ごきげんよう。
内容はタイトル通りです。
最近変なのばっかです。
わたしは福沢祐巳。
リリアン女学園高等部、一年桃組35番。
容姿も普通、成績も普通、何もかも普通の女の子。
ただ一つだけ普通の女の子と違っていたのは…
お胸が大好きだということです。
記憶にはないが確かにお世話になっていた、母の温もり。
わたしはそれが大好きなのである。
どうしてなのかな…
教室で、更衣室で、街で…
いろんな人がいるけれどどの人のも凄く魅力的。
触りたくなってしまうのです。
自分の?いやいや…他人のだからいいのです。
この間、クラスで一番お胸の大きい良子さんのを躓いた拍子に触ってしまったのですが、柔らかくて最高でした…
しかも良子さんったら抱きついちゃったわたしをそのまま抱きしめてくれて…温かくて幸せでした。
でもやっぱりお母さんのが一番だなって思います。
毎日朝起きた後、帰宅後、寝る前にお母さんに抱きついてすりすりしちゃっています。
『困った祐巳ちゃんね…』なんて言ってるけど、お母さんだって嫌じゃない筈。
こっそり見上げてみると嬉しそうにわたしの事を抱きしめてくれているから…
わたしがそれをやっていると祐麒が呆れた顔をしてわたしの事を見ているけど、仕方ないでしょ!
お母さんが大好きなんだから!
…………
学園祭が近づいてきました。
そんなある月曜日の事でした。
「お待ちなさい」
銀杏並木の先にある二股の分かれ道、マリア様の前で急に呼び止められた。
本来なら優雅に美しく、振り向いて挨拶をしなければならなかったのですが…
「―!!」
わたしはそれが出来ませんでした。
『なんて魅力的なお胸の人なんだろう…』
制服越しでも、なおも存在を主張するそのお胸は、わたしを絶句させてしまいました。
そんな煩悩を振り払うまでにたっぷり10秒はかかりました。
何か言わなきゃ…
「あの………。わたしにご用でしょうか」
結局挨拶も忘れてこんなことしか言えませんでした。
「呼び止めたのは私で、その相手は貴女。間違いなくってよ」
声も魅力的だなぁ…
なんて素敵な人なんだろう…
それでもやっぱりわたしの目は豊かなお胸に行ってしまいます…
「待って」
彼女は持っていたカバンをわたしに手渡し、空になった両手で…
『何なに?!わたしのお胸を触っちゃうの?!!わたし以外にもそんな趣味の人が?!』
「……?貴女何を考えているの?タイがまがっていてよ」
「え?」
た、タイ?
なあんだ…そうだよね…そんなはずないよね…
「身だしなみは、いつもきちんとね。マリア様が見ていらっしゃるわよ」
そう言ってわたしからカバンを取り戻すと、
「ごきげんよう」
と言って去って行った。
……なんて魅力的な人だったんだろう…
「なーんだ、そんなこと」
前の席の桂さんは、わたしの話を聞いてけらけらと笑った。
そんなことより…う〜ん…桂さんのは…どうでもいいかな…
見ていてもつまんない…
名字が無い上にお胸もないなんて…可哀そうだな…
なんだか気の毒…
他の人のを見よう…
「ちょっと祐巳さん、私の事無視しないでよ。貴女から話しかけてきたんでしょ。いい加減その趣味、やめた方がいいわよ…」
凛子さんのもいいんだよな…
まなかさんのは…また次回に期待…でも小ぶりだけど形が綺麗で可愛いんだよね…
瞳さん…彼女は小ぶりでプリンとした感じがたまらない…
「祐巳さん!」
ごちん!
げんこつで頭を殴られた!
