【2832】 女難の相が出ています  (パレスチナ自治区 2009-02-08 00:12:55)


すみません。【No:2831】の続きみたいなものです。「少女少年」を書いていて思いつきました。前回の要素に加え、「ストロベリー・パニック」と一部クロスオーバーしています。嫌いな方、苦手な方はスルーしてください。


この間の事件は、新聞部の瓦版にしっかりと書かれていた。
おかげでクラスメイトにはやたらと気を遣われたり、山百合会のファン(主に白薔薇様ファン)には般若のような顔で睨まれたり大変だった。
特に大変だったのは新聞部部長の小佐井真理子様。瓦版であんな記事を書いたくせにまだ足りないらしい(小佐井真理子様は、かの黄薔薇革命などの事件で大活躍した築山三奈子様の暴走っぷりに輪をかけたような人)。
毎日逃げるのが大変だ。あの悲劇以来、俺の人生は間違った方向に向かっているらしい。

今日もへろへろになりながら家に帰る。もはや自宅の自分の部屋以外安息の地は無いように思われる。
ガチャッ
部屋に入るとまず目につくのは大きなクマやらクジラやらのヌイグルミたち。
断じて俺の趣味ではない。俺が女の子になった後お母さんが嬉々として揃えた物だ。
おかげで今この部屋はカーテンも机も絨毯ベッド全ての物が女の子仕様になっている。
最初の頃は本気で泣きたかったが、今は此処だけが俺の安息の地。もう慣れてしまった。
「ただいま、クマさん、クジラさん」
そろそろ彼らの名前、考えてあげようかな。なぜなら彼らの穏やかな表情は俺にとって最高の癒しだから。

夕食とお風呂を済ませ、部屋に戻る。最近お母さんは一緒にお風呂に入ろうとする。
そろそろトラウマになりそうだ。
「今日は第3巻だね」そう呟いてDVDプレイヤーの代わりにしているテレビゲームの機械にアニメDVDをセットする。最近寝る前にアニメを観るのが習慣になっている。
ここ数日は「ストロ○リー・○ニック」だ。第3巻は、主人公の女の子とル・○ム変身部の子たちが初めて会う回から始まる。
クジラさんを抱きしめながらアニメを堪能する。うん、ル・○ムの子たちは元気でいい。楽しかった。これで何とか明日も頑張れそうだ。
今日はいい夢が見れそうだ。

此処は何処なんだろう。俺は不思議な雰囲気の場所を歩いていた。
しばらくすると開けた場所に出た。可愛らしい女の子たちが嬉しそうに駆け回っている。なんだか見覚えのある子たちだった。そのうちの一人が俺のことに気付いた。
「あーっ、出雲お姉さまだー。私たちと一緒に遊びましょ!」
?!なぜか彼女たちは俺の事を知っているらしい。
「あら出雲ちゃん、やっと来たのねw」突然背後から話しかけられる。
「うわあっ、誰ですか?」振り向くとそこにはあの人が…。
「もう出雲ちゃんたら、私の事忘れちゃったの?ひどいんだから!」
「えーと、ほんとに存じないのですが」
「まあ、出雲ちゃん。この私を怒らせたわね。いいわ。どうなるか思い知らせてあげるから」
「え!なにする気ですか?!」
すると目の前のあの人は手をワキワキさせながら近づいてくる。
「うふふw出雲ちゃんは可愛いから何着せても似合いそうよねw」
この人眼がヤバイ。怖すぎる。逃げなきゃ!
「出雲ちゃん、逃げようとしても無駄よ!」
心の中が読まれてる!
「さあ変身部のみんな!活動開始よ!出雲ちゃんを捕まえて服をひん剥いて!」
「「「は〜い!」」」
うそ?!俺剥かれるの?!何としても逃げなきゃ!ダッシュだ!
「逃げた!!!待てー!!」
ツインテールの子とお団子メガネ、テディベアを抱いた子が追いかけてくる!
早く逃げなきゃ!でもなぜか足が思うように動かない。
「はあはあ…どうして足が動かないの?このままじゃむkあああ!」
「やったー!捕まえた!よーし、出雲お姉さま服脱ぎ脱ぎしましょうね〜」

「い〜〜〜や〜〜〜誰か〜〜〜〜」
「「「「うふふふふww」」」」

がばっ!
ああ、夢だったのか…。怖かった。夢の中でも追いかけられるなんて最悪だ…。
びっしょりと嫌な汗を掻いていた。掛け布団の上を見るとクマさんとクジラさんが俺を捕まえるようにのっていた。いつもは大好きな彼らの穏やかな顔が今は激しく憎たらしかった。
「疲れた…」
俺はそう呟いてシャワーを浴びに行った。

「出雲さん、お顔が優れませんね」
隣の席の子が心配して声をかけてくれた。
「ご心配おかけしてすみません。昨日少し寝付きが悪かったものですから」
「まあ、無理なさらないでくださいね。困ったことがあったら遠慮せずお声をかけてください」
「ありがとうございます」
昨夜のこともあり彼女の穏やかな微笑みはすごく心に沁みた。

「待って出雲さん、話を聞かせてよ〜!」
「話すことは何もないです、許してください!」
今日も今日とて放課後に真理子様に追いかけられている。
俺ははっきりいって体育は苦手だ。当然持久走は大嫌いなわけで。
でも捕まるわけにはいかない。彼女のせいで毎日激しく疲れているのだから、意地でも情報は提供したくない。
でもそろそろ限界だ。腹をくくるしかないのか、そう思った時、
「こっちよ!」
天の助けだと思った。

今は演劇部の部室にかくまってもらっている(演劇部の部長は宮本美華柚様)。
「本当にありがとうございました」
「いいのよ、困った時はお互い様だから。それに真理子さんはしつこいし強引だから」
そう言いながら微笑む彼女はまさに天使だった。
「本当になんてお礼を言ってよいのか」
「ふふ、大げさね」
「大げさじゃないですよ〜」
「ふふ、あなたってかわいいわね。じゃあ私のお願いひとつきいてくれる?」
「はい、なんでしょう?」
「このロザリオを受け取ってもらえないかしら?」
「美華柚様どうして私を妹に?」
「もう出雲ちゃん、お姉さまでしょ」
「ですから」
「妹にしたい理由?それはね、瓦版で貴女の写真を見て一目惚れ。
 それで妹にしてあんな服やこんな服着せて遊びたいな〜なんて」
「………」
あ、美華柚様の口から涎が出てる。さっきまで優しかった美しい瞳が、夢に出てきたあの人にそっくりだ…どうしてこの人まで(泣)
「じゃあロザリオを首に「お断りします!!!」
ダッシュだ!
「こら逃げるな!!」
「勘弁してください!!!!」

俺の災難は永遠に終わらないかもしれない……



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