【3098】 瞳子と典  (bqex 2009-11-24 00:50:24)


もしも桂さんが勇者だったら
 最初から【No:3054】
->セーブしたところから【No:3060】【No:3063】【No:3070】【No:3073】【No:3081】【No:3085】

【ここまでのあらすじ】
 桂は勇者として、蔦子、真美、ちさととともにリリアンを救うため山百合会と戦う事になった。
 勇者パーティーでしか使えない神秘の力『並薔薇ポイント』を増量させる山村先生の『並薔薇チャンス』に挑戦し、典を倒せという指示を引いた桂。しかし、紅薔薇さまの暗躍があり、対戦前に水奏たちと戦闘になり、回復する間もなく典と遭遇した。


《現在の状況》

名前:○○桂
レベル:12
クラス:シーフ
HP:22/47
MP:19/37
並薔薇:1/4
スキル:ディテクト/シックスセンス/アンロック/リムーブドトラップ/スティール/アヴォイドダンス/ポイズン/お蔵入りパン事件(本日使用済み)/チョコレートコート
装備:トマホーク/バックラー

名前:武嶋蔦子
レベル:12
クラス:メイジ
HP:17/26
MP:31/58
並薔薇:6/6
スキル:ウィンドスラッシュ/ファイアウェポン/ブライトアロー/フライト/ブラスト/マジックサークル/四つ葉のクローバー
装備:使い捨てカメラ

名前:山口真美
レベル:12
クラス:プリースト
HP:25/42
MP:34/42
並薔薇:4/6
スキル:ヒール/キュア/プロテクト/号外
装備:アイアンクロー/ラウンドシールド

名前:田沼ちさと
レベル:12
クラス:スレイヤー
HP:13/63
MP:3/21
並薔薇:7/7
スキル:コンバットマスター/スマッシュ/バーサーカー/ライバルがいいの
装備:グレートソード/バックラー

所持金:705G
アイテム:焼きそばパン(HP30回復)×4、コーヒー牛乳(MP30回復)×4、マスタード・タラモ・サラダ・サンド(蘇生薬)×2、黄色の鍵、白薔薇のシール(1枚)ホラー漫画の生原稿(売れば3500G)、リレーのバトン(売れば2800G)、大貧民トランプ(売れば2800G)、ミータンのぬいぐるみ(売れば3800G)