「いった〜い…なにするの、桂さん」
「無視するからいけないんでしょ!」
「え?何の話だっけ?」
「はあ…まあいいわ…さっき祥子様にタイを直してもらった話をしていたんでしょ?」
「あ、ああ。そうだったね」
「……とにかく、有名人は素人の事なんていちいち覚えてなんていないわ」
「そ、そう…」
そんなやり取りが彼女との日課だ。
「ごきげんよう、桂さん。ごきげんよう、祐巳さん」
「「ご、ごきげんよう」」
うわぁ…志摩子さんだ…
ひそかにわたしの一押し、志摩子さん。
すっごく綺麗で同じ一年生とは思えない。
それにスタイルだって抜群で…祥子様や良子さんには及ばないものの、彼女のお胸だって破壊力は抜群。
クラス一大きい良子さんのを触り済みの今、一番触ってみたいのが彼女のお胸。
こんなことばっかり考えているわたしはきっと罰当たりなんだろうな…でもしょうがないよね…
「祐巳さん…貴女また…」
「うん…しょうがないでしょ…」
桂さんなんかに呆れられちゃうなんて…
「祐巳さん、祐巳さん」
放課後、掃除当番だった音楽室から出ると、蔦子さんから声をかけられた。
蔦子さんのも狙っていたり…
「蔦子さん、教室のお掃除は?」
「終わったわ。貴女と行き違いにならないように、早足で来たの」
「何か、用事でも?」
「少々、お話が」
一緒に掃除をしていた他の子が掃除日誌を届けてくれることになった。
「それで?蔦子さん」
「私が、写真部に所属しているのは知っているよね?」
「え、うん。有名だもんね」
「学園祭が近いじゃない?だから早く学校に来て部活の早朝練習を撮ったりしているの」
「それで?わたしと何の関係が?」
「まあまあ、せかさないでよ」
「わたし早く帰ってしたいことがあるの」
「それってなによ」
「いいでしょ。プライベートだよ」
言えないよ…家に帰ってすることがお母さんに甘える、だなんて…
「それでね、その副産物としてこんな写真が…」
そう言って彼女は一枚の写真を取り出す。
「あ!」
この写真は今朝の…
「いい一枚でしょ」
「そ、そうだね…」
写真に写った祥子様。とっても綺麗だ。
うう〜…妄想が止まらないよ〜…
「祐巳さん、どうしたの?」
「え?ご、ごめんね。考え事…」
「それでね、この写真を学園祭の写真部展のでパネルで飾らせてもらいたいのよ」
「ええ?!」
「それを約束してくれたら、この写真をあげるから」
「写真を?う〜ん…」
「ほしくないの?」
「あんまり…あ!じゃあさ、お胸を触らせて?そうしたら飾ってもいいよ」
「はあ?!む、胸を?!」
「うん」
「祐巳さんの噂って本当だったんだ…」
「噂?」
「ええ…どんなのか知りたい?」
「いいや。そんなことより触らせてくれるの?」
「……分かったわ…これも展示のためよね…乱暴にしないでよ」
「しないよ。うふふ…嬉しいな〜」
嬉々として蔦子さんのお胸を触らせてもらうわたし。
柔らか〜い…幸せ…
蔦子さんはお顔が真っ赤になっている。
可愛いな…
…………
「ね、ねえ、祐巳さん。もうそろそろいいんじゃない?」
「あ、そうだね、ありがとう」
「いいえ、こちらこそ。それとね」
「まだあるの?」
「祥子様にも許可をもらってこないと」
「ええ?!」
「だから薔薇の館に一緒に行ってくれる?」
「………わかった。見返りはまた今度もらうからね」
「……」
やってきました、薔薇の館。
ここにいるんだ…祥子様…
しかし、わたしも蔦子さんもここの扉をノック出来ない。
なんだよ蔦子さん。自分から言い出したんだから、ノックぐらいしてよ…
蔦子さんも同じことをわたしに思っているみたい。
「薔薇の館に何か御用?」
蔦子さんとそんなやり取りをしていたら誰かに声をかけられた。
「うわあ!」「はっ!?」
びっくりして振り返るとそこには志摩子さんがいた。
「あら、ごめんなさい。驚かせてしまったかしら」
「志摩子さん…どうしてここに?」
「志摩子さんは『白薔薇の蕾』なんだから、ここにいるのは当たり前でしょ」
「あ、そうか」
志摩子さんに事情を話して薔薇の館の中に案内してもらう。
階段を上がり、ビスケットのような扉の前まで来た。
「横暴ですわ!お姉さま方の意地悪!」
