【291】 第二山百合会黒い三連星  (まつのめ 2005-08-02 11:44:54)


「黒くないっ!」
 リリアンかわら版を机に叩きつけたのは薄い色の髪を後ろで纏めた『短いポニテ』の少女だった。
 ここは放課後の3年生の某教室。三人の生徒が残ってなにやら話し合いをしている様子。
「いいんじゃないの? 非公認なんだから。インパクト的に黒いくらいじゃないと」
 そう言いつつ、薄型のノートPCの画面から目をそらさないのは『黒髪ストレート』。
 こちらは声を荒げる『短いポニテ』と対照的に淡々としている。
「そもそも第二山百合会ってなんなのよ? 私らは各部部長連名の嘆願書を薔薇の館に持っていっただけなのに」
「……まあ、祭り上げられちゃったってことかな?」
「あのね、中心人物がそんな他人事みたいに」
「えー、中心人物って私?」
 中心人物と呼ばれたのは、ちょっとクセのある肩までかかる髪の少女。
「そうじゃない、運動部の連中の要望まとめたのあんたでしょう?」
「文科部のほうが署名多いじゃない。あなた部長5つ掛け持ちだし」
なんか睨み合ってる『くせっ毛』と『短いポニテ』。

「争ってる場合じゃ無いんだけど。山百合会の返答が遅いってもう気の早い人たちから意見があがってきてるんだから」
「それよ! 私が気に入らないこと」
 ビシッと『黒髪ストレート』のPCに人差し指を向ける『短いポニテ』。
「これ? これはおじいちゃんが私の進学祝いに買ってくれたモバイルノートPC。ちゃんと部活で使う為って携帯許可もらってるけど? ちなみに妹も同じのを持ってるわ」
「違うわよ、そうやっていつのまにか今回の件の意見のまとめ役に収まってるってことよ!」
「べつにいいと思うけど、だってまとめ役が居ないからってお願いされただけじゃない」
 『くせっ毛』は楽観的にそう言うが。
「『並薔薇三連星』とか『色づき始めた新三薔薇』とかまるで私たちが山百合会にたてついてるみたいに噂されてるのはどうなの?」
「噂でしょ? 真実はただのまとめ役なんだからさ」
「それで収まるんならいいけどね」
「みんな話題に飢えてるから。でも所詮は噂よ。どうにもならないって」

 しかし、どうにもなってしまって、臨時生徒総会を開くほどの大事に発展してしまうなどとはこの時誰が想像しえただろうか。


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