言葉。
あれは、体育祭前に夕子さんを私に重ねてみていた可南子ちゃんが言った言葉とまるっきり同じ言葉だった。
だから、私は瞳子ちゃんが可南子ちゃんと同じように、私にお姉さまを重ねてみている。そう思った。
だから……。
でも、そのときの瞳子ちゃんの顔は演技じゃなかった。
このままではいけないと思ってるのは確かだ。でも、可南子ちゃんの時には、迷うことなく行動できたのに、なぜだか瞳子ちゃんに関しては、迷っている私がいる。
こういうとき真っ先に口を出してくれる由乃さんは、今回に限っては何も言ってくれなかった。
「何か言ってくれないの?」という私の言葉は、「祐巳さんが態度を決めかねているんだから、どうにもできないでしょ。瞳子ちゃんに関してこうしたいって言うのがあればいくらでも手伝うけど」というすごくまっとうな言葉が返され、その言葉に返す言葉を私は持っていなかった。
「もう、今日は寝よ」
大きくため気をついた後、2、3回頭を振って、瞳子ちゃんのことを頭から追い出し、目をつぶった。
でも、追い出したはずの瞳子ちゃんがすぐにやってきて目の前に次々浮かんだ。
そして、先ほどの考えがぐるぐると頭の中を巡ってしまう。
今夜は眠れそうにない。私は寝るのをあきらめて、ベッドから抜けだし部屋のカーテンを開けた。
夕方から降り続いていた雨が今もまだ降っていた。
窓に吹き付けられた雨が、涙のように流れっていった。
私はそんな様子を明け方近くまで何もせずにじっと見つめていた。
【No:224】へ続く