◆隠れた特技シリーズ第1弾になるかは不明w
もしよかったら某音ゲーの「亜空間ジャズ」でも聞いてみてくださいなw
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音楽室から聞こえるピアノの旋律に、ついふらふらと私は中に入っていった。
中にお姉さまがいるかなと期待していなかったわけではなかったが、しかし、中にいたのはおかっぱ頭の一年生だった。
「乃梨子ちゃん、ごきげんよう」
「あっ、祐巳さま。ごきげんよう」
乃梨子ちゃんは椅子に座ったまま。ピアノの鍵盤の上を、滑らかに指が動き、素敵なメロディを奏でていた。
「乃梨子ちゃんピアノ弾けるんだね」
「少しだけですけどね」
近くの席に座り、私は乃梨子ちゃんの演奏を楽しむことにした。
「祐巳さま、最近瞳子はどうですか?」
「うん。いい感じにドリルってるよ」
「よかった。たまにあのドリルのキレがなくって、この前なんか驚いた可南子さんの身長が8m縮みましたから」
平然と馬鹿な話をする私たち。
しかし、ここで私はあることに気付いたのでした。
……乃梨子ちゃん、手元見てない。ていうか、ずっとこっちを見ている。
「乃梨子ちゃん、手元見てなくてもミスしないね」
「そうですか? 結構ミスっちゃってるんですけどね」
……そうなの?
「今弾いてる曲って何? 聞いたことないんだけど」
「あー。即興です」
…………そうなの?
「の、乃梨子ちゃんって実はすごいピアニストだったりするの?」
「まさか。志摩子さんの方が凄いですよ。さすがに私はオルガン抱えて演奏とかできませんから」
………………ソウナノ?
「あ、あの」
「はい?」
「なんか指の動きが、その」
「どうしました? 私、さっきの黒鍵外してました?」
「ち、違うの。見えないんだけど」
「そうですか? 祐巳さま、毎日働いててお疲れなんですよ」
いやいやいやいや。
明らかに残像どころじゃなくなってるって、乃梨子ちゃん。
って、なんかだんだん音の数増えてるし。なんか一人でグルーヴ感出しちゃってるし。
ていうかさっきの話の中の志摩子さん何。オルガン抱えて演奏って、東京スカパラダイスオーケストラの沖さんの話じゃなかろうか。
「あ、ミスっちゃった」
……何がミスだかわからないくらいにアヴァンギャルドな演奏なんですが(汗
「あーあ。よし。曲調変えよう」
……なんか今度はEL&Pかってくらいにプログレッシヴな演奏なんですが(涙
……。
「乃梨子ちゃん」
「はい」
「この曲って、終わりあるの?」
「即興ですから、すぐ終われますよ」
「……ちょ、ちょっと一回終わらせてみて」
「はい」
……あ、本当だ。綺麗な締め方。
「いやー、こんなにノれたのって祐巳さまのおかげかなー、なんて」
「あ、あはははは、ははははは」
うん。我ながら枯れた笑いだ。
「普段ならみんないるんですよ」
「みんなって?」
「可南子さんと瞳子と笙子さん。あと志摩子さんとかもたまに」
「だ、誰がどの役割なの!?」
「えーと、私がピアノ。可南子さんがベースで、瞳子がバイオリン、笙子さんがパーカッションですね」
なんだろう。すごく聞いてみたいけど鼓膜がお亡くなりになる予感がする。
「志摩子さんが来る時は、志摩子さんがピアノで私がドラムにまわります」
なんだろう。ゆったりしたジャズとかならいいのに、ハードなビートが私を貫きそうな予感がする。
「近いうちにジャムると思うんで、その時は祐巳さまもお呼びしますね」
「ぜひ」
あ、つい言っちゃった。
***
その三日後。
私は音楽室で音の洪水に飲み込まれました。