※【No:3085】のバトル中、スキルの力で攻撃力が42P上昇したが、バトル終了に伴い現在攻撃力は通常に戻っている。



「ごきげんよう。桂さんは私と対戦しに来たのかしら?」

 典さんが確認してくる。

「これは勇者限定イベント『並薔薇チャンス』という並薔薇ポイント増量イベントで、桂さんは『典さんを倒せ』という指令を引いたの」

 桂の代わりに蔦子が言う。

「ふーん。で、どういった方法で対戦するつもり? 1対1?」

「で、できればこの前可南子さんと対戦した時のような形式で」

 こちらは戦闘直後で回復しきっていない。全員を倒すのは無理だが、1対1も無理だと思った桂はとっさにそう言った。

「パーティーのリーダーを倒せばパーティー全員を倒した事にするっていうあれね。構わないわ」

 典さんが受け入れる。

「では、リーダーはそちらが典さん、こっちは桂さんでいいわよね?」

 蔦子が確認する。

「いいわ」

 典が不敵な笑みを浮かべた。

「では、『ファーストブレイク』で割り込んで、『サモン・ピグマリオン』で瞳子ちゃんを召喚!」

 さっそく従者の瞳子ちゃんが登場する。

「ええっ!! もう始まったの!?」

 桂は思わず悲鳴を上げる。

「申し込んできたのはそちらでしょう。今さら何を驚いてるの?」

 典さんはばっさりと桂の悲鳴を切って捨てる。

「では、続けてスキルを共有しているため瞳子ちゃんも『ファーストブレイク』で割り込んで、スキル『今すぐお茶を』発動! 桂さん、今すぐ紅茶を入れてきなさい!」

「典さん! さらっと変な事言わないで!」

 部員Aが注意する。
 ちなみに、この部員Aはジョアナの先輩Aである。

「あ……失礼」

 部員Aの叱責が続く。

「そもそも、中の人中の人って。マリみてがメインの掲示板なんだから、マリみて以外のネタに面白さを安易に求めない!」

 すみません。

「前回【No:3085】も『忌まわしき黄金のBOX』の命名者は山村先生の中の人でもあり、ARIAのアリシアさんの中の人でもあるお方だって、みんなが知ってて当然のように使ってたけど、そんなもの知らない人の方が多い! うp主だって、ウィキペディアで確認して『あ〜、これってO原さんネタだったのか。ARIAクロス用かな? でも、私のはマリみてキャラが演じるタイプのクロスオーバーだから使えないじゃん。いいや、山村先生で』って安易に使ってたけど、そこまでして拾うネタじゃないでしょう? おまけに変な事やりだすから、入れた方が恐縮してたじゃないのよっ!」

 そうですね。申し訳ありませんでした。

「今のだって、典さんの中の人が『薔薇』と『乙女』なあの作品の赤い人形の中の人だって知らなけりゃ笑えないでしょう!?」

 はい。おっしゃるとおりです。ごめんなさい。

「『恥ずかしい台詞、禁止!』も真美さんの中の人がARIAの藍華ちゃんだって覚えていればいいでしょうけど、マリみてだけを求めている人にとっては邪魔よ、邪魔!」

 いえいえ。あれはこの連載中にどこかでやります。

「何言ってるのよ、地の文! ちょっと下コメでリクエスト頂いたからって調子に乗って! いい加減にしなさいよっ! 最近うp速度が遅いから前回までどうだったかみんな忘れてるじゃないの! 予告SS書くのに1回タイトル流しちゃったから収集つけるのが大変だって、そんなの自業自得よっ!!」

「ちょっと、落ち着きなさいよ」

 典さんが止める。

「あの、そろそろ戦闘に戻っていいかしら?」

 蔦子が声をかける。

「そうね。戻りましょう」

「どこまでだったかしら?」

「典さんの『今すぐお茶を』からよ」

「そうそう。『今すぐお茶を』だったわ。『今すぐお茶を』はこちらのパーティーの敏捷値が一巡するまでの間、上がる。つまり、こちらのパーティー全員の行動順が勇者パーティーを上回っているはず」

「つまり、回復も出来ないままに桂さんは四連続攻撃対象……」

 誰かわからないが息をのんだ。

「か、桂さん! 全力で回避して!」

「い、言われなくてもそのつもりよ!」

 次に攻撃する生徒は三年生を送る会でカムパネルラを演じていたので、便宜上カムパネルラ部員と呼ぶ。

「『生徒指導室でプロポーズ』で桂さまを攻撃! 食らえば桂さまは真美さまのダメージ軽減スキル『プロテクト』の届かないところまで吹っ飛ばされます!」

「避けっ!」

 桂はかわした。
 次の彼女は学園祭でベスを演じていたのでベス部員と呼ぶ。

「アルケミストのスキル『びっくりチョコレート』を武器に使用! ランダムで武器にさまざまな効果が付加される。効果は……うっ、『与えるダメージを闇属性の魔法ダメージ扱いにできる』だけっ!? ……そのまま攻撃!」

