パラレル西遊記シリーズ
【No:2860】発端編
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【No:2864】三蔵パシリ編
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【No:2878】金角銀角編
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【No:2894】聖の嫁変化編
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【No:2910】志摩子と父編
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【No:2915】火焔山編
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【No:2926】大掃除編
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【No:2931】ウサギガンティア編
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【No:2940】カメラ編
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【No:2945】二条一族編
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【これ】
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【No:2952】最終回
私、二条乃梨子は、孫悟空の聖さま、猪八戒の蓉子さま、沙悟浄の江利子さまと一緒に天竺目指して旅をしていたのだが、ゴール直前になって江利子さまとはぐれてしまった。
「とにかく救いなのは、江利子が全力でゴールの雷音寺を目指しているという事よ。雷音寺で待っていたら合流出来るはず」
蓉子さまの言葉に聖さまが疑問をぶつける。
「先に着いた江利子が待っていてくれると思う?」
今の江利子さまは私達を見捨ててでも帰ることしか考えてないからなあ。
「……難しいわね」
蓉子さまの答えに聖さまもうなずく。
「とにかく雷音寺に向かいましょう。急げば私達の方が先に着くかもしれません」
私達は雷音寺に向かった。
親切にもあちこちに「雷音寺はあちら」の看板がある。
雷音寺が近付くにつれ、何故か黄色い服を着ている人が増える。
「雷音寺入口」の看板が見えた。黄色い服を着た人たちがいっぱいいる。
雷音寺は8角形をしており、屋根の天辺に大きな擬宝珠(ぎぼし)、つまり金ぴかに光る玉ねぎのような形の物が鎮座している、平たく言ってしまえば日○武道館みたいな形の寺だった。
「ようこそ。雷音寺へ」
そこに現れたのは田沼ちさとさまそっくりの人物だった。
「あの、こちらにカッパは来ていませんか? こんな感じの?」
そう言いながら聖さまがオデコを全開にする。
「いえ、まだ来ていませんが」
「じゃあ、ここで待ちましょう」
ほっとしたように蓉子さまが言う。
「あの、三蔵法師御一行ですよね? 何故中に入らないんですか?」
ちさとさまが戸惑っている。
「連れのカッパとはぐれてしまいまして、ここで待っているんです」
聖さまが答える。
「そういう場合は中でお待ちになってください。さあ、どうぞ」
ちさとさまが強引に私の背中を押して雷音寺の中に入れた。
「ようこそ、三蔵法師御一行様。私との勝負に勝てば先に通してあげるわ。おっと、勝負の内容は力技の戦いじゃないから」
迎えてくれたのは偽由乃さまだった。
「私の出す問題に答えられたらあなた達の勝ち。答えられなかったら負け」
由乃さまは私達を指さして言う。
「負けたらどうなるの?」
蓉子さまが聞く。
「私は試練を与える妖怪で、お役得として私の問題に答えられないような愚か者は食べてもいい事になっているの。だから、あなた達を美味しくいただく事になるでしょうね」
偽由乃さまはそう言ってニヤリと笑った。
「待ってください。私達は4人でここまで来たんですが、1人はぐれてしまったのです。彼女が来るまで待ってもらえませんか?」
江利子さまという貴重な戦力を欠いた状態で戦いたくないので食い下がる。
「時間稼ぎなんかしても無駄よ。問題は1人に1問出されて、全員が正解しないとクリアできないんだから」
つまり、誰か1人でも間違うと食べられるって事のようだ。
「……私は賢くないから帰らせてもらうわ」
聖さまはそう言って寺を出ようとしたが、扉はぴくりとも動かなかった。
「答えられないような愚か者は食べるって言ってるでしょう?」
私達は問題に正解する以外道がないようだ。
「では、最初の人」
「はい」
蓉子さまが手を挙げた。
「あなたにはこの問題に挑戦してもらいます。今から私の言う色の名前と同じ単語を言ってください」
「あなたの言う色の名前を繰り返せばいいのね」
蓉子さまが確認する。
「ええ。ただし、『きいろ』と言ってはいけません。『きいろ』と言ったらあなたの負けです。『きいろ』と言われたら黙ってください」
「わかったわ」
蓉子さまの戦いが始まった。
「では、開始。『桃色』」
「桃色」
「菊色」「菊色」
「藤色」「藤色」
「黄色」「……」
蓉子さまは黙った。
「OKよ。では、続けましょう。『薔薇色』」
「薔薇色」
「松色」「松色」
「桜色」「桜色」
「椿色」「つば……」
蓉子さまはそこから先を言わなかった。
「おめでとう! あなたの勝ちよ!」
つば「きいろ」とうっかり言ったら負けである。こんな小学生レベルの問題が来るのか?
