どこにでもある普通のハンドタオル。
でも、それが世界でたった一つのモノになったのは、令ちゃんがいたから。
令ちゃんが、そのハンドタオルに『命』を吹き込んでくれたから。
ベッドに横たわる小さかった頃の私に、まだ幼い令ちゃんが不安そうに差し出したタオル。
そこには、昨日とは違って、小さな命が生きていたね。
「由乃が苦しい時は、このひよこが守ってくれるから」
そう言ってタオルを差し出す手に、バンソーコーがいっぱい貼ってあったのを、私は覚えてる。
それからだよね。令ちゃんが手袋やひざ掛けを編んでくれたりするようになったのは。
令ちゃんにとって(多分)初めての作品は、ちょっとだけ粗くて。
令ちゃんはこれを見る度に「新しいの作るよ」と言うけれど、私が断ってきた理由はね、
これがあったから、今の私があるの。
どんなに苦しくて、涙が出るほど苦しくて、誰も居ない部屋で熱にうなされても。
私は独りじゃないんだ、って。
おでこの上にひよこが、ううん、令ちゃんがいて、私を守ってくれてるんだって頑張れたから。
だから、これは私にとって宝物。
私が元気になって、使うことは少なくなってきたけれど。
でもね、令ちゃん。あのひよこは、今も元気だよ。
由乃の心の中で今も、これから先もずっと。
令ちゃんのひよこは生きているよ。