【2236】 島津由乃の暴走それぞれの思惑  (クゥ〜 2007-04-19 23:05:52)


 島津祐巳・由乃その四の二。

 その一【No:2045】
 その二【No:2058】
 その三【No:2098】【No:2101】【No:2109】【No:2123】【No:2167】
 その四【No:2229】―今回



 
 島津祐巳と島津由乃は双子の姉妹である。
 祐巳と由乃はリリアン女学園高等部に進学し、由乃は黄薔薇のつぼみで祐巳と由乃の従姉妹である支倉令と姉妹に成り。
 祐巳は、紅薔薇のつぼみである小笠原祥子さまと姉妹に成った。
 それで終わるはずなのだが、由乃が突然、令にロザリオを返したのだった。



 「勝手に死なないで頂戴!!」
 それが祐巳を抱きしめた令姉ちゃんに対しての祥子さまの言葉だった。
 「祥子……」
 「しっかりなさい!!勝手に黄薔薇のつぼみに死なれたら堪らないわ」
 祥子さまはズカズカと呆けて祐巳を抱きしめている令姉ちゃんに近づくと、その手を掴み引きずっていく。
 おかげで祐巳は令姉ちゃんから開放された。
 「ほら、行くわよ」
 「あっ、祥子さま。どちらに?」
 祥子さまは、令姉ちゃんの手を取り温室を出て行こうとする。

 「……レイニハ、オネエチャンナノネ……」

 「あの?祥子さま」
 「……なんでもないわ!!……薔薇の館よ」
 「薔薇の館?」
 「こんな所でフラフラされていたら迷惑でしょう」
 なるほど祥子さまは薔薇さま特に令姉ちゃんのお姉さまである黄薔薇さまに令姉ちゃんを預けようと言うのだろう。
 それにしても『迷惑』なんて言って心配しているあたり、少しカッコイイ。
 薔薇さまの所に令姉ちゃんを連れて行くのは、確かに一番いい判断。
 ただ、祐巳としては少し嫉妬もある。
 昔から、祐巳、由乃、令姉ちゃん三人のうち二人が喧嘩した場合などは残り一人が納めてきた。
 今回のは確かにロザリオを返して姉妹を解消するという大問題だが、それでも何だか祐巳としてはあまり気分は良くない。
 ……ん?
 祥子さまと令姉ちゃんの後を着いていきながら、祐巳は帰宅する生徒に違和感を覚えた。
 それが何だったのかは分からない。
 「祐巳、どうしたの行くわよ」
 「あっ、はい」
 結局、違和感が分からないまま、祥子さまに促され祐巳は二人の後を着いて薔薇の館に向かう。


