ストパニとのクロス
【No:2620】の続き。。
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「ごきげんよう。リリアン女学園3年の水野蓉子です。別名、紅薔薇さまとも呼ばれているわ」
「ごきげんよう。3年、黄薔薇さまの鳥居江利子よ」
「同じく3年、白薔薇さまこと佐藤聖です。よろしくね」
「ごきげんよう。2年、紅薔薇の蕾の小笠原祥子です」
祥子が挨拶をすると、静馬が「お久しぶりね」と声をかけた。
「祥子、知り合いなの?」
「えぇ。お爺さま同士が知り合いでして・・・」
(なっ!何ですって?!聞いてない!聞いてないわよ!
私が祥子さまの妹になったことは知ってるはずなのに、何で言わないのよ!)
祥子との関係を隠していた静馬に、祐巳がはらわたを煮え繰り返しているうちに令、志摩子、由乃も自己紹介を終えていた。
気付けば残るは祐巳だけとなっていた。
祐巳は慌てて挨拶をしようとするが、静馬の声に遮られてしまう。
「ふ、福ざ「祐巳、会いたかったわ。昨日はどうして帰ってしまったの?」」
そして徐に祐巳の側まで行き、ぎゅっと抱きしめた。
(なっ!)
祐巳は固まった。
「えっと・・・祐巳ちゃん?祐巳ちゃんもお知り合いなの?」
蓉子が戸惑いながら祐巳に尋ねた。
「・・・・・・・・・えぇ、まぁ。ちょっと・・・
それより、静馬・・・さま?放していただけませんか?」
「あら?他人行儀ね。いつものように呼んではくれないの?」
静馬の言葉に祐巳は絶句した。
そりゃそうだ。呼べるわけがない。
何せ、祐巳は静馬のことを「お姉さま」と呼んでいるのだから。
リリアンでのその呼び方は、深い意味を持つ。
もちろん静馬もそのことを知らないわけではないのだが・・・
「嫌です。ダメです。絶対ダメ!」
「あら、どうして?祐巳ちゃん」
「どうしてって、白薔薇さま・・・
えっーと、その・・・公私混同は良くないですし・・・」
「別にいいじゃない。呼び方くらい」
「ダ、ダメです!」
「祐巳ちゃん。どうしてそんなに嫌がるの?」
「べ、別に意味なんてないです!黄薔薇さま」
「だったら呼べばいいじゃない」
逃げられない―――祐巳は思った。
静馬、聖、江利子の三人に囲まれて逃げ切れるわけがない。
助けて。
そんな眼差しで他のメンバーを見るも、皆苦笑いを返すだけで助けてはくれそうになかった。
祐巳は観念した。
一度大きく深呼吸をすると、意を決して静馬を呼んだ。
「お、おねえさま・・・・・・静馬お姉さま!」
祐巳の声を聞いて、満足そうに微笑む静馬。驚く山百合会メンバー。
祐巳は恐る恐る祥子の顔を見た。
見えた顔はまるで般若のようで・・・恐ろしさのあまり思わず後ずさっていた。
祥子はゆっくりと祐巳に近づいた。
そして徐に、祐巳の肩を掴んだ。それはそれはがっしりと、驚くほどの力で。
「ねえ、祐巳。どういうことかしら?
あなたと花園さまの関係を詳しく教えなさい」
祥子の発した言葉は、祐巳が恐れていたものだった。
祐巳には皆に言っていない過去があった。
静馬はその過去に関係する人物だ。
だから絶対に言いたくなかった。
もちろん、時期がきたら言おうとは思っていた。
でも今はまだなのだ。祐巳の中で折り合いが、決心が、ついていなかった。
「お、お姉さまには関係ないことです」