【2609】 祐巳のお父さん  (通行人A 2008-04-30 19:47:53)


ケロロのクロスです。
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企画SS
【No:2598】
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12.祐巳の過去




祐巳は喋りだした。


祐巳「まずは私の昔の事からかな。
   私の産まれた時の名は小笠原。
   小笠原祐巳。
   祥子さまの腹違いの妹よ。
   もっとも私は愛人の子だけれどね。」

乃梨子「!」

祐巳の態度や言動から、
なんとなくそんな気はしたけどいざ本人の口から聞いてみると驚いてしまう。

祐巳「母はね。私を産んですぐ死んじゃってね、
   それで赤ちゃんの私をほっとけないって、
   清子さま、ああ、祥子さんのお母さんね。
   が引き取ってくれたの。」

清子さま?祐巳は今清子さまと言った。
何で?
赤ん坊の頃引き取られたなら母親のように呼んでもいいと思うのだけど。

祐巳「清子さまを初め、本家の人は実の娘のように可愛がってくれたわ。
   ただ、分家の人や小笠原グループに名を連ねる他の財閥の人たち(長いのでここからは分家の人たちと表記します)
   は私の事が気に食わなかったの。
   まぁ、今ならその気持ちも分からなくはないけどね。
   そりゃあ、どこの馬の骨とも分からない小娘が次期当主の娘だって、
   いきなり現れて自分たちより上の立場に立ったら認めたくないんだと思う。
   分家で中が良かったのは、
   祥子さまの婚約者の柏木優さんと、その柏木家、
   それと松平瞳子ちゃんと、その松平家の2家だった。」

えらい、瞳子
それにしてもそいつらもし私の前に現れたらぶん殴ってやる。

祐巳「本家の人たちは私が愛人の子というのを隠してくれてたんだけど、
   分家の人たちの陰口で物心付いたときには、もう愛人の子だという事を知っていてね、
   それで周りに認めさせてやるって躍起になって、清子さまに頼んでいろいろやったわ。
   お茶にお花、書道に空手に合気道、果ては剣道にダンスなんかもやったわ。
   逆にそれが反感を買ったみたいだけど、最初は『雑種なんかに出来るものか』とか言ってたんだけど、
   私がそんな人たちを軽く超える記録や成果出していったら、
   今度は『私が乗っ取りを企ててる、小笠原家から追放すべきだ』って意見が出てね。」

乃梨子「はぁ?なんですかそれ、そんな理由で祐巳を追放したんですか?」

祐巳「まあ、時期が悪かったんだよ。
   その時期本家の中でも1番発言力があって1番良くしてくれた、ひいお爺様が亡くなって、
   分家の人たちの押さえが利かなくなったのよ。」

乃梨子「だからって!!」

祐巳「私が言ったのよ。
   『小笠原は大きいのだから内部で揉め事を起こしてると、
   関係のない下の人たちに迷惑がかかる。
   それこそ、その所為で会社の仕事が停滞して人件費を削らざるを得なくなって一家心中なんて人が出たら嫌だもの。
   少なくとも日本の経済情勢が傾くのは確実だし。
   家のことに私情を挟むべきじゃない。』って。」

乃梨子「でも、それだったら向こうだって思いっきり私情挟んでるじゃないですか!!!」

祐巳「祥子さまたちもそう言ってたんだけどね、妥協点の無い真逆の私情なら、どっちかが手を引かないと。」

乃梨子「だからって・・・」

祐巳「それにね、分家の人たちに仕事をボイコットされたら、いくら小笠原でも潰れるわ。
   それだったら恩を売っておいて後で利用するほうが得だわ。
   それにその頃、私、リリアンに通ってなくて、
   後半年で小学校卒業だったから卒業して、
   中学に入る前に養子に入れば知ってる人もいないし転校生でもないからあれこれ詮索されなくて済むしね。」

