長い上に内容がメモリアル風味です。注意してください。
☆
「ねえねえ、聞いて聞いて」
「どうしたの?」
「私、祐巳さま攻略しちゃった」
「……フッ」
「え!? は、鼻で笑った…!?」
「私なんて、蔦子さまも攻略しちゃったもんね」
「うそ!? ほんと!? どうやって!?」
……なんて、わからない人からすれば何もわからない、だが非常にイケナイ方向に妄想を掻き立てられるすごい会話が聞こえてくる。
そう、私も最初はなんのことだかわからなかった。
「攻略しちゃった」なんてセリフ、日常会話ではあまり聞かないだろう。それに固有名詞が付くのであれば尚更だ。
「……フッ」
思わず鼻で笑ってしまう。
だって、私たちはもう全キャラコンプリートしたから!
☆
事は、だいたい一週間前に遡る。
「…え? なんですって?」
私、二条乃梨子は、紅茶を淹れる手を止め振り返った。
「だから、『リリアンメモリアル』って知ってる?って」
祐巳さまは、はぁーと長い長い溜息を吐く。どうやら聞き間違いでもなかったようだ。
ここは薔薇の館。
まだ祐巳さまと私以外の人は来ていないものの、卒業間近のこの時期、やることは山ほどあるので、すぐに皆やってくるだろう。
途中で一緒になった祐巳さまとともに薔薇の館にやってきて、祐巳さまは椅子に座り、私は紅茶を淹れているところだ。
「リリアン……メモリアル?」
なんだかどこかに似たような名前のゲームがあったような気がするが。そしてそれは、あまり女の子が遊ぶようなゲームではなかったと記憶しているが。
いわゆる、「ギャルゲー」と呼ばれる類のジャンルだったかと思うが。
「そう。なんでも、そういうゲームが出回ってるんだって」
出回っている、って……あ、そう言えば。
「関係あるかはわかりませんが、最近見られてませんか? 瞳子も妙に視線を感じるって言っていたんですけど」
ここ一週間くらい、登校する時、廊下を歩いている時、教室でだって多数の視線を感じる。ふと周りを見れば、かならず誰かと視線が合うくらいに。
私も一応は「白薔薇のつぼみ」と呼ばれる、有名な姉の妹として認識されているわけで、そういう視線は今までも多少は集めていたと思う。
でも、最近の視線は異常だ。数も質も。
姉妹なりたての時期ならともかく、最近姉妹になった祐巳さまと瞳子ならともかく、白薔薇姉妹として安定して長い私なんて珍しくもなんともないはずだ。今更私を見てどうする、と思わなくもなかったのだが。
それに、その視線。
羨望や嫉妬やその他の、こうなんか、べったりした感じではないのだ。いや感覚的なものだから上手く表現できないが。もっとライト感があるというか、……ああダメだ。上手い表現ができない。
ただ、マイナス感情ではなくプラス感情ではあると、私は判断していた。志摩子さんの妹になった当初の視線より、もっと軽く明るい感じで。
「あー……たぶん気のせいじゃないと思うよ……」
祐巳さまはお疲れの様子でへろへろうなずく。私や瞳子だけではなく、祐巳さまも見られているようだ。
「それと、なんか『攻略』とか『口説き落とした』とかってキーワードをよく耳にしますが」
意味がわからないので気にも留めなかったけど、まさかこういう形で関わっていたとは思わなかった。
「それも気のせいじゃないと思う」
つまり、そういうことか。
「その『リリアンメモリアル』なるゲームが原因、ってことですか」
「そうだと思うんだけれど、私、ゲームのことはよくわからなくて。ただ、今日、下級生にこう言われたの――」
祐巳さまは溜息分の間を置き、こう続けた。
「『祐巳さまが一番攻略が楽でした』って」
……それはずいぶんなセリフだな。意味はわからなくても、なんだか力が抜けるような攻撃力はあると思う。
「『攻略』ってどういう意味? 私って簡単なの? 何が簡単なの?」
祐巳さまは言った本人にそう問い質したかったが、件の下級生は祐巳さまが呆然としている間に、とっとと行ってしまったそうだ。
「いや、私も詳しくは知らないので、上手く説明できるかどうかわかりませんが……」
そう前置きして、なけなしのゲーム知識を総動員させてみた。
「えっと、ですね。たぶんなんですが、その『リリアンメモリアル』なるゲームはですね、登場人物を口説くゲームなんですよ」
「登場人物を、口説く?」
「そうです。登場人物……つまりゲームの中に存在する『祐巳さま』というキャラを攻略――口説くことに成功した、という意味なんじゃないかと」
「……私、ゲームのキャラなの?」
「私が想像する『リリアンメモリアル』が想像通りなら、祐巳さまだけじゃなくて、志摩子さんや由乃さまもゲームキャラになっているかと思われます」
そう、我が最愛の姉・志摩子さんも、誰かに攻略されているのだろう。
……誰だそんなゲーム作ったのは! 腹立たしい! 志摩子さんは私のなのに!
