注意:ミステリです。死にネタ盛り沢山です。苦手な人は注意! あと、続きます。
※12月20日追記。選択肢を追加してみました。でもBを選ぶと最初の聖さまのシーンがいらなくなるんだよなぁ……。まぁ、その時はそのシーンを無視して、乃梨子ちゃんのところから読んで下さい(おい
<3日目/???/広間>
──自分以外の人間は生きてはいない。
嵐の孤島、凄惨な事件、物言わぬ屍となった哀れな子羊たち。
自分以外の人間は殺されている。それは即ち生き残っている者が他の者を殺害したということだ。
私は両手を見る。汚れている。自分の血なのか、それとも──。
<1日目/二条乃梨子/クルーザー上>
「わぁっ、あれがお姉さまの別荘ですか?」
祐巳さまの嬉しそうな声が聞こえる。クルーザーのデッキにいた私たちは、祐巳さまが見つけたモノがある方向を見る。
美しい島がある。森の中に見えるのが、祥子さまの──正確には小笠原家の──所有する別荘だ。小さな城、あるいは砦といった雰囲気で、私は祥子さまにぴったりだと思った。祥子さまは志摩子さんと違って、日本建築よりも洋風な建物の方が似合うと思う。
「乃梨子ちゃんは驚かないんだね」
由乃さまが声をかけてきた。薄い黄色のワンピースがよく似合っている。
「驚きはしましたが、なんとなく想像通りだったというか」
「大きいお屋敷かお城ってイメージだもんね、祥子さまの別荘は」
「由乃さまは驚かないんですか?」
「驚いてるわよ。心臓、すっごく早く動いてるわよ? ほら」
由乃さまは私の右手を取り、胸の少し上の辺りに押し当てた。由乃さまの鼓動が伝わる。
夏休みの数日を利用して、私たちは祥子さまが招待してくれた別荘へと向かっていた。合宿とは名ばかりで実態はただのバカンスだ。
現在の山百合会幹部、祥子さまと祐巳さま、令さまと由乃さま、そして私と志摩子さんに加えて、可南子さんと瞳子、そして先代のお三方──蓉子さま、聖さま、江利子さまも参加してのこの企画だった。本当は真美さまや蔦子さまも参加する予定だったが、抜けられない用事が出来て、泣く泣く参加を見送ったらしい。
「お、由乃ちゃんの胸に乃梨子ちゃんの手がねぇ」
いつの間にか隣には聖さまがいた。ニヤニヤと笑いながらそんなことを言うが、蓉子さまと令さまに左右を挟まれた途端、ホールドアップの体勢でデッキの先端の方へと小走りで消えてしまった。
<1日目/藤堂志摩子/三條島桟橋>
桟橋に降りて、私は大きく深呼吸をした。よく言われることだけれど、本当に空気が美味しい。心地よい陽気と気持ちいい風。来てよかった、と思った。
「志摩子」
肩に手を置いたのはお姉さま。露出が多いシャツとハーフパンツという格好で、見ているこちらが恥ずかしかったけれど、とても似合っていた。
「祥子に感謝しなきゃね。こんなにいい場所に来れるなんて滅多にない」
「はい、そうですね」
私は祥子さまの方を見た。クルーザーを運転してくれた方とお話をしていた。
と、少し後ろの方から悲鳴が聞こえた。その声の主はわかっている。「ぎゃう!」なんて声をあげるのは祐巳さんだけ。
「せせせせせ聖さまっ、や、止めて下さいぃ〜」
「いーじゃんいーじゃん祐巳ちゃーん。おねーさんが荷物持ってあげるよー」
お姉さまは相変わらず、祐巳さまにちょっかいを出していた。祥子さまと蓉子さまに怒られるのだから、止めればいいのに……。
<1日目/支倉令/別荘への道>
クルーザーの帰る音を背中に受けながら、私たちは小笠原の別荘を目指して歩いていた。
「天気は大丈夫なのかなぁ」
私が小さく言うと、お姉さまが答えてくれた。
「島の天気は変わりやすいというわね。大きく崩れなければいいのだけど」
そう言いながら上を向いた。私もつられて上を向く。
A:──青空は一変していた。どんどんと黒い雲が立ち込めてきて──。
B:天気は快晴そのもので、しばらくは心配いらないと思った。
※Aを選んだ場合はこのまま読み進めて下さい。↓
「こりゃあ、まずいわね」
「そうですね……」
すぐに雲が通過してくれればいい。にわか雨くらいならちょっとしたイベントと思えるが、もしこれが嵐になれば、せっかくの休暇が台無しになるかもしれない。
私たちは無意識に──半ば意識していたのだろうが──歩みを速めていた。
──結局、私の嫌な予感は当たり、雲は壮絶な嵐を呼び起こして、私たちは数日の間、小笠原の別荘に閉じ込められることになる。
それと同時に、この島にいたとある人物の心の中に、雨雲よりもどす黒い感情が渦巻いていたのだが──。
<【No:2278】へつづく>