 「……祐巳ちゃん」
 祐巳が真っ直ぐ見つめる紅薔薇さまの表情が青ざめている。
 「その……下手なことを言ったら竹刀で百叩きって表情は止めてくれるかしら?」
 「祐巳ちゃん、怖いって」
 白薔薇さまも笑ってはいるが、その表情は引きつっている。
 「あっ、す、すみません」
 祐巳は慌てて睨むのを止める。
 「もう、祐巳ってば、ほら謝って」
 「申し訳ありませんでした」
 祥子さまに言われて、祐巳は謝る。
 「いや、いいよ。祐巳ちゃんの竹刀なら百回でも千回でも受けてあげたいから」
 ――ちゃき。
 白薔薇さまの冗談に祐巳はすぐに竹刀を構えた。
 「や、やだなぁ、冗談だよ、冗談。あははは」
 「白薔薇さま、タイミングを考えなさい……さて、それでは話を本題に戻しましょうか?」
 紅薔薇さまは、白薔薇さまをたしなめると令姉ちゃんの方に向き直る。
 「令、結論から言えば私たちは何もしないわ」
 ……おっ?
 紅薔薇さまのことだから完璧な打開策を示すと思っていたのだが、そうではなかった。
 「祐巳ちゃん、私たちだってたかだか高校生よ?そうそう何でも出来るわけではないの」
 「お姉さま方、それでは余りに令が可哀想ですわ。何かアドバイスとか?」
 紅薔薇さま、白薔薇さまの反応に祥子さまは戸惑っている。
 「……アドバイスねぇ」
 「そうそうないわよ」
 「ですが、それでは余りに冷たいのでは?」
 黄薔薇の問題と渋る紅薔薇さまと白薔薇さまに祥子さまは戸惑っている様子。
 「まぁ、祥子が熱いのはいいけれど、令の気持ちはどうなのかしら?」
 「しかし……」
 紅薔薇さまの言葉に渋る祥子さま。
 「それなら貴女がもしも私……この場合は祐巳ちゃんの方がいいかしら。祐巳ちゃんと貴女が仲違いをしたときに誰かが取り直したとしてそれでいいのかしら?」
 「私と祐巳が……」
 祥子さまは真剣に考えているのか、紅薔薇さまの例えなのにその表情は暗い。
 「けれど、それが本当に貴女と祐巳ちゃんの問題だったら、私は根掘り葉掘り聞くけれどね」
 「どうしてですの?」
 「それは私が貴女のお姉さまだからよ」
 祥子さまの疑問に、当然とばかり紅薔薇さまは言ってのける。
 聞いているこっちの方が恥ずかしい。
 「つまり、黄薔薇さまに相談しろと?」
 「まぁ、それが順当な判断なんだけれど……」
 「令はどうする?私たちに相談する?」
 令姉ちゃんは何の言葉もなく黙って何かを考えていたようだが……。
 「いいえ、もう少し自分で考えて見たいと思います」
 「ちょ!!ちょっと待ってよ。令姉ちゃん」
 令姉ちゃんの言葉に驚いたのは祐巳だった。
 確かに紅薔薇さまや白薔薇さま、そして、祥子さまは、それでも良いかも知れない。だが、祐巳はどうなるのだ。
 事の発端と成った由乃は実の双子の片割れで、令姉ちゃんとは幼馴染の従姉妹だというのに何も出来ないのは納得がいかない。
 「確かに祐巳ちゃんは、私たちと違う事情があるからね」
 「そう、そうですよね」
 紅薔薇さまの言葉を受け、祐巳は令姉ちゃんに詰め寄る。
 「令は、どうする。祐巳ちゃんにも何もしないで欲しい?」
 「祐巳……」
 令姉ちゃんと視線が合う。
 「祐巳、ごめん。しばらくは私一人で考えたいの」
 令姉ちゃんからの言葉は祐巳にとって意外なものだった。

 令姉ちゃんは、祐巳を頼ることはしなかった。


 そして、由乃を問いただすべく家に戻った祐巳を待っていたものは、由乃の緊急入院という話だった。



 結局、令姉ちゃんにも頼られず、由乃の真意も分からないまま二人の蚊帳の外に置かれた状態の祐巳は悶々とした気分で一人登校する。
 マリアさまにお祈りをしている間も、悶々とした気分は治らない。

 だから、聞き逃していた。

 だから、気がつかなかった祐巳が教室に向かうその後ろに、祥子さまがいたことを。

 教室に入った祐巳は、校舎のあちらこちらで感じた嫌な空気を思いっきり感じていた。
 祐巳の方を除き見ているような視線と囁き声。
 「ごきげんよう、志摩子さん」
 「ごきげんよう、祐巳さん」
 教室に入った祐巳は志摩子さんと挨拶を交わし席に着く。
 「祐巳さん」
 「なに?」
 「由乃さんの様子はどう?」
 祐巳の側に来た志摩子さんはさっそく予想した質問を聞いてくる。
 「うん?別に、ただ今日はお休み」
 「そうなの……」
 実際は入院をしたのだが、由乃からお母さん経由で口止めされている。それがどうしてなのかはまだ知らせてもらっていないが、祐巳は一先ず言う通りにしている。
 「ところで由乃さんの件、大変なことに成っているみたいよ」
 そう言って志摩子さんは、手にしたリリアン瓦版を祐巳に渡してきた。
 真新しい印刷の匂いがまだするリリアン瓦版には、黄薔薇のつぼみの姉妹破局の文字がデカデカと踊っている。
 「なによ、コレ?!」

