瞳子、という心地よい音色が聞こえること
お姉さま、と心をこめて口にすること
それだけで、私はとても満たされて
そんな、ささいな日常が、とても幸せに感じられて
ふとした拍子に、泣いてしまいそうになるほど幸福で
・・・それでも、私の15年間というのはなかなか頑固で
人前で甘える事なんて出来ないし
いえ、お姉さまと二人っきりであっても、甘えるなんて出来ませんけれど
出来ませんけれど、私は、本当はもっと甘えたくて
お姉さまにも、その、もっとスキンシップとかして欲しくて・・・
・・・だから私は
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眠っている瞳子は、本当に可愛い
例えて言うなら、赤ちゃんのように可愛い
無垢で、純粋で
でも、私が一番かわいいなぁと思うところは
瞳子が眠っているフリをしているという事
その手元には、眠り姫の台本が置いてあるという事
瞳子が、何でこんな事をしているのか考えると、ついつい口元がほころぶ
手を取って軽く握ってみる
そっと握り返してくれる
手を伸ばして、瞳子の頬をプニプニと突いてみる
瞳子は表情さえ変えないが、頬が少し紅くそまる
『眠り姫って、どうやったら起きるんだっけ』私はそう口にしながら、瞳子の唇を指でなぞる
瞳子の顔が真っ赤に染まった頃、目を瞑ったまま瞳子の唇が開く
『寝言ですけれど・・・キスだったと思いますわ』
そう言って、握っていた私の左手をキュっと握りしめる
可愛い瞳子、大切な私の妹
いつも一生懸命で、頑張ってくれる貴方への
これは、ご褒美
・・・・・・・
重ねられた想いと、時間と、唇
それはどこまでも優しくて、甘くて、柔らかくて
そして、私は恋をする