 現在桂の防御属性は無属性なのであまり効果がなかったが、攻撃自体はヒットする。

「『プロテクト』」

 真美がダメージ軽減スキルを使う。

「さらにこちらも『プロテクト』を桂さんに!」

 彼女は体育祭でも三年生を送る会でも雉のお面をかぶっていたので、便宜上雉部員と呼ぶが、雉部員が『プロテクト』を重ねがけした。

「しまった! 『プロテクト』はSLが低い方が優先するスキル!」

「なんですって! つまり、この場合は……」

「私の『プロテクト』はSL5! これならダメージを通す事が出来るかもっ!」

 しかし、雉部員のスキルは幸か不幸かクリティカルに桂を救った。 

「仕方がない。名誉挽回。『ファイアボール』を『マジックサークル』で強化して『ブラスト』で広げる!」

 雉部員の火属性攻撃が勇者パーティー全員に襲いかかる。

「全員並薔薇使いきってもいいから回避してっ!」

 蔦子が叫ぶ。

「クリティカルで回避しましたっ!」

 桂、回避成功。

「並薔薇1P使用でクリティカル!」

 ちさと、回避成功。

「並薔薇2Pでいけるか……成功!」

 蔦子、回避成功。

「並薔薇2P使用で……げっ、ファンブル〜っ!! 2P使ってファンブルなんてありえないよ〜っ!」

 真美、回避に自動失敗。

「じ、自分自身に『プロテクト』!!」

 雉部員のスキル重ねがけ作戦は、自分自身の攻撃には使えない。
 真美、ノーダメージに抑え込む。
 次は部員Aの番である。

「『クロスオーバー』で──」

「ちょっと待てい!」

 全員が突っ込む。

「さっき、中の人ネタは邪魔だの、他の所に面白さを求めるなだのと力説してたのあなたでしょう!?」

「よりによって『クロスオーバー』って。他のキャラの真似した幻影で攻撃するスキルじゃないの」

「ははん。単に自分で『クロスオーバー』使うから、中の人ネタだの他の所のパクリだのをやられると目立たないから他人には禁止したわけだ」

「こんなにハードル上げちゃって。すべったらどう責任取るわけ?」

 敵味方の区別なく全員が口々に部員Aを責める。

「な、何よっ! みんな、私が出来ないと思ってるんでしょう」

 部員Aは半泣きになって反論する。

「いいえ。きっとあなたは漫画研究部の生徒よりずっと面白く『クロスオーバー』を使えるわ」

「もちろんよ。こんなにハードルが上がったって、要は桂さんへの攻撃を成功させればいいんだから!」

「ジョアナ再び、って感じね」

 典さんがため息をついた。

「『クロスオーバー』で桂さんを攻撃!」

 現れたのは目つきの危ない三つ編みのメイドだった。

「これは『BLACK LAGOON』の恐怖のメイド、ロベルタ!」

「『ごきげんよう』といったら手榴弾が大量に出てくる奴?」

「それとも三つ編みつながりで『令ちゃんのばか』攻撃?」

「っていうかさ、ロベルタを知らない人ばかりのところでそんな事やられてもちっとも面白くないじゃないの」

「逆をやりなさいよ、逆を」

 敵味方なく、先読みして突っ込む。

「うわああっ!! なんで先読みして突っ込むのよっ! せめて攻撃してから突っ込んでよ! やりづらいじゃないのよっ!!」

 部員Aが叫ぶ。

「え、何。本当に『令ちゃんのばか』ってロベルタに言わせるつもりだったの?」

「だから、ここはロベルタ知らない人ばっかりなんだからそういうのは自重しなさいよ」

「謝れ。ロベルタに謝れ」

「まだ発動してないのにっ!!」

「え? 発動してなかったの? ごめん。残りの並薔薇使って抵抗に成功しちゃった」

 桂が驚いていう。

「発動前に成功させるなあっ!!」

 部員A、号泣である。

「じゃあ、こっちの番ね。桂さんからよ」

「焼きそばパンで30P回復で全快っと」

 桂のHPが全快する。

「私はコーヒー牛乳でMP回復。MP全快」

 ちさとがMPを回復させる。

「じゃあ、ちさとさんのHPを『ヒール』で回復」

 ちさとのHPが15P上昇する。

「今のうちにMPをコーヒー牛乳で回復させて全快」

 蔦子はMPを回復させる道を選んだ。

「そして、全員が行動し終わったのでここでスキル『号外』で蔦子さんを再行動させる!」

 真美の宣言を受け、蔦子が動く。

「『ファイアウェポン』『マジックサークル』『ブラスト』でこちらのパーティーの攻撃力を底上げ!」

「その『マジックサークル』を『お蔵入りパン事件で打ち消す!」

 ベス部員が宣言する。

「しまった! 『ファイアウェポン』を打ち消されたらかけ直せばいいけど、『ファイアウェポン』の重ねがけは無効。ならば、並薔薇2P追加!」

 勇者パーティーはクリティカルしてなんとか27P上昇させる。
 一方の演劇部パーティーの敏捷値が元に戻る。

「待機」

 カムパネルラ部員が待機を宣言する。

「『ポイズン』を典さんに!」

 いつものように毒化スキルを桂は使う。

「『ガーディアン』使用!」

 従者瞳子ちゃんが典さんをかばって毒を受ける。

「う」

「『スマッシュ』&『バーサーカー』でここは壁落としを!」

 典さんをかばうであろう部員のHPを削る作戦である。
 しかし、ベス部員以外に回避されてしまうがっかりな展開になる。
 ベス部員へのダメージは雉部員の『プロテクト』で阻まれる。
 次の典さん、従者瞳子ちゃんが待機を宣言し、雉部員が次の手を打つ。