 祐巳は、リリアン瓦版を握り締め。
 
 ……。
 …………。
 「ぶわっあはははははははははははははははは!!!!!」

 笑った。

 そこに書かれている由乃が余りにも面白すぎて、笑った。

 「ちょ、ちょっと祐巳さん」
 「えっ、あぁ、ごめんなさい……」
 志摩子さんが驚いている。
 周囲に目をやると、祐巳がリリアン瓦版を見てどんな反応を示すのか見ていたクラスメイトも驚いている様子だ。
 だが、書かれている内容は……。
 「あっははははははははははっははははは!!!!!!」
 「ゆ、祐巳さん?!」
 もう、笑うしかない。
 ありえない。
 絶対にありえない。
 「どうして笑うかなぁ」
 そこにカメラを持った蔦子さんが登場。
 「だって……」
 「泣くほど笑う?そこまで笑えるの」
 「由乃はこんなに後ろ向きでもないし、弱くもないよ」
 まだ、理由は聞いてはいないが……まぁ、こんな話は絶対にない。
 「……由乃はね。私よりもズッと強いから」
 祐巳はニッコと笑う。
 「おぉ!!その笑顔もらい!!」――カッシャ。
 「もう蔦子さん撮らないでよ」
 「ごめんごめん、でもいい表情だったから、ねっ、志摩子さん」
 「えぇ、本当に祐巳さん可愛い」
 何故か頬を染める志摩子さん。
 「あはは……って、志摩子さん抱きつかないでぇぇ!!」
 祐巳の悲鳴が教室に響いた。


 「あはははは、志摩子にそういった趣味があるとは流石に知らなかったなぁ」
 「もう、笑い事ではなかったんですよ?」
 「まぁ、平和で良いじゃない……でも、これの方はそうはいかないかもしれないわね」
 そう言った紅薔薇さまの前には、あのリリアン瓦版が広げられている。
 「その記事が何か?」
 勿論、紅薔薇さまが言っているのは由乃と令姉ちゃんの記事。確かに由乃のやったことは前代未聞だろうが、それ以上の問題があるとは思えない。
 「祐巳ちゃんは、この記事をどう見る?」
 「どう見ると言われましても……面白い笑い話としか」
 「そ、それはまた凄い感想ね……」
 「祐巳ちゃんならではの感想ね……まぁ、仕方がないわねこれは」
 そう言った紅薔薇さま、白薔薇さまの表情は優れない。
 「ところで黄薔薇さまは?」
 「そっちも問題ねで」
 「?」
 「アレは呪われているとしか思えないわよね」
 「呪い!?」
 更に表情を暗くする紅薔薇さまと白薔薇さまを見て、祐巳は驚いて声を上げてしまう。
 「いや、本当に呪われているわけではないから……たぶん……」
 「はぁ、では令姉ちゃんの事は黄薔薇さまは?」
 「呪われているわけではないにしろ、相談できるような状態でないのは確かなのよ」
 紅薔薇さまは、『困ったわ』と付け足した。
 と、言うことは令姉ちゃんは一人で今も考えているということか。
 「あっ、祐巳ちゃん?」
 「すみません、少し出てきます」
 祐巳は急いで薔薇の館を出ようとする。
 「あっ、祐巳」
 「祥子さま……ごきげんよう」
 「ごきげんよう、そんなに慌ててどこに行くの?」
 薔薇の館を出ようとしたところで、祥子さまと出会った。少し嬉しい。
 「少し、令姉ちゃんの様子……あっ、令さまの様子を見てきます」
 令姉ちゃんの名前を出すと、祥子さまの表情が曇る。やはり、祥子さまも心配なのだろう。
 「そう……ところで由乃ちゃんの様子は?」
 由乃の入院は今は秘密。そう言えば薔薇さま方は聞いてこなかった……気を使っての事だろうか?
 「今日は体調が優れないとのことで、家で静かに眠っていることと思いますが?」
 「えぇ、そ……そうなの」
 「祥子さま?」
 祥子さまの歯切れが悪い。
 「あぁ、いいのよ。行きなさい」
 「はい、それでは」
 何か思い悩んでいる様子の祥子さまは気に成ったが、祐巳は令姉ちゃんの方も気になったので、急いで令姉ちゃんのクラスに向かった。