言葉とは裏腹に偽由乃さまは悔しそうな顔をしていた。
蓉子さま、勝利。
「では、次はどっち?」
「私が」
聖さまが手を挙げた。
「あなたにはこの問題に挑戦してもらいます。今から簡単な問題を出しますからそれに答えてください。ただし、『きいろ』と言ったらあなたの負けです。もし、問題の答えが『きいろ』なら黙ってください」
「了解」
聖さまの戦いが始まった。
「日本の郵便ポストは普通何色?」「赤」
「信号で進めの色は?」「青」
「青の絵の具を赤の絵の具を混ぜると何色になる?」「パープル」
むらさ「きいろ」はアウト。
「OKよ。では、続けましょう。食べごろのブロッコリーの色は?」「緑」
「綺麗な雪の色は?」「白」
「オセロで白の裏は普通何色?」「黒」
「はい。黒って言った〜」「え? 何?」
「おめでとう! あなたの勝ちよ!」
ここで「え? ダメなのは『きいろ』でしょう」なんて反論したら「きいろ」と言ったので負けになる。という事らしい。
聖さま、勝利。
「では、次はあなたね」
由乃さまは苛立った表情で私の顔を見る。うわあ。
「これからある簡単な問題に答えてもらいます。ただし、その前に私の指定する言葉を10回言ってもらいます」
10回クイズか。今までと傾向が違うなあ。
「いいでしょう」
二条乃梨子の戦いが始まった。
「では、『黄色い卵』と10回言ってください」
今までの流れを利用して逆に黄色と言わないとアウトなんでしょう。
「黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵、黄色い卵」
「では、ウサギの卵は?」
「ウサギは卵をうみません」
私は即答した。
「おめでとう! あなたの勝ちよ!」
「それだけかいっ!」
私はツッコんだ。
ちなみに今の問題は白い卵という誤答を誘っているらしいが、こんなもの引っ掛かりませんて。
二条乃梨子、勝利。
「で、もう一人はいつくるのかしら?」
その時、雷音寺の外から歌声が聞こえてきた。
それは真夏の24時間流しっぱなしで地球を救おう的TVのテーマだった。
「今、到着しました! まもなく、ゴールです」
それは、アフガ○スタンからここまでマラソンを続けた江利子さまだっだ。
それで黄色の服を着た人が多かったのか。……って何で雷音寺の人があのTVの事やら江利子さまがマラソンしてることやらを知ってるんだろう。
「江利子! 江利子!」
聖さまと蓉子さまが涙目で江利子さまを迎える。感動のゴールシーン……って、曲に飲まれてる。飲まれてる。
「今、感動のゴールです!」
ちさとさまがウミガメの産卵のように号泣する。あなた、関係ないじゃないですか。
どこからともなく飛ぶ紙吹雪。
手渡されるタオルとスポーツドリンク(?)
「ゴールの感動冷めやらぬ中、問題よ!」
由乃さまが叫んだ。江利子さまは状況がよくわかってないのか目を丸くしている。当たり前だが。
「ピザって10回言ってみて!」
おい! 今さらそんなベタなやつかいっ!
