とある日の放課後、薔薇の館。
「祐〜巳ちゃ〜ん☆」
「ぎゃう」
今日も今日とて祐巳に抱きつくのは、言わずとしれた地球内セクハラ聖命体、佐藤聖である。
「ちょ、ちょっと聖さま!何でここにいるんですか!」
「いゃぁ〜最近、祐巳分が不足しててさー」
「祐巳分って何ですか!大学生が高校校舎に無断で入ってきていいんですか!」
「大丈夫だよ〜ん、私、元白薔薇さまだから。」
「そんな理由が通ると思ってるんですか!」
もっともである。
そんな中、現白薔薇姉妹はいつもの事だ、という様子で黙々と仕事をこなしている。
だが、今日は違った。
「せ〜い☆」
「うわっ!?」
「ぎゃう!?」
祐巳に抱きついている聖の上に、更に何者かが抱きついてきたのだ。
「いきなりだ……って、お、お姉さま!?」
「えっ?お姉さまって、聖さまの?」
「正〜解。ごきげんよう、皆さん」
そう、聖のお姉さま、先々代の白薔薇さまである。
「あら、貴方が孫の志摩子ちゃんね。はじめまして。」
「あ、はじめまして。」
先々代の白薔薇さまは聖に抱きついたまま和やかに挨拶をしている。
「あの〜、それでお姉さまは何でこちらに?」
そこに聖がおずおずと尋ねる。
「聖、貴方今暇よね?」
「え、ええ。暇ですが…」
「じゃあ、私に付き合ってくれないかしら?」
「いいですけれど、その格好でどこに行く気ですか?」
そう言って、聖は先々代白薔薇様の着ている白衣を指差す。
「ちょっと私の大学の実験室よ。」
そう言って、聖の腕を組み、逃げないように手首をきめる。
「ええー!?ちょ、そこで何を――」
「…人って、どれくらいで自我が崩壊するのかしら……」
背後には白いオーラ、顔には悪魔の様な笑みが浮かんでいる。
「いぃぃやぁぁぁぁーーー!!!たぁすけてーー!!祐巳ちゃ〜ん!!」
「嫌です。少しはセクハラ癖を直してきて下さい。」
「そんなあぁぁぁぁーーーー」
エコーを残して連れていかれる聖。
その時、現白薔薇姉妹と言えば
「いい、乃梨子?音源が移動している時の波長はね……」
物理(ドップラー効果)の説明をしていた。