『大きな扉 小さな鍵』より
ことの起こりは真美さんがバレンタインイベントの企画を薔薇の館に持ち込んできたことだった。
普段仲の良い白薔薇姉妹の意見がぱっくり割れた。
互いに仕事を押し付けあっているなんて意外すぎる。
と、思ったら………何だ何だ。このほんわかムードは。
お互いに相手が隠したカードを探したかったって。
結局。
白薔薇さんのところは、仲がいいと。
お互いに相手を大好きすぎて、すれ違っちゃったと。
ちょっとワクワクして損しちゃった。
っていうか
「ふざけるなー!」
どんがらがっしゃーん。
由乃はテーブルに両手を添えると、勢いよくひっくり返した。
いわゆるちゃぶ台返しというやつだ。
「人が白薔薇革命かと思って期待してれば! ノロケか! それとも私に対するあてつけか!!」
「よ、由乃、それはちょっと……」
何か言いかけている令ちゃんをキッパリ無視して由乃は祐巳さんに向き直った。
「祐巳さんも、なにか言ってやりなさいよ」
「へ?」
「瞳子ちゃんにふられたばっかりの身に、今の砂を吐くようなシーンを見せ付けられて何とも思わないの!?」
「ぐぱっ」
「ああっ! 祐巳、しっかりしなさい」
ああもう、何か言えといってるのに何をのん気に血を吐いてるのよ!
そりゃ、砂を吐くよりマシかもしれないけど。って、そんなことはどうでもいい!
今度は白薔薇姉妹をビシッと指さし言ってやる。
「見なさい。あんたたちのせいで祐巳さんがとんでもないことになってるじゃない!」
びっくりしたように固まっていた志摩子さんは気を取り直すと、何か言いかけた乃梨子ちゃんを制して由乃に向き直った。
「ええと、私だけ出来の良い妹がいてごめんなさい?」
「ケンカうってんのかー!!! しかもなんで疑問形!」
「さっきから何を怒っているの?」
「うがーっ!!!!!」
薔薇の館は今日も平和でした。
志摩子さんの、「好き」宣言以来、由乃さんと志摩子さんはなんだかとっても仲良しです。
「はっきり言い合える関係って、やっぱりいいわね」
「ええ、そうね」
爆発した由乃さんはとてもスッキリした顔をしていました。まる。