【2284】 裸の山百合会屁の突っ張り私も貴方の為に  (砂森 月 2007-05-25 13:30:44)


※未使用キー限定タイトル1発決めキャンペーン第13弾
 タイトルから少し遠いかも。。そうでもないかな?



 何となく唐突に山百合会で銭湯へ行くことになった。もちろんあまり騒ぎになるとあれなので学校やM駅の近くじゃなくて祐巳の家の傍の銭湯にしたのだけれど。
 そういうわけで祐巳の家に集まっていざ銭湯へ。初めてのお姉さまはなんか戦闘態勢入っているけれど、そこは突っ込まないのがお約束。
「こんにちはー」
「あらあら、祐巳ちゃんお久しぶりねぇ」
 番頭のおばあさんは祐巳が小さい頃からずっと変わらない。中等部へ行く頃から銭湯にはあまり来なくなったけれど、それでもたまに行くと覚えていてくれるのがなんだか嬉しい。
 早速入浴代を払って、ついでに石鹸を買ったりしてから一路女湯ののれんへ。
「あ、ちょっと」
「はい、なんでしょう?」
「そっちは女湯だよ」
「そうですけど」
「そこのお兄さんはこっちでしょ」
「あの、私女なんですけど……」
 まあ、令さまにはそんなハプニングもあったりしたのだけれど。


 一言に銭湯といっても場所によって多かれ少なかれ違いはあるもので。令さまや祐巳のサポートでお姉さまもすんなり入浴準備が整って、扉を開けての第一声は由乃さん。
「そんなに混んでないのね」
 まあ、まだお昼だし。夕方なら家族連れが多いんだろうけど、この時間は常連さんくらいしかいないことが多いらしいから。
「へぇ、薬草風呂もあるんだ」
「電気風呂? 感電しないのかしら」
「濡れた階段って少し危ないですよね」
 それぞれの感想を聞き流しながらとりあえず洗い場を確保。
「それじゃあ先に身体洗っちゃいますか」
 先に浸かる派の人もいるかもだけど、大衆浴場だし先に身体を洗う方がいいかなって。特に異論も出なかったから6人並んで座ったところまではいいんだけれど。
「ゆーみーさん」
「由乃さん、どうしたの?」
「髪洗ってあげようか」
「うぇ?」
 思わず変な声を上げてしまった。というかいつの間に後ろに来たのかな? お姉さまと令さまをはさんで一番右側に居たはずなんだけど。
「だめよ、祐巳の髪は私が洗うんだから」
「お、お姉さま?」
「私も一緒に洗ってあげようかしら?」
「志摩子さんまで?」
 両隣の2人まで。言い方は穏やかだけど何か両腕引っ張られて痛いんですけど。ついでに由乃さん、首締めないで。苦しいから。
「私は祐巳のお姉さまなのよ?」
「私は祐巳さんの親友です」
「あら、私も祐巳さんの親友よ?」
「「「むーっ」」」

 で、結局。
 見かねた乃梨子ちゃんの提案で席順のまま洗いっこすることに。髪と背中で反対を向くことにしたから祐巳の髪はお姉さまが、背中は志摩子さんが洗うことになる。ちなみに由乃さんは入浴時に隣になることで納得してくれたらしい。
「ちょ、ちょっと由乃。もう少し優しくしてよ。痛いって」
「剣道やってるしこれくらい平気でしょ。私は自分の髪も洗わないといけないのだから」
「いや剣道関係ないから。というか髪抜けてない?」
 いや、令さまに八つ当たりすることで我慢しているのか。まあでも。
「でも、一斉に頭を洗うのって結構大変ね」
「あ……」
 それは祐巳も思った。

 ちなみに背中を流すのは特に問題なかった……後ろの白薔薇姉妹が微妙に怪しい感じだったのは聞こえなかったことにしよう。


「んーっ、あったまるー」
 泡風呂に仲良く4人並んで浸かる2年生グループ+乃梨子ちゃん。ちなみにお姉さまと令さまは2人でサウナに入っている。
「お湯も緑色で綺麗だし。入浴剤か何か入ってるの?」
「うーん、私もそこまでは知らないよ」
 由乃さんは祐巳の隣に来てから一段とはしゃいでる感じ。さっきから腕組んできたりいろいろ聞かれたり、お湯に浸かってからもじゃれてきたり手が増えてたり乃梨子ちゃんと目で合図してたり……あれ?
「せーの」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ。やーめーてー」
「祐巳さまって結構敏感なんですね」
「ちょ、ちょっと乃梨子ちゃんまで」
「うふふ、仲いいわね」
「志摩子さん、笑ってないで助けてよぉ」
「あらあら」

「もう、由乃さんったら」
「ごめんごめん、何かつい……」
 散々くすぐられた祐巳は志摩子さんの隣にとりあえず避難。端っこだし志摩子さんなら安全なはず。
「でも祐巳さんは見ていて飽きないわね」
 安全な、はず……。
「あの、志摩子さん? 背中の手は何なのかな?」
「ああ、これはね……えい」
「うわっ」
「し、志摩子さん?」
 えっと、何で祐巳は志摩子さんの胸に顔を埋めているのかな?
「し、志摩子さん。少し恥ずかしいんだけど」
「うーん……いい子いい子?」
「私、子供じゃないよ……」
 横の方で「何ですか?」「対抗?」「胸無いですね」「う、うるさい。似たようなもんでしょ」とか聞こえた気がしたけど、とてもじゃないけど気にしてる余裕は無かった。お姉さまに見つからなくて良かった……。


 その後は白薔薇姉妹が仲良く電気風呂に入ったり由乃さんと少し熱めのお風呂に入ってみたり、がらがらの子供用スペースでお姉さまと滑り台遊びしたり令さまと志摩子さんが薬草風呂の成分予想し合ったり。乃梨子ちゃんが由乃さんに乗せられて打たせ湯浴びながら般若心経唱えたり乃梨子ちゃんに各地の銭湯のお話とか聞いたりもして。ちょっぴりトラブル(?)もあったけど、まあ楽しかったんじゃないかな。
「お風呂上がりと言えばやっぱりコーヒー牛乳でしょ」
 由乃さんの一言でお風呂上がりはコーヒー牛乳に決定。ついでに祐巳はソフトクリームも頼んだりして。
「祐巳、頬にクリームついてるわよ」
 そう言って指でクリームをぬぐってそのまま口へ持って行くお姉さま。嬉しいんだけど、なんかこう視線が……。
「楽しかったわ祐巳。今度は2人で来ましょうね」
「祐巳さん、私も今度は2人だけで来たいな」
「私も祐巳さんと2人だけで来たいわ」
「え、えーと……」
 うん、教訓。裸の付き合いって相手を選ばないと危険。
「とりあえず次の週末ね。祐巳、誰を選ぶの?」
「えっと、じゃあ乃梨子ちゃんで」
 だって一番無難だもん、多分。

 もちろん、次の週末まで針の筵だったのは言うまでもありませんでした。とほほ。


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