「ふうん、そういうゲームなんだ……」
なんてつぶやく祐巳さまは、少しだけ目に力が戻っていた。「なんだか面白そうじゃない?」なんて言い出す始末だ。
これが次期紅薔薇さまかと思うと……来年も大変かもな。私もそうだけど、瞳子も結構苦労しそうな気がする。否、苦労するだろう。
「……でも」
『リリアンメモリアル』。
明らかに自主制作……ちゃんとした会社で作ったものではなく、個人が趣味で作ったものであることは確かだろう。
それも、リリアン関係者が製作したに違いない。
そして祐巳さまが登場しているなら、恐らくというか、やはりというか、舞台は山百合会を中心に動いているんじゃなかろうか。となれば製作者はリリアン高等部の生徒と限定できる。
在校生か卒業生かまでは特定できないが……でも祐巳さまがゲームキャラとして登場しているなら、現在校生から去年の卒業生まで、と括ってしまっていいかも知れない。
「そのゲーム、ちょっと気になりますね」
「でしょ? 面白そうだよね?」
いやそうじゃなくて。そっちじゃなくて。
「どこまで個人情報が露出しているか、という問題ですよ」
「……あ、そうか」
どうやら祐巳さま、ようやく問題点が理解できたようだ。
山百合会から遠い人物(いわゆる山百合会のファン)が製作あるいは企画したのなら、人物像も山百合会での出来事も、揉め事も、その他諸々も、とても実態とは似ても似つかない「妄想」が先行したものだ。
だが、もし製作者が山百合会に近しい人物なら。
だとしたら、ここであったこと全てがゲームに盛り込まれているかも知れない。
瞳子と松平の両親とは血の繋がりが無い、だの、祐巳さまはクリスマスに瞳子にフラれて泣いちゃった、だの、由乃さまの日頃の暴走だの、由乃さまの妹候補の話だの、私と志摩子さんの恋人同士のように親しい思い出だの、私と志摩子さんの甘〜い姉妹生活だの、私と志摩子さんの誰にも汚されたくない美しい出来事だの、私と志摩子さんの二人だけの内緒話だの。
そんなことが本人の知らないところで露呈している可能性がある。
そんなのいやだ。嫌過ぎる。
「由乃さまや志摩子さんは、ゲームのこと知らないんですか?」
ちなみに由乃さまは、今日は掃除当番で遅くなっているそうだ。志摩子さんは何も言っていなかったので、すぐにやって来るだろう。瞳子は職員室に用があるとか言っていたっけ。
祐巳さまは、うーんと唸りながら首を捻る。
「由乃さんが知ってるなら今頃大騒ぎしてるだろうし、志摩子さんは……乃梨子ちゃんが聞いてないなら、知らないんじゃない? 志摩子さん、たぶん真っ先に乃梨子ちゃんにいうと思うから」
なるほど、納得できた。各々の性格から考えるに、祐巳さまの推測は同意できる。
「それじゃ、今のところ山百合会で一番情報が早いのは祐巳さまだ、と」
「断言はできないけどね。それに、今話した以上のことは知らないし」
ふむ……じゃあ、今なら隠密裏に動けるかな。
「祐巳さま、ちょっといいですか?」
「ん?」
私は「トイレに行きます。すぐ戻ります。 祐巳 乃梨子」というメモを残し、祐巳さまの手を引いて薔薇の館を飛び出した。
急ぎ足でそこへ向かう道中、祐巳さまに事情を説明する。
「あ、うん、そうだね、情報が欲しいなら新聞部だね」
祐巳さまは私の行動の早さに驚いているようだ。忘れられがちだが、これでも私は外部受験をトップで潜り抜けてリリアンに入ったのだ。多少頭は回る。
「でも、大丈夫かな?」
祐巳さまも「新聞部に聞く」という選択肢は思いついていた。だが迂闊に情報を漏らすとどうなるかわからないから、まず私に話したんだそうだ。
賢明な判断だと思う。
祐巳さまと同じくゲーム知識は乏しそうな志摩子さんは除外。同じ理由で瞳子も除外。由乃さまは話した途端大暴れするだろうし、祥子さまも同じ反応を示す可能性がある。令さまに話したら自然と由乃さまにも知られるだろうし。
山百合会内限定すれば、私にしか相談相手がいなかったのだろう。
「あの新聞部が情報すら掴んでないとは思えませんから、大丈夫ですよ」
そういうわけで、今私たちはクラブハウスへと向かっていた。かの新聞部部長なら、かならず何かを掴んでいるはずだ。
由乃さまが知らない今なら、ひっそりこっそり情報を貰える可能性が高い。
由乃さまが知れば令さまに知れる、令さまに知れたら祥子さまに知れ、祥子さまが動く。