「『ウィンドウェポン』+『ブラスト』に『マジックサークル』を乗せます!」

 むこうは34P増えて回避が重要なポイントになってくる。

「コーヒー牛乳で回復!」

 真美がMPを全快する。
 次はベス部員。

「『ツインウェポン』で現在持っている武器と同じ能力を持っている武器を作製! この武器は3巡しかもたないけど、攻撃力は倍になる! そして攻撃!」

「攻撃力だけで68Pなんて死ぬっ!」

 しかし、回避率の高い桂はかわす。

「『ブライトアロー』『ブラスト』『マジックサークル』の光属性全体攻撃!」

 クリティカル!
 演劇部パーティーはベス部員以外は回避に失敗してしまう。

「『四つ葉のクローバー』使用! 『両手に水道管』で全員分のダメージを私が引き受けます!」

 部員Aが宣言する!

「5人分なら280Pは越えるはず。一体どの手を!?」

「アイテム『青い傘』使用! このアイテムは所持しているだけで戦闘不能に追い込まれたとしてもただちに復活できる!」

「そんな便利なものが!」

「ただし、1回使えばなくなるけどね」

 部員AはHP10で生き残る。 

「ふっふっふっ。ようやく私の時代が来ました」

 部員Aが笑う。

「『クロスオーバー』で対象は桂さん!」

「ううっ、並薔薇ポイントはもうないのに!」

 祐巳さんの幻影が現れる。

「おおっ! ついに本命が!!」

「さあ、今度こそ笑いを取って頂戴!」

「いや、攻撃するんでしょう?」

 期待が高まる。しかし。祐巳さんの幻影がとんでもない事に。

「(出だしは思い切りが肝心)パ・パ・パ パンプキン」

 幻影の祐巳さんは怪しい踊りを踊り始めた。

「(おどけた仕草でハートをCatch)ラ・ラ・ラ パンプキン」

 笑顔を振りまき踊る祐巳さんの幻影を全員が唖然として見守っている。

「(魂の抑圧、そして……)シィザ・アァーーアアァズ……(低音)」

 もはやどうする事も出来ない。

「(解放)しざ・あーーず!!(高音)」

 フィニッシュして祐巳さんの幻影は消えた。

「……何、これ?」

「一応『抵抗』には成功したけど、何これ?」

「誰もわからないから、地の文、解説!」

 『Pumpkin Scissors』のステッキン曹長(中の人は祐巳さんの中の人)です。

「わかんないよ! そんなマイナーなの!」

「祐巳さんの中の人のファンでもわからないかもしれないよ!」

「もっとメジャーなの! せめて『学園アリス』ぐらいの知名度がないと!」

「えええっ! いちおうアニメ化されてるのに……」

「アニメ化されてればみんな知ってるって感性が大間違いよ!」

「酷いっ!! さっきからみんな私ばっかり責めてっ!」

 部員A、人生最悪の日である。

「『バーサーカー』!」

 カムパネルラ部員が全体攻撃を宣言する。

「回避!」

 全員が並薔薇を使ったりして回避する。
 待機していた典と従者瞳子のターンになる。

「使用スキルはサモナーの『みんなで送辞』で桂さんに攻撃! これは私と従者瞳子ちゃんが交互に攻撃を繰り出し、桂さんに連続で回避されるまで攻撃を続けられるスキルよ!」

「か、回避すればいいんでしょう? そんなの」

「この前の戦闘で私もレベルが上がったから、『ガンマスター』のスキルを強化したのよ。簡単に避けられるとは思わない事ね」

 典さんが言う。

「ちょ、ちょっと!」

「さあ、行くわよ。まずは従者瞳子ちゃんからよ。食らいなさい!」

「ひっ!」

 桂は回避に失敗した!

