【316】 しましま!?  (まつのめ 2005-08-06 13:48:29)


No.296 No.301 No.311 No.313 と平行です。最低限No296を読まないと意味がわからないと思います。


 朝のまどろみから目覚め、横になったまま目をあけると見たことのある人の寝顔があった。
 だれだっけ…。
 ふわふわの巻き毛に良く整ったお人形のようなお顔。良く知ってる人だと思うんだけど。
 考えているうちにまた眠くなった。
 だれと寝ていたんだっけ……。
 うつらうつらとまどろみの中で沈んだり浮かんだりがなんか心地よい。
 エアコンは眠りにやさしい自動運転。
 真夏のこの時期でも最適な温度を保ってくれるからいつまでも寝てしまってあまり良くないのだけど。
 真夏といえば今は夏休み。親戚が泊まりに来てたっけ?
 でも私によく似ている親戚っていたかしら?
 だんだんと意識がはっきりしてきてそんな親戚は居ないことを思い出す。
 じゃあ誰?
 きっと夢なんだわ。
 だったら早く覚めないと。だって今日から山百合会のお仕事が……。
「!」
 重要なことに思い至り一気に覚醒した。
 そうなのだ。のんびりまどろんでいる暇などなかったはずなのに。
「今、何時?」
 慌てて体を起して時計を確認すると、時計は集合時間までには学校に着くにはぎりぎりの時間を指していた。
 寝過ごしたっ!
「いけないっ!」
 お布団の方から声が聞こえる。
 でもそんなこと気にしている暇は無い。
 急いで寝巻きを脱ぎ、制服に着替える。
「あ、制服……」
「箪笥にあるほうを使って!」
「そ、そうね」
 ソックスを穿いてタイを結んで。
「急いで、バスの時間だから」
 髪を整えるのもそこそこに、あわただしく部屋を出て玄関に向かった。

「志摩子、起きたの〜?」
 私が今日から山百合会でお仕事で学校へ行くことは忘れていたのか台所から母ののんびりした声が聞こえてきたが、もちろん朝食を取っている暇は無い。

「はぁ、はぁ、……間に合った」
 バス停に着くとちょうどバスが来たところだった。
 危なかった。
 これに乗り遅れると最悪20分の遅刻が確定してしまうのだ。
「あの……」
 バスに乗り込もうとしたところでようやく起きてからの違和感に気づいた。
「ええっと?」
「すみません、バス代貸していただけますか?」
 この子誰だっけ?


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