そうなってからでは事が大きくなりすぎて、真美さまも素直に情報をくれるとは思えない。製作者じゃないなら「知らない」で切り通すことも可能だ。だって無関係だから。
それに、記事になる前に圧力を掛ける、という意味も込めて、早急に会いに行く必要はあると思う。山百合会が直接関係していないのだから、いつものようにお伺いを立ててから新聞に載せる、というプロセスを省かれる可能性は十分あるのだから。ゆえに直接、早い内に会っておくべきだ。
ついでに、もう一つ理由がある。
「話によっては、漫研にも聞いてみたいんですよね」
「え、漫研? なんで?」
答えは、「同人」という世界のことも一応頭に入れておきたいから。
よくは知らないが、『リリアンメモリアル』が自主制作で、まさか販売されているなら、「同人」についての知識を得ておいた方がいい。その方が対策も練ることができる。
……なんて説明で祐巳さまの理解を得られるかどうかわからないので、この説明は後回しにしよう。
「知ってるわよ」
やっぱり真美さまは即答だった。
「え、知ってるの?」
「『リリアンメモリアル』でしょ? 知ってるわよ」
まあ立ち話もなんなので、ということで祐巳さまと私は部室の中へ通された。
部室には何人かが記事を書いていたり、何かの書類に目を通していたり。真美さまの妹の日出美さんの姿もあった。
この真美さまの動揺のない対応や、部員たちの無反応ぶりを見る限り、ここに山百合会関係者が来ることは予想範囲内だったみたいだ。
「まだ一部の生徒しか知らないみたいだけれど、広まるのも時間の問題でしょうね」
「だよね。面白そうだもんね」
祐巳さま、それはもういいです。
「新聞部はどの程度まで把握してるんですか?」
妙に脱力感を誘う発言を繰り返す祐巳さまに任せていては必要な情報を得られないと判断し、横から私が口を出す。時間的に余裕がないから前に出てみた。
「この程度」
真美さまはスカートのポケットから、透明ケース入りの黒いプラスチックの小さな塊を出して見せてくれた。
……メモリーカードだ。家庭用ゲーム機の。
「何それ?」
本人も言った通り、ゲームのことはわからない祐巳さまは、それを見せられてもなんなのかわからない。
だが、私にはわかった。
「『ギャルゲーツクール』ですか?」
「ご名答」
「え? ぎゃる…?」
そうかそうか、そういう形で出回っていたのか。なるほどね。
「乃梨子ちゃん、そのぎゃる……って、なに?」
「『ギャルゲーツクール』です。私も詳しくはないですが、自分で好みのゲームを作るっていうゲームだったはずです」
「……ゲームを作るゲーム?」
言葉にすると変な感じだが、それで正解。
補足するように、真美さまは言った。
「祐巳さんにわかりやすいように言うなら、小説を書くワープロみたいな感じ。小説を書くために必要なものが全部入っているゲームソフトが」
「その、『ギャルゲーツクール』?」
「そう。いわゆる素材集よ」
そういうものらしい。私もゲームの名前と、それが何をできるのかくらいしか知らないので、祐巳さまと一緒に知識に入れておく。
「へえー! ゲームってこんなに小さくなったんだ!」
祐巳さまはなんだか感激していた、が。
「いや祐巳さま、それはメモリーカードです。ソフトじゃないです」
「めもりーかーど?」
「……あとで説明します」
本当に知らないんだな。今時珍しいくらい知らないんだな。
「それ、どうやって入手したんですか?」
私が指差す先には、問題のメモリーカードがある。この中に『ギャルゲーツクール』で作った『リリアンメモリアル』のデータが入っているはずだ。
「持ってる人からコピーしてもらったの。――乃梨子ちゃんが心配するようなことは一切ないわよ? 金銭も絡んでないし、大した個人情報も漏れてないって話だし」
さすが真美さま、すっ飛んできた私たち……いや私の心配事をさっさと払拭してくれた。
「ただ、私が自分の目で確かめたわけじゃないから、保障はできないのよね」
そりゃそうだ。ここにメモリーカードがあるのなら、真美さまは今日学校でそれを手に入れたことに他ならない。用もないのに持ってくるようなものでもない。
「でね、これをコピーする条件が三つあるのよ」
「条件? 三つ?」
真美さまは三本指を立てて、一つずつ折っていく。
