【2476】 百合!百合!百合!私の中のよからぬもの  (joker 2008-01-15 01:02:33)


「諸君 私はお姉さまが好きだ
 諸君 私はお姉さまが好きだ
 諸君 私はお姉さまが大好きだ

 銀杏を食べている姿が好きだ
はにかんでいる姿が好きだ
話をしている姿が好きだ
 困っている姿が好きだ
 照れている姿が好きだ
 真剣な姿が好きだ
 祈る姿が好きだ
 私服姿が好きだ
 和服姿が好きだ

 学校で 講堂で
 薔薇の館で 帰り道で
 桜の木の下で 銀杏の木の下で
 電車で 旅行で
 遊園地で 観覧車で

 この世界で出会える ありとあらゆるお姉さまが大好きだ


 銀杏の季節になって拾いに行くのが待ちきれずにそわそわしている様子が好きだ
 大量に銀杏を収穫できて私に笑顔で話しかけてくる時など心がおどる

 ちょっと怒っている志摩子さんの姿が好きだ
 調子に乗りすぎた瞳子を諌めている姿は胸がすくようだった

 何かを決心したような凛々しい志摩子さんの姿が好きだ
 聖堂の十字架に向かい 堂々と真実を宣言する様など感動すら覚える

 ときどき失敗をしておろおろしている様などはもうたまらない
 逃げ回る志摩子さんが 由乃さまの降り下ろした手の平とともに
叫び声とともに飛来する布製の弾を 悲鳴をあげながら避けるのも最高だ

 哀れな子羊たちが持ってきたバレンタインのチョコレートを本当に申し訳なさそうに「乃梨子からしか貰わないの」と言った時など絶頂すら覚える

 志摩子さんに怒られるのが好きだ
 ちょっとしたことで意見が食い違って嫌な雰囲気になってしまうのはとてもとても悲しいものだ

 由乃さまの意見に押し潰される志摩子さんが好きだ
 必死に考えた意見を面白みがないなんて理由で反対されるのは屈辱の極みだ


 諸君 私は百合を 楽園の様な百合を望んでいる
 諸君 私に付き従う薔薇の館の同級達よ
 君達は一体 何を望んでいる?

 更なる百合を望むか?
 妄想甚だしい 夢の様な百合を望むか?
 純愛の限りを尽くし 三千世界の全てが羨む 奇跡の様な百合を望むか?」

「 百合!! 百合!! 百合!! 」


「よろしい  ならば百合だ

 我々は満身の想いをこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ
 だがこの暗い世の中の底で 理解されないできた我々に ただの百合では もはや足りない!!

 百合物語を!! 一心不乱の百合物語を!!

 我らはわずかに三人 十人に満たぬ一年生にすぎない
 だが諸君は一騎当千のつわものだと私は信仰している
 ならば我らは 諸君と私で総兵力100万と1人のガチ集団となる

 我々を異常の彼方へと追いやり 無視をしている連中を叩き起こそう
 髪の毛を優しく撫で付け吐息を拭きかけ 眼を 開けさせ思い想わせよう
 連中に百合の味を覚えさせてやる
 連中に我々の想いの尊さを思い知らせてやる

 天と地のはざまには 奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い知らせて

 三人のガチ の百合集団で
 世界を萌やし尽くしてやる」





「の……、乃梨子」
「ん……、な…に……?」
 眠い目をこすりながら開けるとそこにいたのは見知った親友の顔だった。
「もう。仕事中に眠るなんて、気が抜けているわよ」
 不機嫌そうに怒る親友に乃梨子は「ごめんごめん」と謝ると、「まったく、乃梨子ったら」とそっぽ向いた。その様子があまりに可愛かったので思わず笑ってしまうと、さらに瞳子が顔をしかめた。
「ところで、乃梨子。何かすごくいい顔で寝ていたけど、何か夢でも見てたの?」
「ゆ……め?」
 瞳子の言葉で先程の夢が思い起こされる。その尊き思いを。 
「あら、忘れちゃった?」
「ううん。覚えているよ。

 そう、夢を見ていたんだ」


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