「は? 何故私がそんな事を?」
ほら、真顔で聞き返された。
「江利子! 言う通りにしないと帰れないのよ」
蓉子さまが促す。
「それは言わなくてはならないわね。ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ」
「ここは?」
「雷音寺」
江利子さま、超即答。
「おめでとう! あなたの勝ち──」
「ちょっと待ったーっ!」
何者かの声がする。
何者かが走ってくる。
何者かが由乃さまにとび蹴りを食らわせた。
「ぐふあっ!」
「そんな質の悪い問題でクリアだなんて、それは認められなくってよ!」
それは偽江利子さまだった。
「九霊元聖さま、ここは私に任せてくださったじゃありませんか」
偽由乃さまが唇を尖らせる。
「不甲斐ない孫が何を言っているのよ。いいから、ここは下がりなさい」
食ってかかろうとする偽由乃さまはちさとさまに羽交い締めにされてしまった。
「では、改めて私と勝負よ。あなた達は負けたら私達に食べられる。勝ったら通っていい」
「オール・オア・ナッシングってとこかしら? いいわ」
かくして、ダブル江利子の危険な勝負が始まる。
「勝負の方法は『マリア様が吹いたら負けゲーム』。カブらないように互いにお題に沿ったものを言っていき、答えられないか、笑ったら負け。相手に笑わされても、自分で笑ってしまっても負けよ。ただし、笑いに走り過ぎてお題に合わないものを言ったらその時点で負け」
偽江利子さまが言う。
「そのお題は私が出させてもらうわ。『ありえないもの』でどうかしら?」
沙悟浄江利子さまが言う。
「よくってよ。ならば、あなたが確実に笑うようにこちらのものをあなたの世界のものに変換させてもらうわ」
意味あり気に笑う偽江利子さま。
「あら、自信がないのね」
挑発する沙悟浄江利子さま。
「もちろん、こちらも、まあ、あなたじゃ笑わせられないでしょうけど、万が一にも笑えるように変換させてもらうわ」
「よくってよ」
偽江利子さまが口火を切った。
「台風が来て田んぼの心配をして見に行って流される鳥居江利子」
……は? なんて微妙なネタから入るんだ。
「清く正しく静かな日々を過ごしたいと修道院に入る築山三奈子」
新手の拷問か? 潜入取材か?
「大喜利形式で進行される山百合会総会」
「乃梨子ちゃん、1枚とって!」って、普通に座布団運びな自分を想像してしまった。
「『気にするな、俺たちが勝手にお前に賭けたんだ』と言ってアリスをリリアンに送り出す日光月光」
何をどう賭けたのやら。
「『お前はもう、載っている』とリリアン瓦版を差し出す山口真美に『てめえの薔薇の色は何色だーっ!?』と聞く島津由乃」
世紀末救世主伝説!?
「『みんなが来てくれる新生薔薇の館の設計図書いてきた』と満面の笑みで落合記念館の見取り図を見せる福沢祐巳」
設計福沢祐一郎施工小笠原建設で?
「毎回、藤堂志摩子の『よくぞ生き残った我が精鋭達よ』から始まる環境整備委員会」
どこの環境を整備してるわけ?
「ドリルを毎晩ヤ○ルトの空容器で巻いて形成する松平瞳子」
いや、もっと凄い機械とか使ってそうだが。
「ジ○ギの仮面を被って『私の苗字を言ってみなさい?』と言って迫る桂さん」
いや、それは勘弁してください。マジで。答えようがないし。
「『これからのマリみての入浴シーンとキスシーンは私が一手に引き受けます』と言う支倉令」
本編唯一の入浴シーンの絵なのに美少年にしか見えない罠。
「カラオケでは必ず『金太の大冒険』を熱唱する蟹名静」
アリスとデュエット!?
「マリみてBL本の表紙を飾る支倉父と島津父」
BLネタ、禁止!
「撮影は全てスタンド『ハーミットパープル』で行う武嶋蔦子」
じゃあ、日出実さんは『ハイエロファントグリーン』!?
「柏木優の車に乗り込む福沢祐巳を見て『あの赤い車を追って』と島津由乃の自転車の後ろにまたがって千円札を差し出す細川可南子」
パラソルをさす裏にそんな話が……
「破局の原因は『2人で一緒にプリ○ュアになろう』という失言だった佐藤聖」
夢見すぎ! プリ○ュアは中学生まででしょう?
「『薔薇の館に人を呼ぶには旭山動物園方式が一番よ』と妹たちに語る水野蓉子」
その発想はなかったわと蓉子さまが呟く。
「エロ詩吟に夢中になる小笠原祥子」
「あると思います」
ええっ! 確かにそれはそういうネタだけど……
「……私の、負けよ」
ええっ! 素直に偽江利子さまが負けを認めた!
あり得ない。今日、一番あり得ない光景だ。
「危なかった。もう少しで負けるところだったわ」
こちらの江利子さまも憔悴した表情で呟く。どんな死闘だ。
衝撃の結末で我らが沙悟浄江利子さまが勝利を収めた。
さあ、後は帰るだけ。
私達は奥に続く扉を開いた。
続く【No:2952】