「一つ、コピーしてくれた相手のことは絶対明かさない。二つ、リリアン生以外へのコピーは禁止。三つ、これはあくまでもフィクションだから作中の表現と実際は異なる、だってさ」
……ふうん。
「ちなみに私が手に入れたコピーは、恐らく作者の手から三回以上は経由されてる。だから作者を探し出すのは困難でしょうね」
それは、真美さまにまでコピーが回ったことが、製作者追跡は不可能であると言っているようなものだ。
その心配がないなら、条件に「新聞部には回さないこと」だの「山百合会メンバーには話さないこと」等も付加しているはず。リリアンの生徒は良くも悪くも真面目だから、たとえ口約束でも少々のことでは反故されることもないだろう。
そして逆に言うなら。
「作った人、山百合会に相当近い人じゃないですか?」
「あ、乃梨子ちゃんもそう思うんだ?」
「ええ。三つ目の条件がすごく引っ掛かるもので」
「そうよね。誰かが想像で作ったのなら、あえて『これはフィクションだ』なんて念を押すことないものね」
「それに山百合会を恐れてない」
「そこよ。作者が誰かバレても、山百合会の報復なんてどうでもいいって意思を感じるわ。それは山百合会の全貌を知っているからこそ安心している」
「この推測が正しければ」
「このゲームに出てくるキャラたちは本人に限りなく近い性格になっている、と。物語までは知らないけどね」
さすがは真美さまだ。頭の回転速いな。
「――えー、そうなんだ」
「――私もまだやってないんですけど、結構面白いらしいですよ」
……早々に話に付いて行くことを放棄して、向こうで平和に話をしている次期紅薔薇さまとは大違いだ。日出美さんとなにを話してるんだ。
「来年、大変そうね」
「お察ししていただけるだけで結構です。それに大変なのは瞳子ですから」
私と真美さまは、揃って溜息をついた。
「……まあ祐巳さまのことは放っておくとして。それ、コピーさせてもらえませんか?」
「それはいいけれど、さっき言った三つの条件を飲むのね?」
「山百合会代表としてではなく、個人としてなら」
「それで結構。――実はね、乃梨子ちゃん」
祐巳さまの様子をチラッと見てから、真美さまは神妙な顔をする。
「この『リリアンメモリアル』だけど、山百合会メンバーだけが出てるわけじゃないのよ」
「え? ……と言うと?」
「山百合会以外で言えば、私と日出美、蔦子さんと笙子ちゃん、細川可南子さんとか。とにかく、十人以上のリリアンの生徒がゲームキャラとして存在しているらしいのよ」
なんと。十人以上も被害者が。
「自主制作にしては念が入っているというか、幅広いというか、作り込んでいるというか……」
「とにかく情熱は感じるわよね」
そうそう、情熱は感じられる。
ギャルゲー自体が未経験なので上手いことは言えないが、十人以上もキャラを作ったその入れ込みようと執念がすごい。私だったら志摩子さん一人だけで事足りるのに。
「明らかに趣味を逸脱して『誰か遊んでくれ』って主張してますね」
「まあその辺は、やってみた感想でしか語れないところよね。どこまで作り込んでいるかが重要だもの。――私も出てるし」
なるほど。道理でスラスラ情報をくれると思えば、この真美さまも、私たちと立場は一緒なわけだ。この手の騒動には珍しく無関係どころか同じ被害者だったわけだ。
どこまで自分の個人情報が出ているのか、気になって気になってしょうがないのだろう。
「とにかく、コピーはいただけます?」
「いいわよ。これ持って行って」
と、真美さまは持っていたメモリーカードを差し出す……って。
「真美さま、チェックしないんですか?」
「日出美も今日手に入れたみたいで、今ダブッてるのよ。だから一枚は渡せる」
そういうことなら遠慮なく借りておこう。「ありがとうございます」と頭を下げて、ケース入りの黒いプラスチック片を受け取った。
「ところで乃梨子ちゃん、ゲーム機持ってるの?」
「いえ」
「本体もそうだけど、ソフトもないと遊べないわよ? それとソフトは正確には『ギャルゲーツクール3』っていう、最新版なんだって」
真美さまは「うちはゲーム機持ってる子がいて、ソフトは部員全員のカンパで共同購入する予定よ」と、親切なアドバイスをしてくれた。
が。
「たぶん大丈夫です」
私はゲーム機本体もソフトもお金も持っていないが。