 「いた」
 少し息を切らせながら祐巳は、ようやく令姉ちゃんを見つけた。
 令姉ちゃんの教室に行ったものの、教室には居らず。由乃の双子と言うことで奇異の視線を浴びながら祐巳は令姉ちゃんを探し。
 道場で素振りをしている令姉ちゃんを見つけ出した。
 令姉ちゃんは素振りをしながら由乃のことを考えているのだろう。竹刀の軌道が定まっていなのが、その証明だ。
 「由乃の入院、教えた方が良いのかなぁ」
 必死に由乃の事を考えている令姉ちゃん。
 少し由乃が羨ましい。
 結局、祐巳は真剣な令姉ちゃんに声をかけることも出来ずに、スゴスゴと薔薇の館に戻っていく。
 その途中の事だった。
 『お姉さま、ごめんなさい!!』
 泣くような必死の叫び声。
 「?」
 マリアさまの前に立つのは、桂さんとたぶん桂さんのお姉さま。
 桂さんの手にはロザリオ。
 そして、桂さんはロザリオをお姉さまに突き出すと、逃げるようにそのまま走り去っていく。
 「な、なに、今の?」
 桂さんのお姉さまらしい上級生の人は何が起こったのか分からないまま、呆然と立っている。
 それは祐巳も同じで、どうすれば良いのか分からない。
 「でも、今のはまるで……」
 「まるで由乃さんだね」
 「蔦子さん?」
 後ろにはいつの間にか蔦子さんがカメラを構えていた。
 「油断大敵だよ、祐巳さん」
 「油断大敵って……それよりも今のは?」
 「祐巳さんが思った通り、由乃さんのマネよ」
 由乃のマネ?
 「どう言う事?」
 「今ので三組目、皆さんリリアン瓦版の影響か、涙を溜めてお姉さまにロザリオを渡して行ったわ」
 「そんなに……」
 祐巳はようやく薔薇さま方の心配事が何だったのか理解した。
 まいったと思う。由乃はともかく、こんな事が令姉ちゃんの耳に入ったら更に令姉ちゃんは落ち込むことだろう。
 「なに、人事みたいに?」
 「いや、確かに由乃と令姉ちゃんが発端なんだろうけれどさぁ」
 だからと言って何が出来るわけでもない。
 「これは早めに由乃から話を聞いた方がいいかぁ」
 今出来ることは由乃から話を聞くことだろう。

 祐巳は、もう少し張り込むとか言っている蔦子さんと別れ、薔薇の館に向かう。


 「あっ、祥子さま」
 薔薇の館に着いた祐巳は、鞄を持って帰ろうとしている祥子さまと出会う。
 「祐巳、遅かったのね」
 「えっ、そ、そうですか?」
 令姉ちゃんを探して校内を探し回り、戻ってくる最中にあの現場に通りかかったことで結構な時間をとったのだろうか?
 「あの、今日はもうお帰りですか?」
 「えぇ、少し行かなければ行けないところがあるから」
 「そう、ですか」
 祐巳のお姉さまである祥子さまと挨拶もそこそこに、令姉ちゃんを探しに行ったのは祐巳の方なのだから、祥子さまと話す時間が無くなったのは仕方がない。
 だが、先ほどのことは話しておいた方が言いように思えた。
 「あの、祥子さま!!」
 「……祐巳、ほら」
 「えっ?あっ」
 「貴女、走ってきたの?」
 「あっ、はい」
 そう言いながら祥子さまは乱れた祐巳のタイを直す。
 「令姉ちゃんが教室にいなかったもので、探し回っていたものですから」
 「そうなの」
 祥子さまの白い手が祐巳のタイから離れる。どうも話すタイミングがずれてしまった感じだ。
 「ロザリオ、きちんとかけてくれているのね」
 「……えっ?」
 祥子さまは、そっと祐巳の首にかかるロザリオに触れる。
 「と、当然です!!」
 祐巳は由乃のマネをする気はない。このロザリオは祥子さまが返せと言わない限りは祐巳の首にある。
 「良かったわ、貴女は私の妹だものね」
 「勿論です、祥子さま」
 優しい祥子さまの微笑みに、祐巳は力強く頷く。
 「そう、それでは、ごきげんよう」
 「ごきげんよう、祥子さま」
 祐巳に背を向けて帰宅しようとする祥子さま。
 「あぁ、そうだわ。祐巳はどのような花が好き?」
 「花ですか?」
 「えぇ」
 「小さくても花の数が多く、色の薄い花が好みですが」
 「そう、ありがとう」
 そう言って今度こそ、帰って行く祥子さま。
 結局、由乃のマネをしている生徒のことは祥子さまに話せなかった。
 仕方がなく、祐巳は急いで薔薇の館にいるであろう薔薇さまに報告するが……。

