【2831】 少女少年  (パレスチナ自治区 2009-02-07 08:19:15)


はじめまして。このSSには、「性転換」の要素が出てきます。
時代も、次世代より未来ですので、オリキャラがメインです。
この手のネタが嫌いな方、苦手な方は見なかったことにしてください。

「今日は皆さんに転入生を紹介します。さあ、自己紹介をなさって」
担任の先生に促され俺はみんなと向き合う。
当然の事ながら此処には女の子しかいない。
人が苦手な俺はかなり緊張していた。
彼女たちの視線は確実に俺に向けられている。突き刺さるように感じた。
あと3分もしたら膝が笑い始めるはずだ。正直言って吐きそうだった。
もしかしたらすぐにみんなに俺が元男だってばれてしまうかもしれない。
そうなったら怖くて仕方がなかった。みんなにどういう反応されるのか。
いやな考えばかりが脳裏をよぎるが、何とか自分を奮い立たせる。
「はじめまして、この度皆様と一緒に勉強をさせていただくことになりました
四季潟出雲と申します。よろしくお願いいたします」
よし、噛まずに言えた。何とかこのプレッシャーから逃れられる。
ほっと溜息を吐くと先生は優しく俺に微笑んでくれた。
「皆さん、よくしてあげてくださいね。では出雲さん、空いている席に座ってください」
俺は何とかクラスメイトとのファーストコンタクトを終え、席に着いた。


俺は、男の子だったころから体が小さく顔も女顔で、あまり男扱いされてなかった。
お母さんからは「女の子で生まれてくればよかったのに」とよく言われていたし、
クラスメイトの女の子から散々可愛がられ、男の子からは数十回も告白された。
小学校の高学年の頃はそれらのせいで何度か死にたくなったりもした。
中学に上がっても一向に男らしくならなかった。

そんな矢先のことだった、あの悲劇が起きたのは…                 

ある朝目覚めてトイレに行った。その時だ、悲劇に気付いたのは。
まあ、本来あるべきものがそこに無かったのだ。
俺はお母さんに泣きついたがその時また死にたくなった。
「あら出雲ちゃん、それは良かったわ。これであなたをリリアンに入れることが出来るわ」
凄く嬉しそうに言われた。それもそもはず、リリアン出身のお母さんは子供をリリアンに通わせたかったのだ。俺は一人っ子だからお母さんは本当に嬉しかったのだ。
そしてお母さんの指導の下、リリアンに入るための地獄の日々が始まり、そしてそれに耐え今に至る。

お嬢様学校とはよく言ったもので、みんな凄く優しくしてくれた。
トイレに行く時も、移動教室の時も必ずだれか付いてきてくれた。
なんだか恐縮しっぱなしだった。その代わり休み時間にはクラスメイトの質問攻撃が凄かった。四方八方から話しかけられる。俺は聖徳太子じゃないのに。なんだか疲れてしまった。

授業のほうは割と平気だった。お母さんとの地獄の日々の賜物だと思う。だが、体育だけは困った。更衣室に入るまで扉の前で悶々と5分くらい費やした。意を決して入ってみたものの目のやり場に困ってしまった。恥ずかしくて泣きそうになった。

そんな一日が終わり、帰宅の途につく。マリア像の前には人だかりができていた。
「なんだろう」とつぶやいたら
「白薔薇様がいらっしゃるのですよ」と近くにいた子が教えてくれた。

「おお…」さすがは白薔薇様。同性の子たちにキャーキャー言われるだけのことはある。超絶美少女だ。そんな彼女に見とれながら歩き始めたのがいけなかった。

ボスン…

俺は白薔薇様にぶつかってしまった。
「きゃっ、あらごめんなさい。あなた怪我はない?」
「あ、すみません。私の方こそボーっとしてまして」
「いいのよ怪我がないのなら」そう言って白薔薇様はなぜか俺を抱きしめた。
「!!」信じられない感触が俺を襲った。
柔らかい!!そしてその瞬間更衣室の光景がフラッシュバックした。
目の前が真っ白になって俺の鼻から紅い何かが噴き出す。
「キャー!!」周りがパニックになっている。
「ちょっとあなた、大丈夫?しっかりして!」白薔薇様が心配そうに俺の顔を覗き込む。ああ、白薔薇様ホントに綺麗だな…うん眼福…なんてことを考えてる俺は、
いくら人が苦手で臆病で女の子になってしまってもやっぱり心は男の子のままなんだ。
薄れゆく意識の中そんなことを思った。

俺が倒れたのはおりしも、かつての紅薔薇様がそのお姉さまと出会い、姉妹の契りを交わした場所だった。
さらに後日、白薔薇様を紅薔薇に塗り替えてしまった俺は、面白いもの好きの黄薔薇様に興味を持たれ薔薇の館に呼び出されたのは言うまでもない。

さあ、地獄の日々の始まりだ。



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