でも、お金持ちの友達は持っているわけで。
薔薇の館での作業が終わり、皆……というより、志摩子さんと由乃さまを見送る。
「え? 乃梨子、一緒に帰らないの?」
「ごめん志摩子さん。ちょっと瞳子に話があって」
「そうなの……」
志摩子さんに寂しげな顔をされて、ぎゅーーーーーっと胸を締め付けられたものの、名残惜しいが志摩子さんを見送る私。
「祐巳さんも?」
「う、うん」
「……なんか隠してない?」
「隠してない隠してない」
軽く疑惑を掛けられ慌てて首を振る祐巳さまも、疑心暗鬼な由乃さまを見送り。
「――それで、なんですか?」
薔薇の館会議室には、新婚ほやほやの祐巳さまと瞳子、そして私の三人が残っていた。
今日は少々早めの解散となったが、二月現在の今、すでにリリアンは夕陽に染められていた。
「乃梨子ちゃん、説明お願い。私はカップとか洗っちゃうから」
祐巳さまはその方が早いと考えたのか、さっさと役割分担を決めて動き出してしまった。確かにその方が早いので異論はない。
「……それで?」
私と祐巳さまの二人が事情を知っていることがおもしろくないのか、瞳子はむすっとしていた。そんな顔されるほど色気のある話じゃないんだが。
「一から話すけど、瞳子はギャルゲーって知ってる?」
「ぎゃる……なにそれ?」
やはり知らなかったようなので、「簡単に言えば女の子を口説き落とすゲームのこと」とだけ話した。
「はあ……」
わかったのかわかってないのか、瞳子は曖昧にうなずく。
「まあそういうゲームのジャンルがあるってことだけ、今は理解しておいて」
「わかったわ。で?」
「そのギャルゲーに、『ギャルゲーツクール』っていうソフトがあるの」
「つくーる?」
「名前の通り、ギャルゲーを自分で作るゲーム」
「はあ」
「で、ここからが本題なんだけど」
「何が言いたいのかしら?」と要領を得ていない瞳子に、私はずずいっと詰め寄った。
「今リリアンに、リリアンを舞台にしたギャルゲーが作られて、出回ってるらしいのよ」
ぽく ぽく ぽく ちーん
「……………………、えっ!?」
かなり長い沈黙の果てに、ようやく瞳子は話を理解してくれた。すごい勢いで眉が吊り上った。
「それって、ゲームの中で私やお姉さまが男に口説かれてるって話!?」
「いや、作ったのがリリアン生みたいだから、主人公は女性。だから――」
「それってお姉さまや私や乃梨子が、誰かに口説かれて姉妹になるってゲーム!?」
そういうこと、と私はうなずく。流しでこちらの様子をうかがっている祐巳さまもうなずいている。
……祐巳さまのあの顔、本気でゲーム楽しみたいって顔だな。
「何、その不快なゲーム」
瞳子は吐き捨てるようにつぶやく。まあ、瞳子の冷たい反応も、わからないでもないが。
「怒る気持ちはわかるけど、話は最後まで聞いて」
「作った人を探して報復するっていうなら、全面的に力を貸すわよ?」
こりゃ相当怒ってるな。
「その前に、ゲーム内容を確かめたいのよ」
「ゲーム内容って……その、私たちを口説くゲームの内容?」
「そう。規制を呼びかけるにしろ、なんにしろ、それを知らないと規制する理由が弱いじゃない。肖像権の侵害でもいいけど、それを主張するもっと強い説得力が欲しいのよ」
「…………」
「そもそも、どこまで私たちに近いのかがわからないと、動きようもないと思う」
「……そうね」
私の言葉に、瞳子は考え込む。知りもしないものをどう規制するのか、また規制を言い聞かせるだけの説得力があるのかと、真剣に悩んでいるのだろう。
そう、説得力がなければ、規制ができない。不特定多数がゲーム(というかデータ)を持っているわけで、それを一人一人探し出してしらみ潰しに対処するのは、どうしても人員と時間が足りない。
むしろ下手に規制なんてしたら、余計に興味をそそる結果になるだろう。弱い規制活動なんて追いつかないようなスピードで、インフルエンザウイルスのように広まってしまう。
しかも特効薬も予防薬もなしだ。この問題は性質が悪い。
「……で、乃梨子はどうするべきだと?」
「データはもう手に入れた。あとはゲーム機とソフトがあれば、すぐにでも確かめられる。まずはそれからだと思う」
「すぐ手配するわ。今夜からできるようにする」
よし、ゲーム環境確保! 持つべきものはお金持ちの友達だ!
