「そういえば、蔦子さまは、先代の白薔薇さまに『カメラちゃん』って呼ばれていたんですよね?」
「そうね」
「どう思いました?」
「どうって……別に。まあ、妥当かなあと」
「薔薇さまにあだ名でよばれていたんですよね? ちょっとうらやましいです」
「そう? じゃあ、あなたも、『電動ドリル』とか『ハリガネ』とかで呼ばれたい?」
「電動ドリルとハリガネって、なんだか工事現場みたいですね? そういうのはちょっと……。でも、『カメラちゃん』って、かわいくて蔦子さまらしくていいなあ。わたしも、蔦子さまのことあだ名で呼んでいいですか?」
「『カメラちゃん』? 先輩後輩のことをかんがえると『カメラさま』? カメラさまはちょっとかなあ……」
「カメラさまはわたしもちょっとですね、えっと、じゃあ、カメラさまじゃなくて、『盗撮ちゃん』で」
「却下」
「じゃあ、『盗撮ガール』?」
「却下」
「えーだめですか?」
「駄目」
「じゃあ、どんなのだったらいいですか?」
「とにかく盗撮は駄目」
「それが駄目なんですか? ひどいです」
「こらっ」
「きゃっ。すみません。冗談です」
「わかればよろしい」
「じゃあ、どんなのだったらいいですか?」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名がいいわね」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名ですか?」
「ええ、マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名よ」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名ならいいんですね」
「ええ、マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名なら問題ないわ」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名ならいいんですね。じゃあ、『お姉さま』で」
「ちょっ、それは……」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名ならいいんですよね」
「そ、そうだけど、ちょっとそれは……」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名。『お姉さま』。蔦子さまにもぴったり」
「笙子ちゃん。私は別に笙子ちゃんと姉妹の契りを結んだ訳じゃないわよ」
「ええ、知ってますよ。私と蔦子さまは、残念ながら、姉妹じゃありません。蔦子さまが姉妹を作らないというのは、私も十分わかってますから」
「だったら……」
「あだ名です。姉妹の契りは関係ありません。あくまであだ名です」
「えっと」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名ならいいんですよね。『お姉さま』というあだ名にはマイナスイメージな言葉もないですし、体型に依存していないと思います」
「でも……」
「マイナスイメージな言葉が入ってなくて、体型に依存しないあだ名です。何か問題でも? お・ね・え・さ・ま?」
「まいった。わたしの負け」