【3200】 カリスマトリオ  (bqex 2010-07-13 21:26:25)


『マリア様の野球娘。』(『マリア様がみてる』×『大正野球娘。』のクロスオーバー)
【No:3146】【No:3173】【No:3176】【No:3182】【No:3195】【これ】【No:3211】
(試合開始)【No:3219】【No:3224】【No:3230】【No:3235】(【No:3236】)【No:3240】【No:3242】【No:3254】(完結)

【ここまでのあらすじ】
 福沢祐巳は大正時代に連れて行かれ桜花会とともに野球をして過ごすが、歴史を変えてしまい帰れなくなる。
 帰還条件は山百合会と桜花会が試合をすることだと知った小笠原祥子は大正時代に乗り込み、小笠原晶子に試合を申し込んだ。



 大正時代。
 祥子さまと山百合会の帰った後の食堂に残された桜花会の面々は、祥子さまの態度に腹を立てて、ブーブーと文句を言っていたが、祐巳の頭にはそれは入ってこなかった。

「何持ってるの?」

 小梅さんが由乃さんが祐巳に手渡した紙袋を覗き込む。

「ん……ああ……」

 祐巳もつられて覗き込む。

「え」

 中に入っていたのは、下着だった。祥子さまが身につけているような高価なランジェリーではなく、どこにでも売っているようなものだったが、大正時代のものとは全然違う。
 一緒に『祐巳へ』と書かれた封筒が入っていた。祥子さまの字だった。廊下に出て、一人で手紙を読み始める。

『祐巳へ
おおよその事情は聞きました。
今の祐巳を平成に連れ帰るためには
山百合会と桜花会が野球の試合を
しなくてはなりません。
祐巳はそのまま桜花会の皆さんと
行動を共にして、私たち山百合会と
野球で対戦しなさい。
それまでの間、大変でしょうが、
必ず祐巳を平成に連れ帰ります。
少しの間ですが、これらを使いなさい。
               祥子』

 下着がない、と言ったのを、瞳子ちゃんが伝えてくれて、それを祥子さまが用意してくれたようだった。他にも大正時代では手に入らないような日用品が入っている。
 こんなことになるんだったら、もっといろいろなことを言うのだった。
 ちょっぴり後悔しながら、祐巳は下着の入った紙袋をぎゅっと抱きしめた。

『必ず祐巳を平成に連れ帰ります』

 祥子さまに時空を超えさせる力がないのはわかっているが、祥子さまがそう言うのであれば何とかなるような気がしてくるから不思議だった。
 野球の試合をすれば帰ることが出来る。そう思うとなんだか元気が湧いてきた。

「ん!?」

 引っかかることがあって、もう一度読み返す。

『私たち山百合会と野球で対戦しなさい』

「おっ、お姉さまと試合!? お姉さまと戦うっ!!」

 それは祐巳にとって、新たな悩みとなった。



 旧寮の食堂には小梅が中心になって作った洋食が並んでいる。
 普段であればこちらの方が話題の中心になるが、今日は違った。

「だから、結婚とか、そんな話は全然ないんだってば。あー、もう、そんな風に思われていたなんて」

 食事よりも祐巳の話を聞く方が忙しい。料理を作った小梅だって祐巳にはいろいろ聞きたかったので、積極的に話をきく方に回ったくらいだ。
 結婚説を聞くと、祐巳は仰天したようにそれを否定した。

「じゃあ、一体何があったの?」

 小梅は聞いた。
 祐巳は沈黙の後言った。

「ごめん。うまく説明できる自信がなかったから、今まで曖昧に言ってたけど、ちゃんと説明するね。さっきここに来た小笠原祥子さま、私のお姉さまなのだけど、お姉さまに危機が迫ってるって聞かされて、ありささまに連れてこられたの」

「ありささま?」

「ほら、ここに初めて来た日、私のことをみんなに紹介した方がいらしたでしょう」

 確かにそういう人はいた。しかし。

「あの方、どういった方なの? 鏡子が怪我をした直後に『心当たりがある』みたいなこといって、祐巳を紹介してくれたけど」

 祐巳は一瞬キョトンとした後、また驚いた。

「あれっ、ちょっと待って。皆さんのお知り合いじゃなかったの?」

「って、祐巳さんのお知り合いじゃないの?」

 強く何度も否定するように祐巳は首を横に振る。

「誰かの知り合いじゃなかったの?」

 巴が一同を見回す。
 ここにいる全員がありさは誰かの知り合いだと思い込んでいて、本当は何者なのかを知らなかった。

「福沢、なぜ女性とはいえ見ず知らずの人間についてきてしまったんだ?」

 呆れたように環が聞く。

「あ、うん。ありささまのいう事には、お姉さまの危機を救うにはちょっと体を動かせばいいって話だったから了解したのに。気を失って、ここに連れてこられて、現在に至るってわけ」