『会議中につきお静かに』というプレートがかかっているにも関わらず、ヒステリックな声が扉の向こうから聞こえてくる。
「よかった。祥子様はいらっしゃるみたい」
「え?!」
「ということは今のは祥子様…」
「いつものことよ」
と志摩子さんはノックもせずに扉を開けた。
その瞬間…
「わかりました。そうまでおっしゃるのなら、ここに連れてくればいいのでしょう!」
その台詞とともに勢いよく一人の生徒が飛び出してきた。
志摩子さんが扉を開けてしまったため、不慮の事故が起こった。
わたしはその出てきた生徒につぶされてしまっていた。
でも…出てきたのは当然女の子なわけで…
ちょっと苦しいけど柔らかい…いい匂い…
この状況なら死んでしまっても構わない…
し・あ・わ・せ…
「あ〜あ、派手に転んじゃったわねって…うわ…」
「祥子の50キロに押しつぶされちゃったの?悲惨って…この子…」
「お〜い被害しゃ…」
…?なんだろう…みんな変なものを見るようにわたしの事を見てる…
ちょっと鉄っぽい味がするけど…
せっかく幸せに浸ってるんだから邪魔しないでほしいな…
「え、私が押しつぶしちゃったの?鼻血まで出して…貴女大丈夫?」
「頭を打ってるかもしれないから動かさない方がいいよ。止血はしないといけないけど」
鼻血出ちゃってるんだ。
でも平気。
「だ、大丈夫です。お尻を打っただけですから」
「本当に?鼻血凄いわよ」
「へ、平気です!」
「そ、そう…良かった」
祥子様はそう言うとなぜかわたしを抱きしめてきた。
うわ、うわぁ!
お、お胸が!!
鼻血がでちゃうよ〜!!
「時に貴女、お姉さまはいて?」
「へ?」
めまぐるしいひと騒動はとりあえず幕を下ろし、今は会議室の中。
祥子様と紅薔薇様たちが再び言い争いをしている。
それにしても…レベル高いな…
紅薔薇様、白薔薇様、黄薔薇様。
それぞれベクトルは違うけど凄い美人で、グラマラス…
本当に高校生なのかな?
特に紅薔薇様。祥子様のお姉さまだけあってこの御三方の中では一番だと思う。
次に黄薔薇の蕾。剣道で鍛えているだけあって引き締まっていそうだけど…彼女もいいな〜…
志摩子さんは毎日穴があくほど見ているからここではスルー。
最後は黄薔薇の蕾の妹。病弱な彼女は儚げな感じでスタイルも控え目。
だけどそれがかえって背徳感を催していて…
何ここは?!楽園じゃあないですか!!
みんな美人!これだけでもここに来た価値があるね…
今日はいい夢が見られそうだよ。ありがとう、蔦子さん。
「面白いね」
「はい?」
「百面相してたよ」
「え?!」
な、なんだ…やましい事を考えていたのがばれていたんじゃないのか…良かった…
そこでわたしはまた妄想に入ってしまった。
誰かに声をかけられても相槌程度しか返していない。
“ご覧になってわかるとおり…”
“それに人が選んだ…”
はあ…早く終わんないかな…お家に帰りたいよ…
“帰ります”
祥子様がお帰りになるんなら私も帰っていいよね?
“一つ確認させて…”
まだ続くの?
“もちろん、祐巳はわたしの…”
……もう飽きちゃったよ…
“もうロザリオは…”
“まだです。御希望なら…”
“いいわね…”
ふあ〜あ…
「ねえ祥子。この子あくびしてるよ?」
「なんですって?!」
「あ、ああ…ごめんなさい」
「もう…まあいいわ…」
祥子様はロザリオを取り出しています。
何するのかな…くれるのかな?
でも…甘いケーキじゃあるまいし…
でもちょっと待てよ。このまま彼女の妹になって仲良くなれば…えへへ…
「動かないで、祐巳」
「はい。動かないので…お胸、触ってもいいですか?」
あ、わたし、今、無意識的に言っちゃったよ…
祥子様、固まっちゃってるよ
「貴女、何言ってるの?!」
そのまま追い出されちゃいました。
この後、わたしは紅薔薇の蕾にエッチな事を迫った生徒として前途多難な学園生活をすることに…
あとがき
やっと30作目。
長かったです。
ちょっぴり変態な祐巳ちゃんを書いてみたかったので…すみませんでした。
この祐巳ちゃんは変態な上に飽きっぽい気もします。
でもお胸に対する情熱は異常です。
以前に『おっぱい十字軍』という作品があったので、許してください。
※2009年9月4日、少し加筆しました。