私は何かに祈りを捧げたことなど一度もない。
そうする必要性も感じないし、そうしたいとも思わない。
――けれど。
祈りを捧げている彼女を見るのは好きだった。
だからいつも、目を閉じて祈る彼女の横顔を
そっと、見つめていた。
「私、人よりお祈りする時間が長いんでしょうか?」
視線に気付いた彼女が、はにかんだように私を見上げて言った。
――どうして?
私がそう尋ねると
「だって、いつもお姉さまの方が先にお祈りを終えているんですもの」
そう言って彼女は微笑んだ。
本当の事を話してしまおうか……?
――いや、やめておこう。
もう少し、彼女の姿を見つめていたいから。