「……あぁ、やっぱり」
いつかこうなるだろうと思った。
いずれこうなるべきだと思っていた。
たとえどれほど想ってもあの人は自分の方を向いてはくれないと、知っていた。
だって、私は彼女に勝てないと知っていたから。
「…………、……、、…………」
「……、、、…………」
声は遠く、聞き取れはしない。
でも、その顔は。
泣きそうな、笑顔と。
溶け出しそうな、笑顔。
それは、二人とも幸せそうな。
笑顔。
私に向けられる事の無い、あの人の笑顔と。
あの人の想いを受け止められる人の笑顔。
うらやましい……
もちろん、そういう気持ちが無いわけではない。
でも。
よかった……
心から、そう思う。
あのまま、何も起こらないまま終ろうとしていた二人だから。
想いを通じ合わせる事ができてよかった。
私の内の醜い嫉妬も、何もかも溶かし尽くして、ただ私は祝福したい。
新しく歩み始める事が出来た、彼女達のその先に。
だから。
私は、私に出来る方法で祝福しよう。
彼女達に会うつもりは、私には無いし。
そもそも、私は知っていても、彼女達は私を知らない。
だから私は、二人に会うことなく。
この想いを、あの人に伝えることなくただ。
ただ、歌おう。
ステージでも歌う事になる讃美歌。
でも、私は……おそらく本番でこの歌は歌えないだろう。
これほどの歌は歌えないだろう。
抽象的な賛美が、何故心からの祝福に及ぶというのか?
私は、ただ歌い続ける。
今まで生きてきた人生の中で、最高の歌を。
ただ、二人の為だけに。
想いを伝えた。
想いを受け取った。
その想いは、ロザリオというカタチを取って、彼女の首にかかっている。
その想いは、ロザリオというカタチを取って、私の首にかけられた。
幸せだった。
幸せだった。
幸せすぎて、幻のようで、悲しくも無いのに、涙があふれてくる。
幸せすぎて、幻のようで、悲しくも無いから、笑顔があふれてくる。
私の大好きな栞。
私の大好きな聖。
涙でぬれる私の顔を、栞が拭ってくれる。
涙でぬれる聖の顔を、ハンカチで拭ってあげる。
抑えきれず、栞を抱きしめた。
抗わず、聖に抱きしめられる。
栞の腕が、私を抱きとめた。
腕を伸ばして、聖を抱きしめる。
もう、言葉なんて要らない。
もう、言葉なんて要らない。
栞の瞳を見つめる。
聖の瞳を見つめる。
栞の顔が近づく。
聖の顔が近づく。
<<重なる>>
私の想いと
私の想いと
栞の想いが
聖の想いが
<<一つになる>>
その瞬間を感じた。
ただ見つめあう、その瞳に映る私。
私に映る、その向こう側の貴女。
遠く、賛美歌が聞こえる。
私達のために歌っているわけではない。
その歌が、ただ、この瞬間の為だけに歌われている錯覚。
賛美歌の美しい歌声と、私の腕の中の貴女。
幸せというものを、初めてホントウに理解した。
笑いあう。
離さないと。
何処にも行かせないと。
誓い合う。
私は貴女のもの。
私は貴女のもの。
私達は……私達のもの。
もう、誰にも渡せない。
歌が聞こえる。
優しい歌。
でも少し哀しい歌。
祝福と、ほんの少しの、後悔。
……もう少し早く逢えていたなら……
それでも、彼女は心から祝福できているのだろう。
だって、彼女の歌は……
……こんなにも、綺麗なんだから。
後書き
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(とりあえず謝り倒し。
11月29日?
いつの間にこんなに時間が!?
な、状態です;;
と、とりあえず今回の説明をば。
聖が栞にロザリオあげたんです。
以上。
……と、言うわけにもいきませんよね?
初めの部分が静で、次に聖&栞……ここちょっと読みにくいかな……
最後に主人公の特権で祐巳に〆て貰いました。
あえて誰のパートかを判らなくしてあります。
……いや、普通に読めばばればれカモ知れませんけど……
まぁ、久しぶりにSSかいたってことで、見逃してください><