乃梨子「皆さんそれで納得したんですか?」

祐巳「条件つきで納得してもらったわ。」

乃梨子「条件?」

祐巳「1つはリリアンの中等部から入ってリリアンの大学部まで出ること、
   もう1つは養子入りするのは福沢家にすること。」

乃梨子「?・・どうしてですか?」

祐巳「福沢家なのは、清子さまとお母さんが、凄く仲が良くて女の子が欲しかったから、
   それに信用出来るかららしいわ。
   リリアンなのは、瞳子と祥子さまがいるから。」

乃梨子「?・・なんで?」

祐巳「スール制度があるから、高等部のみだとあからさま過ぎちゃうから中学と大学も入れたんだと思う。
   それで2人のどちらかとスールになるということは、
   小笠原家に名を連ねるに等しいから間接的に連れ戻そうってことだと思う。
   現に2人からスールの申し出があったし。
   まぁ2つとも断っちゃったんだけどね。」

乃梨子「どうしてですか。」

祐巳「乃梨子は、瞳子ちゃんの申し出を受けたほうが良かった?」

乃梨子「そんなわけない!!!!」

思わず叫んでしまった。
もしそんなことになったら、瞳子を呪ってやる。

祐巳「そんな呪ってやるなんて考えないの。」

乃梨子「!!」

何で考えてることがわかったの?
祐巳ってエスパー?

祐巳「違うわよ、百面相。顔に出てたわよ。」

乃梨子「へっ?百面相って?」

祐巳「今考えた、乃梨子の表情コロコロ変わるんだもの。
   でもありがとう、そこまで思ってくれて。」

あぅ、
落とされてから、急に持ち上げるから余計に恥ずかしい。

祐巳「まだ質問に答えてないわね。
   祥子さまのときは条件に無かったし、それじゃ家を出た意味がないもの、
   瞳子ちゃんのときはもともと受ける気なかったし、
   それにその時、既に乃梨子にロザリオ渡してたからね。」

乃梨子「後悔してませんか?」

祐巳「何に対して?」

乃梨子「全部に対して」

祐巳「人生の全てに対したら、そりゃ私も人間だものしたことが無いって言ったら嘘になるかな。
   でも、今日話した私の過去に対してならしてない。
   これは断言できるよ。
   乃梨子にお姉さま、
   志摩子さんに由乃さんに令さま、
   蓉子さまに江利子さま、
   静さまに蔦子さん、
   真美さんに桂さん達に会うことも出来なかったもの。
   それに私、この家と家の人も好きよ。
   あたたかいし、
   お父さんもお母さんも祐麒もよそ者の私を本当の家族のように迎え入れてくれたし。
   もちろん今の乃梨子やケロロたちとの賑やかな家庭も大好きよ。」

乃梨子「もう、祐巳ったら。」

祐巳「それでね、乃梨子が志摩子さんと何でか知らないけど、あまり仲良くないのは知ってるけど、お願いしても良い?」

乃梨子「お願い?」

祐巳「うん、たぶん別荘にさっき言った人たち、他の財閥の人たちが来ると思うの。
   スールになるって事はその家の家族同然なの、そんな事あの人たちがこころよく受け入れるとは思えないもの。」

乃梨子「その人たちから守れって事?」

そいつら絶対殴る。

祐巳「うん。それと殴っちゃだめだよ。」

バレバレ?
私ってそんなに顔に出やすいのかな?

乃梨子「ん〜〜、わかった、でも祐巳からお願いって珍しいね。」

祐巳「そう?」

乃梨子「うん、祐巳っていつも自分の中に溜め込んだり、自分ひとりで解決しようとするんだもん。
    この際だし他にお願い無いの?」

祐巳「ん〜〜、じゃあ、公だけじゃなくて私でも『お姉さま』って呼んで欲しいな。
   初めて出会った時から乃梨子、私の事『祐巳』って呼んでるじゃない。
   なんか親しくなった感じがしなくて。」

乃梨子「ん〜、それが祐巳の・・・お姉さまの願いなら努力する。」

祐巳「ありがとう乃梨子、もう遅いし寝よ。
   明日は一緒に仏像めぐりするんでしょ?」

乃梨子「そうだった、じゃあ早く寝よう。」


【No:2612】へ続く


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