【2695】 つい出てしまう口癖  (さおだけ 2008-07-06 16:44:15)


なんかどこかに悲惨な世界が出来上がってしまいましたね……。

祐巳の章  【No:2692】(再会編) 【No:2694】(過去編)
蓉子の章  【No:2687】(始り編) 
祥子の章  【No:2680】(再会編) 【No:2684】(過去編)
乃梨子の章 【No:2672】(始り編) 【】(現世編)
志摩子の章 【】(再会編)
由乃の章  【】(前世編)

本編 【No:2663】→【No:2664】→【No:2665】→【No:2666】→【No:2668】→【No:2669】→【No:2673】
    →【No:2674】→【No:2675】→(【No:2676】)→【No:2679】→【No:2682】→【No:2683】→
    【No:2686】→【ここ】





「ドリル……」

「違いますわっ!」



  ■■ SIDE ミカエル



この地上に来て、私は前世でお世話になった各地を回った。
妹は私の前世を興味津々とついて回った。
この子は、【暇だったから死んでみた】という恐ろしい経歴を持つ子だった。
でも理由がないからこそ、この子は自分の世界に帰ってきても何の憤慨も持たない。
それは楽でいいけれど、ちょっと寂しいなぁと思ったりする。

「お姉さま、そろそろリリアンってところです」

「そうね。懐かしいわ」

「お姉さまはリリアン育ちでしたっけ?」

「ええ、そうよ」

本当、懐かしいわ。
でもアウリエルの祐巳さまが自ら【ここ】を担当すると言った。
ならば私は【その他】を守ろうと、ちょっと不謹慎な言い方で守る事を決めた。
それが、あの人の強さだから。

「そういえばさっき悪魔が来てたって報告がありましたよ」

「悪魔?」

「はい。なんでもアウリエルの妹さまと話していたって」

「悪魔が……」

悪魔は天使よりも罪深い存在として、罪を強制的に滅ぼす使命をもつ。
あの空間とは違うところで輪廻のためにこき使われるのである。
悪魔といえど元は人間であり天使とも近いところにいる。
別に邪険するつもりはないが、いかんせん気に掛かる。

「乃梨子さんに悪魔……」

「ああ、お姉さまは妹さまと知り合いなんでしたっけ」

「前世ではね。相手は覚えてないけど」

「複雑ですねー……」

「まぁそうね」

私は妹(といっても上級天使)とリリアンへと向かった。
祐巳さまはいかがしている事だろう。

「お姉さまはアウリエルさまともお知り合いでしたっけ」



  ■■ SIDE 乃梨子



目の前にドリルがいる。
チョココロネとかフォローにもならない二つ名を持つドリルが、ここに。
しかもどうしてドリルは私という存在を知っているのだろう。
お前、人間じゃなかったのか。

「………いい加減失礼なモノローグを声に出すのやめていただけません?」

「え?声に出てた?」

「無自覚ですのね」

ドリル改め瞳子は盛大な溜息を吐く。
その仕草はまるで祐巳お姉さまの分身であるタヌキを連想させた。
しかしあのゴロンタの存在は確認できない。どっかで融合してるんじゃないかと思う。
そういえば融合できなくて分離しなのにまた融合するってどうだろう?
きっとお姉さまも融合しなくちゃいけないとか思ってるんだろうな。

「で、乃梨子さんは瞳子の存在を忘れてしまったんですのね」

「………あ、ごめん。ちょっと立て込んでて」

「知りませんわ。乃梨子さん、祐巳お姉さまの妹になってから緩くなりましたわよね」

「そんな事……って、祐巳【お姉さま】?」

「貴女のお姉さまだからそう呼んだだけです」

「そう?」

瞳子がさっき「やべぇつい言っちまったぜ」みたいな顔をしたけど、気のせいだよね。
確かに祐巳さまは私の前の世界で生まれたらしいけど……瞳子は知らないはずだし。
私はとりあえず記憶の有無について聞く。

「で、瞳子は【私】を憶えてるんだよね?」

「当然でしょう?貴女のせいで悪魔落ちしたんですもの」

「え……」

悪魔、落ち?
しかも【私のせいで悪魔落ちした】……?
 カチリ

「見殺しって言うもの罪なのですわ。それより、祐巳さまに会いたいのですけど?」

「ちょっと待ってよ!今はそっちを詳しく……」

「今は祐巳さまが専決でしょう?消えちゃいますわよ?」

「………っ」

く……やっぱり瞳子を丸め込むのは私のスキルでは無理か……!
でも祐巳お姉さまの事は祥子に頼んであるし、大丈夫だと思うのだけど…。
私が1人で葛藤していると、上空からフワリと何かが降りてきた。
夢魔!?
私が戦闘態勢にはいるが、瞳子はすまし顔で見ている。
不思議に思いようやく相手を見やると、降って来たのは天使だった。

「まぁ……ミカエルに就任したというのは本当だったのね」

「あら、乃梨子さんとバッティングしたのが瞳子さんだったなんて奇遇ね」

「は?瞳子がミカエル17代目と知り合い……?」

上級天使の妹を従えたミカエル17代目は相変わらずの無愛想で瞳子と話す。
ミカエル17代目はまじまじと瞳子を見て笑う。

「わざわざ愛しの祐巳さまの記憶を思い出すために【落ちた】の?」

「………五月蝿いわね。放っておいてくださいまし」

「相変わらず素直じゃないんだから」

【祐巳さまの記憶】を【思い出す】だめに【悪魔落ち】した?
…………訳が分からない。誰か解説してよ。
私が瞳子に事情というものを尋ねようとして、また上空から降って来る陰が。
それは小さくて……というかゴロリンだった。

「ちょっと、何祐巳なしで同窓会なんて開いてるのよ」

「ゴロリン!」

「………乃梨子、ちょっと黙りなさい」

「もしかして祐巳お姉さまの分身ですの?」

「そうよ。生憎祐巳とは思考が違うけど、元は同じものよ」

「……祐巳お姉さまが限界だったって事ですのね」

「話しが早くて助かるわ」

早すぎる。せめて私にも教えて欲しいのに。
とにかく黙ってみているが、ミカエル17代目が眉を顰めている。
何故だか分からないけれど、ミカエル17代目は祐巳お姉さまを慕っているからだろう。

「ゴロリンだっっけ?祐巳さまはどうなってるの」

「それタヌー以外で呼んで。祐巳は本体と戦ってるわよ。ちょっと今危ないけど」

「祐巳お姉さまに何があったんですか!?」

「ちょっと夢魔に触れちゃったのよね、ついさっき」

「「お姉さまっ!!」」

瞳子と2人で駆け出した。
宙を駆けていく私達の後ろではミカエル17代目とゴロリンが話している。
話しは聞こえないけれど、真剣な目をしている事は分かった。
でも今はとにかく、私達は祐巳お姉さまのところに向かわなければならなかった。

 カチリ



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