【2631】 掛け違えられたボタン  (気まぐれ浪人 2008-05-30 21:12:49)


オリキャラ&無理設定・・・

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「矢代!どういうことか説明してもらうわよ!」

「一体何のことかしら?いきなり怒鳴るなんて変な祐巳ね」

学校から帰ると、祐巳は急いで矢代の家へと向かった。
どうしても聞きたいことがあったのだ。
気が焦っていたのか、矢代の部屋に入るなり祐巳は叫んでいた。

「とぼけても無駄よ!リリアンに編入してくるなんて・・・一体どういうこと?!」

「どういうことって・・・その言葉はそっくりそのまま祐巳に返すわ」

「どういう意味?」

「最近あなたちっとも顔見せないじゃない。体調が悪いとかあからさまな嘘までついちゃって・・・
私たちはずっと一緒にいるのよ?学校で何かあったことぐらいわかるわよ」

「そ、それは・・・」

「だからリリアンに入ったの。あなたの側にいることにした。だって心配なんだもの。
もちろん、私だけじゃないわよ。みんなだって心配しているわ。祐巳にもわかるでしょう?」

「・・・・・・」

「まあ、今日一日で大体のことはわかったわ。
お節介な人ってどこにでもいるのね。聞いてもいないのに教えてくれたわ。
山百合会とかいう変な集まりに関係あるみたいね。
ねえ、祐巳。どうしてそんなところに所属しているの?
私たちは何かに縛られてはいけないの、祐巳もよくわかっているはずよ?!」



矢代が怒るのも無理はなかった。
祐巳には知られてはいけない裏の顔がある。それは山百合会のメンバーも例外ではない。

祐巳の一族は、代々魔法が使えた。
その力で国を影から支えているのだ。ただし、このことはトップクラスの権力者にしか知られていない。
その権力者でさえ、どういう人物が行っているのかは知らなかった。それほどまでに極秘事項なのだ。

矢代もまた、魔法が使えた。祐巳と矢代は同じ一族なのだ。
二人は生まれた時からずっと一緒にいた。必然的に仕事も一緒に行うようになっていた。

一族の掟で、魔法を一人で使うことは禁じられている。
だから、パートナーがいなければ魔法は使ってはいけない。
にもかかわらず祐巳は山百合会を優先していた。
そのせいで祐巳たちはここ最近、仕事をしていなかった。

そのことが問題となってた。
そもそも学校など行かなくても良しとされている一族だ。
最も、教養がなくては出来ない仕事だ。だからこそ、学校などにはいかなくてよかった。
遅々としか進まない学校では追いつかないのだ。
其れゆえに、一族にはしっかりとした教育プログラムがある。
それには一般的な勉強然り、学校では知りえないことも含まれている。
そもそものレベルが違うのだ。

当然祐巳も教育プログラムを受けている。
それも、誰よりも良い成績を残していた。
なのに何故、祐巳はリリアンに通っているのか。
それは福沢家の教育、いや、両親の願い、思いであった。
特殊な環境にいる子供たちに、せめて学生の間だけでも同年代の子たちと普通の生活を遅らせてやりたい。そんな親心だった。
そんな両親の思いを受け取って、祐巳はリリアンに通っていた。
普通の生活を送るべく、平均的な生徒を演じてまで。

学校に通うには、多くの規制があった。
それは“特定の人物と深く関係してはいけない”等、人間関係での決まりごとだった。
とりたて祐巳は気にしていなかった。気になる人物などいなかったからだ。
―――山百合会メンバーに、祥子に、出会うまでは。



「祐巳、わかってるよね?山百合会とか言うところはやめなさい」

「・・・・・・」

「祐巳!」

「・・・・・・わかってるよ。でも、急には無理だよ」

「どうして?」

「怪しまれてしまうじゃない」

「忘却術をかければいいじゃない」

「いやよ!あの人たちに魔法は使わない」

「祐巳・・・」

「・・・・・・今日はもう帰る」

おぼつかない足取りで、祐巳は矢代の部屋を後にした。


一人部屋に残った矢代は、不敵な笑みを浮かべていた。
もし今の矢代を見た人がいたなら、確実に背筋を凍らせていたであろう。
その表情は魔女そのものだった。いや、悪魔と言っても過言ではない。



「祐巳の隣にいるのはこの私。他の誰でもない。
山百合会・・・小笠原祥子。佐藤聖。島津由乃。藤堂志摩子。水野蓉子。支倉令。鳥居江利子。
ふふっ。許さないから・・・」






続けるか否か悩み中・・・・・・


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