【2020】 伝えられなかった言葉もう少し早く逢えたら  (計架 2006-11-29 00:50:42)


「……あぁ、やっぱり」


いつかこうなるだろうと思った。

いずれこうなるべきだと思っていた。

たとえどれほど想ってもあの人は自分の方を向いてはくれないと、知っていた。

だって、私は彼女に勝てないと知っていたから。


「…………、……、、…………」

「……、、、…………」


声は遠く、聞き取れはしない。

でも、その顔は。

泣きそうな、笑顔と。

溶け出しそうな、笑顔。

それは、二人とも幸せそうな。

笑顔。

私に向けられる事の無い、あの人の笑顔と。

あの人の想いを受け止められる人の笑顔。


うらやましい……


もちろん、そういう気持ちが無いわけではない。

でも。

よかった……

心から、そう思う。

あのまま、何も起こらないまま終ろうとしていた二人だから。

想いを通じ合わせる事ができてよかった。

私の内の醜い嫉妬も、何もかも溶かし尽くして、ただ私は祝福したい。

新しく歩み始める事が出来た、彼女達のその先に。


だから。


私は、私に出来る方法で祝福しよう。

彼女達に会うつもりは、私には無いし。

そもそも、私は知っていても、彼女達は私を知らない。

だから私は、二人に会うことなく。

この想いを、あの人に伝えることなくただ。

ただ、歌おう。

ステージでも歌う事になる讃美歌。

でも、私は……おそらく本番でこの歌は歌えないだろう。

これほどの歌は歌えないだろう。

抽象的な賛美が、何故心からの祝福に及ぶというのか?

私は、ただ歌い続ける。

今まで生きてきた人生の中で、最高の歌を。

ただ、二人の為だけに。












想いを伝えた。
想いを受け取った。

その想いは、ロザリオというカタチを取って、彼女の首にかかっている。
その想いは、ロザリオというカタチを取って、私の首にかけられた。

幸せだった。
幸せだった。

幸せすぎて、幻のようで、悲しくも無いのに、涙があふれてくる。
幸せすぎて、幻のようで、悲しくも無いから、笑顔があふれてくる。

私の大好きな栞。
私の大好きな聖。

涙でぬれる私の顔を、栞が拭ってくれる。
涙でぬれる聖の顔を、ハンカチで拭ってあげる。

抑えきれず、栞を抱きしめた。
抗わず、聖に抱きしめられる。

栞の腕が、私を抱きとめた。
腕を伸ばして、聖を抱きしめる。

もう、言葉なんて要らない。
もう、言葉なんて要らない。

栞の瞳を見つめる。
聖の瞳を見つめる。

栞の顔が近づく。
聖の顔が近づく。


<<重なる>>


私の想いと
私の想いと

栞の想いが
聖の想いが


<<一つになる>>


その瞬間を感じた。

ただ見つめあう、その瞳に映る私。

私に映る、その向こう側の貴女。

遠く、賛美歌が聞こえる。

私達のために歌っているわけではない。

その歌が、ただ、この瞬間の為だけに歌われている錯覚。

賛美歌の美しい歌声と、私の腕の中の貴女。

幸せというものを、初めてホントウに理解した。

笑いあう。

離さないと。

何処にも行かせないと。

誓い合う。

私は貴女のもの。
私は貴女のもの。


私達は……私達のもの。


もう、誰にも渡せない。








歌が聞こえる。

優しい歌。

でも少し哀しい歌。

祝福と、ほんの少しの、後悔。


……もう少し早く逢えていたなら……


それでも、彼女は心から祝福できているのだろう。

だって、彼女の歌は……


……こんなにも、綺麗なんだから。




後書き

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい(とりあえず謝り倒し。
11月29日?
いつの間にこんなに時間が!?
な、状態です;;

と、とりあえず今回の説明をば。

聖が栞にロザリオあげたんです。
以上。


……と、言うわけにもいきませんよね?

初めの部分が静で、次に聖&栞……ここちょっと読みにくいかな……
最後に主人公の特権で祐巳に〆て貰いました。

あえて誰のパートかを判らなくしてあります。

……いや、普通に読めばばればれカモ知れませんけど……

まぁ、久しぶりにSSかいたってことで、見逃してください><


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