銀杏の中に1本だけある桜の木の事は、白薔薇姉妹の馴れ初めを知っている生徒なら必ず知っていること。
でも、桜以外に銀杏の中に1本だけ別の木がある事は、全くといって良いほど知られていない。
私、細川可南子は、その知っている数少ないであろう中の1人。
その日、私は木の下で、ある人物が来るをいまや遅しと待っていた。
お相手は、『紅薔薇の蕾』である福沢祐巳さま。私の最も敬愛する上級生。
そんな敬愛するお相手である祐巳さまが、今日のお昼休み私に声をかけてきて、
「可南子ちゃん、桜のほかに銀杏の中に1本だけあるあの木の事は知ってる?」
と聞かれたときにはびっくりした。祐巳さまも知っていらっしゃったとは…
「ええもちろん。私のお気に入りの場所のひとつです」
「そうなんだ。知ってるなら早いや。
今日の4時にあの木の下で待っているから、来て欲しいんだ。
あ、後、門が閉まるまでの時間、一緒にいてくれない?」
1も2もなく、速攻で了承した私だった。
ほとんどの生徒が知らないこの場所で、祐巳さまと2人きり…乃梨子さんが『白薔薇の蕾』になったいきさつを知っている私にとっては、期待せずにはいられない。
そんな私は、約束の時間よりもほんの少しだけ早く着いてしまった。
そう、ほんの3時間ほど早く…
そして………………………約束の4時少し前。
私の目に、祐巳さまが飛び込んできた。
………が、
祐巳さまの後には有象無象の女生徒郡が…
………あれ?
「あれ? 可南子ちゃん、待ち合わせ時間は4時…だったよね?」
「え? あ…え…は、はい。4時で合っています。
ですが、上級生である祐巳さまをお待たせする訳には行きませんので、早めに来ていました。
…ところで、その後の方々は」
「ああ、美術部と他の同好会が合同で展覧会へ出品する作品を作ることになって。
そこで可南子ちゃんに頼みたい事があって、今日此処へ来てもらったの。
その展示会へ出品する絵のモデルになってくれない?」
そ、そんな純真な目で見つめられると、嫌とはいえないじゃないですか…でも、私なんかがモデルって…
「あ、私も描くけど、私なんかが出品なんて出来ないから、描いた絵は可南子ちゃんに受け取って欲しいな」
即座にオーケーしてしまった私…
結局私はモデルをやらされる事になりました。
木の下に立ってるだけなのですが、これが結構きついんです。
…でも、祐巳さまが私と目が合うたびににこっと微笑んでくださるのが、とても嬉しいです。
閉門の時間が近づいたために、祐巳さまが終了の合図を出してくださいました。
むろんこんな短時間で絵は完成する事は無いので、皆さん下書きを持って三々五々帰宅。
私は、祐巳さまが『薔薇の館へ寄っていかない? お茶を飲んでから一緒に帰ろう』と誘ってくださったので、一緒に薔薇の館へと向かっています。
「ところで…」
祐巳さまと一緒に薔薇の館へ行く途中、気になっていた事を祐巳さまに質問をしてみた。
「さきほど、他の同好会と合同とおっしゃっていましたが…どんな同好会なんですか?」
「美術部の他? 水墨画同好会とオカルト同好会だけど」
………嫌な予感しまくりなんですが………
数日後、約束どおり祐巳さまの書かれた作品を頂いた。
絵には銀杏の中に1本だけ生えている
『柳』
が描かれていた。
その柳は初めて描いたとは思えない・素人の私から見ても美しいと思えるほど、水墨画として完成された美しさを持っていた。
…のだが…
そこに描かれている柳の下にいる私は………
お○さんも真っ青という、えもいわれぬ迫力を持っていた。
………夜見たら、みんな逃げ出すんじゃないか?
後で聞いたら、その絵を見た薔薇の館の面々(+瞳子さん)は、全員一瞬で昏倒したらしい。
先日から瞳子さんと乃梨子さんが、私を避けているように感じたのはその性か…
その後、私はその柳の元へ足を運ぶ事はなくなった。
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ごめんなさい…
最初に出た3つのキーで頭に浮かんだ一発ネタを勢いで打ち込みました。
「銀杏の中に柳は生えないだろう」とか「リリアンに水墨画同好会やオカルト同好会なんて」という突っ込みはご容赦を。
誤字もあると思いますが…勢いだけ・ということで笑って流してください。
同じようなねたを使ってらっしゃる方が既にいたら…どうしよう(汗 ありそうなネタだし)