「ねえねえ」
互いの意思が通じてニヤリと笑い合う私と瞳子の間に、緊張感のかけらもない笑顔で祐巳さまが入ってきた。
「一番最初はお姉さま口説こうよ、お姉さま」
「…………」
「…………」
……こうして私たち三人は、松平邸へと向かうのだった。
学園の公衆電話から電話を一本。
10分ほどして松平の迎えの車がリリアンに到着し、私たちは後部座席に乗り込んだ。
松平家……というか屋敷に到着すると、瞳子の先導で客間へと通される。
「「おぉー……」」
そこには、すでに大型プラズマテレビとゲーム機とソフトが用意されていた。テレビ以外は未開封なので、どれも新品で調達したようだ。
私と祐巳さまは松平邸……は、さすがに小笠原邸を知っているので驚かなかったが、瞳子の電話一本で用意されたそれらには驚いた。
やはり瞳子もお嬢様なのだ。伊達に縦ロールを巻いていない。
「あの、瞳子、ご両親にご挨拶を……」
車に乗った辺りから妙にそわそわしていた祐巳さまは、姉として瞳子のご両親へのお目通りに緊張していたようだ。
「残念ながら母は体調を崩しているので、今は遠慮していただけると。父はまだ帰っていません。恐らく遅くなると思います」
とのことで、ご挨拶はまた今度、という運びとなった。
「それより乃梨子、早く早く」
瞳子にドリルを振り回されながら急かされ、ここに来た目的を思い出す。
そうそう、『リリアンメモリアル』をプレイ……いや、確かめるためにやってきたのだ。のんびりしている場合ではない。
「瞳子、ソフト開けて。私は本体セットするから」
軽く分担して、私たちは環境を整える。
祐巳さまは、お手伝いさんが運んできた紅茶とクッキーを受け取り、テーブルにセッティングする。
そんなこんなで、やっとプレイできるようになった。
革張りのすごいソファーに右から祐巳さま、私、瞳子と三人並んでちょこんと座り、とりあえず私がコントローラーを握ってみる。
「えーと、まずはメモリーを呼び出して、読み込んで……よし」
慣れない操作でぎこちなくテレビ内のカーソルを動かす。
「「おおー」」
画面に現われたるは「リリアンメモリアル 〜伝説のマリアさま 絆のロザリオ〜」というカラフルなタイトルロゴと、木造校舎と青空の背景。
なんというか、これを見てしまうと、反感しかなかった私も期待でワクワクしてきてしまった。
「『はじめから』と『つづきから』があるね」
「『はじめから』でしょうね」
続きデータはあるかも知れないが、私たちは初めてなので『はじめから』を選ぶ。
ピロリン、という軽い効果音が流れ、次に「あいうえお」等の文字が画面いっぱいに羅列される。
「今度は名前ですって」
瞳子の鷹揚のない声。興味ないです、って態度だが、逆にその冷静な態度が興味津々であることを物語っている。
「じゃあ、『瞳子』で」
「「え!?」」
瞳子と一緒になぜか驚く祐巳さま。……この人、本当に祥子さま口説きたかったんだ。
文句が出る前に、さっさと主人公の名前を『松平 瞳子』と入力。
「いえいえいえいえいえ! 読みは同じでもいいけれどせめて漢字だけは変えて!」
「えー」
「『えー』じゃないの! だったら乃梨子の名前にすればいいじゃない!」
本人からそんな強い要望もあり、瞳子改め『東子』と入力し直した。
そして、ゲームスタート!
☆
―― この学園には伝説がある。
―― マリアさまの像の前でロザリオを授受した姉妹は、永遠に幸せになれるという。
―― 私立リリアン女学園。
―― ここは、乙女の園。
☆
「あ、私出た! 私、私!」
祐巳さま大興奮。ちなみにキャラの名前は「深沢 祐巳」。どこかに似たような名前の人形があったような。
モデルは祐巳さまであることは一目瞭然だが、製作者は実名を避けたらしい。
☆
――「東子さま、こっちです」
―― 祐巳さんに誘われるまま、私は歩き出す。
―― 高校生活最後の三年目に入る、今日。
―― 私の高校生活は、この日から、一転した。
☆
「逆転だね」
「逆転ですね」
ゲーム上では祐巳さまが二年生、主人公の「東子」が三年生という設定になっている。
「それにしても、どうしてスカートがあんなに短いのかしら。膝上ギリギリじゃない」
瞳子がブツブツ文句を言うが、恐らく今時「ローウエスト膝下スカートのワンピースのセーラー」という制服素材がなかったからだろう。『ギャルゲーツクール』は現代版だから。
軽く説明書を読んでみた限りでは、真美さまの言った通り、このゲームソフトは素材集なのだ。
たとえばキャラ……人物を作るなら、まず数種類ある体格から一つを選び、顔の輪郭を決め、そこからキャラの上に服などの素材を重ね、色を付ける。
ちまちました作業を積み重ねて出来上がったのが、モニターで微笑む「深沢 祐巳」というわけだ。
☆
――「薔薇の舘へようこそ。松平 東子さん」
―― 豪奢な黒髪が美しい、一際綺麗な女性が私に笑顔を向けてくる。
