【301】 白薔薇のつぼみスクランブル  (まつのめ 2005-08-04 13:15:54)


No.296の続き、じゃなくて平行。


 朝起きると目の前に私がいた。
「えーっと……」
 今日から山百合会のお仕事で学校いかなきゃいけないから。
 ベッドから降りて、さっさと着替えて……
「まてい」
 後ろから肩をつかまれた。
 ……気がするけど、気のせい気のせい。
「そうだ。今日から志摩子さんに会えるんだ。楽しみだなっと♪」
「現実逃避すなっ!」
「おふぅ!」
 頭に衝撃が走った。
「もーなんなのよ! 私は今日は学校行かなきゃならないんだから邪魔しないでっ!」
「まだいうかっ!」
「ひいっ、チョップはやめて、チョップはやめて…」
 思わず頭を庇った。

「……で、あんただれ?」
「それはこっちの台詞よ」
「私はここの部屋の持ち主、二条乃梨子よ」
「嘘だ。家主は菫子さんだもん」
「揚げ足取るなっ! ここは私の部屋って意味だ!」
「そんなのわかってるよ! でもここは私の部屋。私が二条乃梨子よ!」
「……」
「……」
 もちろんだ。うすうす感じていたのだ。
 この顔この表情。こんなの私以外にありえない。
「とりあえず確認しない?」
「そうね」

 パラレルワールド、二重身、クローン人間、分裂増殖、非常識な原因はいくらでも考えられるけど、多分考えるだけ無駄だ。

「生年月日、家族構成、実家の住所、出身校……」
「中三の時の友達の名前、リリアンに入った理由…」
「えー、それ書くの?」
「書く。いやだけど」
「お姉さまのこと。知ってる限り」
「あと気になる先輩のこと」
「げっ……それも?」
「志摩子さんには内緒だよ」
「うん、内緒、内緒」
 とりあえず、プライベートなことを互いに見ないで書き出して確認した。

「認めざるをえないか」
「認めざるをえないよね」
「「はぁ……」」
 同じ人間が二人なんて。なんか頭痛がしてきた。
 二条乃梨子は常識派なのだ。
「あのさあ、とりあえず学校いかない?」
「うん、いまそう思ってたところ」
 あ、でも、私が二人って事はどっちが志摩子さんに……。
 っと思ったらあっちも同じこと考えたみたい。
 折りしも二人の手が同じ制服にのびたところ。
「「さいしょはグー!」」
 こういうときはじゃんけんに限る。
 だが。
「……なんてパー出すのよ?」
「そっちこそ」
 ああ、多分これじゃ決着つかない。とりあえず制服は二着あるから譲れば済むんだけど。
「……アホらし」
「なんか疲れる」

 山百合会の仕事は忙しい。人手はあって困ることはないのだ。
 そして今、いままで山百合会でやってきた二条乃梨子という人手が2倍になったのだ。これを使わない手はない。
 そんなわけで、志摩子さんや他のみんなへの言い訳を考えながら二人で学校へ向かったのだ。


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