【1989】 分かってほしい  (杏鴉 2006-11-14 11:28:59)


私は何かに祈りを捧げたことなど一度もない。

そうする必要性も感じないし、そうしたいとも思わない。



――けれど。



祈りを捧げている彼女を見るのは好きだった。



だからいつも、目を閉じて祈る彼女の横顔を



そっと、見つめていた。





「私、人よりお祈りする時間が長いんでしょうか?」





視線に気付いた彼女が、はにかんだように私を見上げて言った。





――どうして?





私がそう尋ねると





「だって、いつもお姉さまの方が先にお祈りを終えているんですもの」





そう言って彼女は微笑んだ。








本当の事を話してしまおうか……?





――いや、やめておこう。





もう少し、彼女の姿を見つめていたいから。





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