それは、一年の英語の小テストに出ていた問題。
テスト自体はとある業者の市販品で、普通ならばなんて事のない単なる設問だった。
しかし…ここでは固有名詞が問題だった。
『問6 次の文を訳せ
Sachiko is a blue blood. 』
放課後・薔薇の館
新聞部の部員・山口真美が、おどおどしながら薔薇さまに報告していた。
内容は、設問に対する答えの正答率が限りなくゼロに近く、教師人が頭を抱えていること。
それを聞いた新聞部長が、誤回答集をかわら版に載せたいらしく山百合会に許可が欲しい。
そしてイケニエ…もとい、交渉に来たのが部長の妹である彼女だった。
「この問題がどうかしましたの? 何故そんなものをかわら版に載せるの?」
冷静に対応する紅薔薇の蕾。その他の薔薇さま方もほぼ全員首をかしげていた。
もちろん、薔薇の館の住人は約1名を除いて意味を正確に把握している。
ある意味、当然ともいえる反応だった。
が、
「いえ…あの…その…
9割以上の生徒の回答が…
こんなふうになってまして…」
言いよどみながら、1枚のプリントを薔薇さま方に差し出した。
そこには、その問の回答例が並んでいた…
『紅薔薇の蕾は貧血』
『紅薔薇の蕾は冷血』
『紅薔薇の蕾は異星人』etc.
「何故固有名詞が全て私になってるんですか!?
それに貧血はともかく異星人って何なんですか!!??」
その日、薔薇の館の機能は停止した。
その日の夜、
紅薔薇の蕾の妹は安堵のため息をついた。
「よかった…ばれなくて」
その手元には、テストの答案用紙があった。
そこには…
『A6:お姉さまに赤い血は流れていない』
その文字の上には、しっかりと×が。
しかしその×の文字には、付けるのにためらいのようなものが有ったとか無かったとか…
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英訳の正解は
「サチコはお嬢様です」
になります。(もしくは高貴な人・名門の人)
お嬢様は太陽の下に余り出ず日焼けしないから青白く見えるので、blue blood=お嬢様 と訳すそうです。