……ッ!
みな絶句した。
ビスケット扉を開き、中へと入ってきた乃梨子の後ろには……。
「あの〜、乃梨子ちゃん?…そちらの方は?」
「黄薔薇さま…よくぞ聞いてくださいました。ご紹介致します、こちら、本日より私の妹となった麻衣子です」
「妹…!?」
「グォフゴフ」
「何かおかしな点でも?」
おかしな点でも?じゃないわよ、乃梨子。あなたの連れているもの、どう見ても、人じゃないじゃない…。
私のお姉さまも含む薔薇さま方の驚きは、物凄いことになっている。特に乃梨子のお姉さまである白薔薇さまは……、口から紅茶がこぼれ出ている。
「乃梨子ちゃん?100歩ゆず…いや、何でもない!妹なのは分かったから、経緯を教えてくれないかな?」
お姉さまの質問は、お姉さまにしてはまともだった。
「経緯…ですか、紅薔薇さま。それもそうですね。今まで親しい1年生がいるなんて一言も言っていなかったですし」
私も初耳だ。乃梨子、あんたそんな様子全くなかったじゃない!
「あれは〜略〜桜の木の下でロザリオの授受を行った、というわけです。ね?麻衣子」
「グゥ〜ルロッフ」
グルロフじゃないッ!私はそう思いながらも視線を動かした。そう、白薔薇さまの元へ。話の流れからすると、乃梨子は親愛なる姉にもこのことについて、全く話をしていなかったようである。白薔薇さまは紅茶を垂れ流してこそいないけれども、相当ショックが大きいようだ。目の焦点が定まっていない。
「…そ、それで……乃梨子、その……麻衣子さんとやらとはどこで知り合ったのかしら……?」
これは重症過ぎる。話が頭に入っていないようだ。
「志摩子さ、お姉さま!何をそんなに動揺しているのですか?妹になるまで黙っていたのは謝ります。でも、私も悩んでいたんです…。誰にも相談しなかったことを薄情と思われても仕方ありません!けれど!私はもう妹にしてしまったんです!!お姉さまなら暖かく向かえいれてくれると思っていたのに……ッ!!」
「……乃梨子、そういうわけでは……。あぁ、どうしましょう。何て言えば……。簡単に言えば……そういう理由で動揺しているのではないのよ。もちろん相談してほしかったというのはあるわ!……けれど、今動揺しているのはそういうわけじゃ……」
そう、間違いなくそういうわけじゃない。私も痛いほどよく分かる。私や白薔薇さまだけではないだろう。お姉さまや黄薔薇さまも、同じ理由で動揺しているはずなのだ。