「『ダイレクトヒット』でダメージ追加!」

 典さんがダメージ増量を図る。

「『プロテクト』!」

「『プロテクト』」

 真美のスキルに雉部員がダメージ軽減を弱体化する作戦に出る。
 今回は作戦が大当たりで、ダメージは51Pになってしまう。

「『四つ葉のクローバー』発動! 『そのロザリオを私に』で桂さんのダメージを私が引き受ける! あとは任せたっ!」

 蔦子がとっさにスキルを発動して桂は助かるが、蔦子は戦闘不能になった。

「『みんなで送辞』中だもの。次は『プロテクト』は使えないわよ」

 典さんが勝ち誇って言う。

「う、うう……」

 桂は自分のスキルを見直す。

「ごめん! みんな、賭けにでるっ! 典さんに『スティール』使用! 使用可能なドロップ品、出てっ!」

 スティール、それは他人から何かを奪うスキルである。

「そんな他力本願な作戦が通用するはずがないでしょう? 残念だけど、私のドロップ品にそんなものはないわよっ!」

「うわあぁーっ!! ……あれ?」

 小さな奇跡が起こってしまった。


《今回ゲットしたアイテム》

従者瞳子(売れば40000G)典さんのスキルと妄想が生み出した従者。使いこなすにはサモナーのスキルが必要。


「……従者って、高いんだ」

「っていうか。これ、『スティール』対象なの?」

「こんな事出来ないはずだけど……一体、何が起こっているのかしら?」

「ああ〜っ!!」

 地獄に落とされたような悲壮な声が上がった。
 典さんだった。

「典さん、落ち着いて」

 典さんは両手両膝をがっくりついて_| ̄|○な格好になった。
 心配して部員が声をかける。

「……もう、だめぽ」

 典さんはつぶやいた。

「何言ってるのよ」

「そうよ、あなた可南子ちゃんとの戦いで従者を自爆させたりしてたじゃないの」

「さっきだってかばわせて毒化させてたでしょう?」

 演劇部パーティーが集まって慰める。

「典さん、次はあなたの番なのだけど」

「……今は、何もしたくない……」

 典さんは本気で落ち込んでしまった。

「それって、行動放棄? 一応、戦闘中なんだけど」

「もう、何でもいいの。瞳子ちゃん……瞳子ちゃん……」

 そういえば、典さんは末期的松平病だった。
 従者瞳子ちゃんが毒の効果でHPを減らす。

「祐巳さんと姉妹になって幸せになるならと身を引いたものの、あなたのいない演劇部がどれだけ寂しい事か……うう……」

 白き花びらでふられた聖さまよりも、黄薔薇革命で捨てられた令さまよりも、レイニーブルーで雨の中沈んだ祐巳さんよりも典さんは落ち込んでいるように見えた。

「あの、典さん……」

「誰かに取られるなんてえ……うう……」

 完全に鬱に入ってしまったようである。
 全員が「さて、どうしたものか」と典さんを見ている。
 その時、クラブハウスから出てくる人がいた。

「ごきげんよう。これはこれは勇者さまではありませんか」

 出てきたのは本物の紅薔薇のつぼみの松平瞳子ちゃんだった。

「ぐわあっ!!」

「ぐわあ? ああ。ご安心ください勇者さま。私は勇者さまとは戦いませんから」

 微笑んで瞳子ちゃんが言う。
 その時。

「しゃきーん!」

 復活、を通り越してお肌ツヤツヤ、お目目キラキラ、元気いっぱいになった典さんが仁王立ちしていた。

「瞳子ちゃん」

 先程「もうだめぽ」と言っていた人と同一人物とは信じられないくらい、腹筋を使ったいい声で典さんは呼びかけた。

「あ、典さま。いらしたんですか?」

「ええ。今、勇者さまと対戦中なのよ」

「あら、邪魔しちゃ悪いですね。ではこれで」

 瞳子ちゃんは行ってしまった。
 だが、末期松平病の典さんの松平分は十分に満たされたらしい。

「この高城典、そうそう簡単には負けないわよっ!」

 本当に同一人物なのか疑わしいぐらい典さんは元気になっていた。

「典さん。残念だけど、さっき鬱に入った時のが『行動放棄』とみなされて、あなたの番は終わったから」

「……」


《現在の状況》

桂   HP:47/MP:10/並薔薇:0
真美  HP:25/MP:40/並薔薇:0
ちさと HP:28/MP:12/並薔薇:5
蔦子  戦闘不能
従者瞳子HP:78(ただし、戦闘に参加できない)