―― 彼女は「紅薔薇さま」と呼ばれる三年生・御笠原 祥子さん。
☆
「お姉さまが! お姉さまが!」
「祐巳さま痛いっ、祐巳さま痛いっ」
興奮のあまりばっしばっし肩を叩いてくる祐巳さまに、私は悲鳴を上げた。
祐巳さまは叩くのはやめたが、今度はぐいぐい肩を揺すってくる。
「赤い薔薇を背負って!」
そうそう。少女漫画的に淡くぼやけるという特殊効果付きで、赤い薔薇を背負って祥子さま初登場だ。いやむしろアニメ的特殊効果だろうか。
「でも前髪の分け目が微妙に違う!」
それも素材がなかったからでしょう。きっちりな73になってるし。
「乃梨子、早く進めて」
瞳子、その前に興奮する姉を止めてくれ。
☆
――「今日、あなたに来て貰ったのは、今年一年間の薔薇の舘のお手伝いを頼みたいからなの」
――「どうして私が?」
――「ここにいる祐巳が、あなたのことを気に入っているからよ」
――「さ、祥子さま、それは言わない約束です!」
☆
「ええっ!? 私、お姉さまの妹じゃないんだ!?」
ほほう。そうかそうか。
「ゲーム設定的に、山百合会メンバーと登場人物は、誰も姉妹じゃないみたいですね」
「それはそうなんじゃないかしら」
瞳子も気付いているようだ。
そりゃそうだ。最終的に主人公とキャラが姉妹になって終わるなら、誰彼が姉妹と設定すると、最後には略奪しての姉妹になってしまう。
でもそうすると、三年生を口説く時はどうなるんだろう? 同学年だけど。
「誰も姉妹じゃない山百合会か……なんかすごく業務的に厳しそうだね」
「……言わないでください」
瞳子が入るまで一年生たった一人の時期が長かった私からすれば、「業務的に厳しい」が骨身に染みているのだから。
「……それより乃梨子、早く進めて」
モニターの中で赤面している「深沢 祐巳」を見て、瞳子の目が真剣みを帯びてきていた。
ほら、祐巳さまゲームじゃミニスカだから。
祐巳さまの強い要望通りに、まず祥子さまを口説き落としに掛かることになった。
私も瞳子も内心渋っていたが、それぞれの姉に行きたかったが、どこまで現実に忠実なストーリーを構成しているかわからないので、祥子さまで様子見だ。
――「今週は、どうしよう?」
そんな説明的な主人公「東子」のセリフとともに、自室背景に数値とアイコンが並ぶ。
「『体力100 知力30 運動30 ストレス00 舘000回』…?」
瞳子の読み上げる声に合わせて、私も各種ステータスに目を向けていく。
アイコンの個数は6個で……ベッドは体力、本は知力、運動は鉄アレイ、家みたいなのが薔薇の館のお手伝いだろう。最後のカードは環境設定というか、オプションかな?
「体力、知力、運動とストレスはそのままの意味で、舘は『薔薇の館のお手伝い』の回数ってことだろうね」
それぞれの数値を上げていけば、狙いの女の子とうまく行くのだろう。
……「狙いの女の子」って表現、なんかいやだけど。絶対女性が使う表現じゃないけど。
「祥子さまを口説くには、どうしたらいいのかな?」
祐巳さまの疑問の声。私も詳しくないからなぁ……
「薔薇の館の代表って感じだったので、とにかくお手伝いを多くすればいいんじゃないでしょうか」
たぶん。
三人で盛り上がったり興奮したりしながらゲームを進めていく。
本当に真美さまだの蔦子さまだのが登場して、姉妹じゃない私や志摩子さんや由乃さまや令さまや瞳子が出てきて。
「じっ、自慢の縦ロールがっ……!」
瞳子(キャラ名・竹平 瞳子)の髪型が、左右結ばず下ろした豪華な縦ロールになっていたり。
――「仏像に興味は?」
私(キャラ名・一条 乃梨子)が、二言目には「仏像」だの「玉虫観音は――」等々の仏像関係のうんちくを口走る怪しい人になっていたり。
――「貴女は神を信じますか?」
志摩子さん(キャラ名・藤堂 志真子)が純粋なまでにシスター志願していたり。
――「一緒に走る?」
令さま(キャラ名・支倉 玲)が、たぶん素材に剣道部関係がなかったためか、多数の運動部を掛け持ちする運動大好き体育会系になっていたり。
――「フン。新入りなら新入りらしくしてくれませんか? 私は年上だからって遠慮しませんからね」
由乃さま(キャラ名・縞津 由乃)が露骨にツンツンしていたり(恐らくツンデレ)。
――「い、一緒に帰りませんかっ?」
祐巳さまに限っては、更に露骨にモロに主人公が好き、という設定になっているらしい。
――「ちょっと祐巳、落ち着きなさい。由乃ちゃんも、先輩にその態度はないでしょう?」
私見では、祥子さまが一番実物に近いと思う。
しかし。
特徴が大袈裟なまでに特化してはいるが、各々性格は似ている。
これを作った人は、やっぱり山百合会に近しい人物ではないだろうか。
ゲームを初めて三時間ちょっとで、ようやく一周目の終わりが見えてきた。
長いようで短い架空リリアンの高校生活が幕を下ろそうとしている。
「「…………」」
妙な達成感があった。