 「そう」

 紅薔薇さまがそう言っただけだった。
 薔薇の館にいるのは祐巳と紅薔薇さまに白薔薇さまと志摩子さんの四人。
 四人では何が出来るわけでもなく。
 結局、そのままお開きと成った。
 祐巳としてはせめて由乃のマネをする生徒を止めるための話をしたかったのだが、薔薇さま方に今は有効な手段がないと言われてはどうにも成らない。
 この事態を予想していた薔薇さま方でさえ手立てがないのでは、祐巳に出来ることなどたかが知れている。
 祐巳に今、一番出来ること。それは由乃に会って話すことぐらい。

 祐巳は薔薇さま方と別れ、由乃が入院している病院行きのバスに乗った。

 「さて、どうしようか」

 行って由乃に会えたとして、そうそうに話が聞けるだろうか?

 祐巳の不安を抱えたままバスは病院に到着した。
 「花くらい持ってきたほうが良かったかな?」
 祥子さまの言葉を思い出し、祐巳は由乃の好みである大きな花の咲くチューリップなどの花を買ってくれば良かったと思った。
 ……お母さんが買ってくるか。
 その辺は、お母さんが慣れたものだろう。
 どうにかまだ日のあるうちに病院に着いた祐巳だったが、面会の時間が気になるところだ。
 「お母さんが来ていれば良いけれど」
 お母さんが来ていれば、それを使って家族と言うことで面会が出来るはずだ。
 「あれ?」
 祐巳は、バス停を少し歩いただけで足を止める。
 病院も前には黒塗りの高級車が一台止まっていた。
 それだけならそれほど問題はないのだが、その車の前に立つ一人の男性に祐巳は見覚えがあった。
 ……祥子さまの家の運転手さん?
 そう、それは祥子さまとのデートのときに車を運転していた男性だ。
 「あっ?!」
 祐巳は慌ててバス停の影に隠れる。
 病院から出てきたのは、制服姿の祥子さまだった。
 祐巳の視力は両方とも2.0。
 そうでなくても間違える相手ではない。

 祐巳は、祥子さまに見つかることはなく。
 祥子さまの乗った車を見送った。

 祐巳はフッと病院を見上げ。

 由乃に会いに急ぐ。

 その表情は少し厳しい。

 お母さんは来ていなかったものの、幼い頃から祐巳も病院には来ていたので顔見知りの看護士さんに了承を得て由乃の病室に向かった。
 「由乃!!」
 「ゆ、祐巳!?」
 由乃はお気に入りの本を読んでいるところだった。
 「来たの?!」
 「来たわよ……ところで」
 祐巳はそこで言いよどむ、由乃は素直に祐巳の質問に答えてくれるかどうか分からなかった。

 それに、祐巳は気がついてしまった。

 ……窓の花瓶に、白い小さな花が沢山咲く花が飾られていることを。

 それは、お母さんが由乃に買ってこない花。






 黄薔薇革命に、レイニーを混ぜようとはしているのですが、なかなか上手く行きませんねぇ。困ったものです。

                           『クゥ〜』


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