 典 HP:77(ノーダメージ)


「た、たとえそうだとしてもまだまだよ! カムパネルラ部員!」

「はい! 普通に桂さまを攻撃!」

「何故!?」

 典さんが驚く。

「もう、MPがありませんっ!」

 桂は余裕で回避した。

「こっちも普通に典さんに攻撃!」

 桂の攻撃は雉部員の『プロテクト』が阻む。

「『バーサーカー』+『スマッシュ』! 並薔薇ポイントは『命中』に3、残りはダメージに使用!」

 ちさとの全力攻撃が終盤で炸裂する。
 当然誰も回避できず、100Pオーバーのダメージが襲いかかる。

「典さまを『カバーリング』!」

 典さん以外の部員が戦闘不能に陥った。

「でも、そっちはそれでもうすべての切り札を切ったのよね? もう、何も出来ないんじゃないの?」

 典さんが言う。

「それはどうかしら。それに、まだ私の番なのよ」

 真美が言い返す。

「MP回復のコーヒー牛乳、最後だけど、ちさとさんに使用!」

 ちさとのMPが回復する。
 従者瞳子ちゃんのHPが毒の効果で減る。

「『ファーストブレイク』で割り込んで『ダブルショット』!」

「回避! もう一回!」

 桂は2回とも回避する。

「攻撃!」

 次は桂が攻撃する。

「今度はこっちが回避!」

 典さんが回避する。ここまで典さんはノーダメージである。
 次のちさとの番の時に真美が叫んだ。

「『ライバルがいいの』で典さんへのダメージを倍に! そして、『スマッシュ』で桂さんを攻撃して! そして、桂さんは『チョコレートコート』を!」

「なんで私が攻撃されなきゃいけないのっ!」

 桂は叫んだ。

「大丈夫! 『ライバルがいいの』は典さん以外はダメージは半分になるし、万が一の時は私がかばう!」

「では、『ライバルがいいの』『スマッシュ』を桂さんに!」

「回避しないで『チョコレートコート』で典さんと入れ替わる!」

「なんの! 抵抗してみせる!」

 『チョコレートコート』の結果は……僅差で桂が勝利する。

「まだまだ! 『カウンターショット』でちさとさんのスキルに対抗する!」

 『カウンターショット』は攻撃で攻撃に対抗するスキルである。
 典さんの攻撃をちさとが食らえばちさとの攻撃は失敗したうえ典さんの攻撃を食らった事になる。しかし、ちさとが回避すればちさとの攻撃は成功し、典さんはちさとの攻撃を食らう。
 今回の場合は両方の残りHPと予想ダメージから考えて失敗した方が即、戦闘不能となる。

「食らいなさい!」

 典さんはクリティカルで決めてきた。

「うわあああっ!!」

 ちさともクリティカルを決めた。
 クリティカルとクリティカルの場合、回避側が優先する。
 ちさとが成功となり、典さんはちさとの攻撃を食らった。

 典さん、戦闘不能。

 ちさとは大きく息を吐いた。

「おめでとう! 桂さんは並薔薇ポイントが3P増加です!」

 どこにいたのか山村先生が登場して高らかにそう言った。

「きょ、今日はもう……」

 桂たちは蔦子をお聖堂で回復させるとその日の活動を終了とした。


《他の演劇部部員からゲットしたアイテム》
鉄瞳子の旅(売れば2600G)鉄道大好きなツンデレ娘の物語の本。
衣装用生地(売れば2000G)他になかったんかいという悲しいアイテム。
ファイアベスト(防御力4、火属性)装備すると防御属性が火になる。
プロジェク○A子のDVD(売れば3800G)べ、別に中の人のネタなんかじゃないんだからねっ。


 薔薇の館。

「思わぬ死闘だったわね。『だめぽ』って……」

 失笑しながら黄薔薇さまが言う。

「次がクラブハウス攻略かしらね」

 白薔薇さまが言う。

「じゃあ、次はよろしくね。笙子ちゃん、日出実ちゃん、それに瑞絵ちゃん」

 紅薔薇さまが部屋の隅にいた3人にそう言った。


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