いつの間にかゲームにのめり込んでいき、次第に口数も減ってきていた。
途中で私と祐巳さまは、家に「遅くなる」と電話を入れた以外、ノンストップでここまでやってきた。
――「これで高校生活も終わりか……あら? 下駄箱に手紙が」
―― マリア像の前で待っています。
――「誰からかしら? 行ってみましょう」
ごくりと祐巳さまの喉が鳴った。
瞳子はハンカチを握り締めてモニターを睨んでいた。
私も適度に緊張しながら、物語を進めていく。
いつもの下駄箱。
いつもの通学路。
そして、いつものお祈りを捧げるマリアさまの像の前。
なんだか妙に寂しげなBGMが感傷を誘い、これまでの仮想リリアンの学園生活が走馬灯のように思い出される。
――「あら、東子さん。早速お手伝いに来てくれたの?」
初めて薔薇の館の手伝いに行った時の祥子さまの微笑み。
――「東子さん……あなた、最近手伝いにばかり来ているけれど、テストの方は大丈夫なの?」
――「……仕方ないわね。私が見てあげますから、今度の日曜日は空けておいて」
期末試験を目前に控えてグングン「勉強ポイント」が下がっていた時、厳しい顔をしつつも救いの手を差し伸べる祥子さま。
――「……私、その、男性に囲まれるのが苦手で……」
――「お願い、東子さん。今度の男子校での学園祭、私と一緒に居てくれないかしら?」
いつも気丈なのに弱々しい態度で懇願する祥子さま。
――「……ほら、雪が……」
クリスマスパーティーの帰り、二人きりで、マリアさまの前で幻想的に舞い落ちる雪の中で頬を染める祥子さま。
――「あなたに私の何がわかると言うの!」
ゲーム内オリジナル設定なのか、卒業後すぐに「王子」と呼ばれる許婚と結婚する、という悩みを抱えていて、様子がおかしいと心配する東子とケンカする祥子さま。
私は本人への思い入れは人並み程度だが、ゲームを通して触れ合った「御笠原 祥子」には、愛着というか、そう、好意を抱いていた。
現実でも、祥子さまはこういう感じなのかもしれない。
祥子さまの性格上、絶対に年下には見せない表情も、同学年の友達……令さまや、妹の祐巳さまは見ていて。
瞬きもせずモニターを見ている祐巳さまにとっては、ゲームと現実が重なるところもあるのかもしれない。
少なくとも、私もゲーム内の祥子さまは、ものすごく好きになったから。
コントローラーのボタンを押し、背景は「マリア像の前」へと移行する。
そこには彼女が……
「御笠原 祥子」が……
――「急に呼び出してごめんなさい」
振り返るその人は……
――「え? だ、誰……?」
――「ケイです。祐巳さんの友達のケイです」
なっ……!!
「「おっ、おまえ誰だーーーーーー!!!!」」
予想だにしなかった驚愕のエンディングに、私たちは声を揃えて怒声を放っていた。
「どうやら隠しキャラのようです」
データを解析してわかったのは、「ケイさん」なる人物は、フラグ……攻略に必要なポイントやイベントが足りず、まあいわゆるバッドエンド用のキャラってことらしい。
見ず知らずのケイさんの告白物語を読む限りでは、ゲームキャラの祐巳さまの親友で、祐巳さまと同じく主人公に想いを寄せるキャラだったようだ。ただしこっちは一度もゲームに出ないほどこっそりと。
「ケイさんなんて知らない! お姉さまぁ……お姉さまぁ……!」
祐巳さま超がっかり。
「ここまで盛り上がった私の気持ちをどうしろと!?」
瞳子大激怒。
「…………」
そして私は、がっかりして怒りつつ無言のまま再プレイ。つまり二周目突入。
――この後、私と祐巳さまは一週間ほど瞳子の家に入り浸ることになった。
それにしても。
「これ、本当に誰が作ったんだろう……」
一からこれを作った人がいるわけだけど、これは相当な山百合会フリークの手によるものだ。それだけは断言できる。
規制に乗り出すどころか、ハマッてしまった祐巳さま……は最初から論外として、意外なのは私と瞳子。自分でも意外だと思う。
ストーリー的には、現実に近いものもあったが、ほとんど創作だ。ただしキャラの性格付けは結構似ている。祐巳さまの話では、祥子さまも似ているらしい。
それは瞳子も同意のようで、「このくらいなら構わない。実名でもないし、あからさまにモデルの心象が悪くなる表現もないから」との判断だ。
私もこの程度なら問題ないと思う。ゲームキャラ志真子さんの性格やイベントもなかなか良い出来で気に入った。悶えそうになるほど気に入った。これが「萌え」という感情だろうか。
それにミニスカだし。セーラーでミニスカだし。
特に瞳子のハマり具合は私たちの一段上を行き、自分で『リリアンメモリアル2 〜温室の妖精〜』なるゲームを作り始めてしまうほどだ。私は「程々にしときなよ」と注意したが、本音ではかなり期待している。
そして。
ゲームをプレイした者は、必ずこう言うのだ。
「隠しキャラのケイさんって、誰がモデルなのかしら?」
それはケイさん本人にしかわからないのかもしれない。