「向こうは始めっから祐巳をかどわかす気だったようね。しかし、あなたのお姉さまがあなたを探し当て、ここに来た」

 乃枝が言うと祐巳がうなずく。

「あの態度……もしかしたら、私たちをありさの仲間だと思って敵愾心をむき出しにしたのかもしれないわね」

 雪が納得したように言う。

「事情はわかったわ。でも、それならそうとあの時言ってくだされば試合の約束なんか──」

 お嬢が言いかけて、はっとした表情になる。

「試合、次の日曜日だったわね」

「間隔が空きすぎると試合勘が鈍るから、その日に受けたのよ」

 乃枝がさらりと言うが、お嬢は一瞬顔が曇った。

「都合が悪かった?」

「まさか」

 お嬢は否定する。

「あ、そういえば審判がいるって言っていたわね。私の方からお願いしておくわ」

 ポン、と手を叩いてお嬢は言った。
 小梅と祐巳だけは気付かなかったが、実はお嬢、許嫁とのランデヴーを次の日曜に予定していたのだった。

 ◆◇◆

 平成、小笠原邸。
 今後のことを話し合いたかったので、一度家に帰ってからくるようにとお願いして来てくれた一同に加えて三人がここにはいた。写真に写っている残りのメンバーである。
 彼女たちにも事情を説明するために、どうしても、とお願いしてここに来てもらったのだ。
 祥子は経緯を語った。

「……と、いうわけで、祐巳は今、大正時代にいます」

「それはまあ、大変なところに連れて行かれたものね」

 一人目、鳥居江利子さまはようやくそれだけ言った。
 江利子さまは現在リリアン系列とは違う大学の芸術学部に通っている昨年度の黄薔薇さまで、令のお姉さまである。

「それ、警察にはなんて説明するわけ?」

 二人目、佐藤聖さまがそう尋ねてきた。
 聖さまは現在高等部の隣にあるリリアン女子大に通っている昨年度の白薔薇さまで、志摩子のお姉さまである。

「今日子さんに相談したところ、その辺りは任せてほしいというので、お願いしました」

 祥子はそう答えた。

「それで?」

 聖さまに促され、祥子は話を続ける。

「祐巳の帰還の条件は大正時代の桜花会と私たち山百合会が野球の試合をすることです。そして、私たちは先程大正時代に行って試合を申し込み、帰ってきました」

「そんなに頻繁に過去の世界といったりきたりしていいものなの?」

 江利子さまが言う。

「本当はよくないのかもしれません。次回の出発も2週間後以降にしてほしいと言われました」

「時空云々の話はわかったわ。それで?」

 それまで黙って聞いていた三人目、水野蓉子さまが促した。
 蓉子さまは現在リリアン系列とは違う大学の法学部に通っている昨年度の紅薔薇さまで、そして祥子のお姉さまである。

「この写真にあるように、祐巳は東邦星華の一員として試合に臨むのでしょう。また、今日子さんの話では、最大で連れていける人数は十人、つまり復路は祐巳を連れて帰るのでこちらには九人が必要なんです」

 祥子は頭を下げて言った。

「皆さま、私に力を貸してください」

「何言ってるの、あなた」

 蓉子さまは即座に言った。

「お願いします! 祐巳を助けたいんです」

「あのね、祥子──」

「無理を承知で頼んでいるんです。この通りお願いします」

 床に手をついて、と思った時に、両肩をしっかりと掴まれた。

「聞きなさい」

 そこには時に厳しく、時に優しく祥子を導いてくれた蓉子さまの顔があった。その表情はちょっと困っているような感じがした。

「あなたね。祐巳ちゃんのことはあなただけが心配しているわけではないのよ。私も、聖も、江利子も、ここにいるみんながそれぞれ祐巳ちゃんに思う事があって来てくれたのに、その言い方はないでしょう。祐巳ちゃんはあなたの妹だけど、あなただけのものじゃないのよ」

「お姉さま──」

 蓉子さまは部屋にいる一同を見回して言った。

「祐巳ちゃんを助けるためには大正時代で野球の試合をしなくてはいけないそうよ。たぶん、野球なんてやったことはないでしょうし、もしかしたら、大正時代に行って不測の事態に巻き込まれてしまうかもしれないわね。でも、そんなかなり面倒で危険なことになっても、祐巳ちゃんを助けたいと思っている人がいたら、その人は私たちと一緒に野球をやってほしいの」

 祥子の手を蓉子さまが握った。

「もちろんですっ!」

 由乃ちゃんが蓉子さまの手に手を重ねるように握って言った。

「運動神経なんてないに等しいですが、祐巳さんのためにやらせてください」

「私も。お仲間に加えてください」

 三人の手に志摩子が手を重ねる。

「さっき、実際に大正時代に行ったんですよ。嫌ならそのときに断ります」

 乃梨子ちゃんが手を重ねる。

「もちろん、祐巳ちゃんになら喜んで手を貸すよ」

 聖さまが手を重ねる。

「そんな面白そうな話、私がスルーするとでも?」

 江利子さまが手を重ねる。

「私は、祥子のためにもって思ってたけど、そうだね。祐巳ちゃんがいないのはやっぱり嫌だ。たぶん、少しは役に立てるよ」

 令が手を重ねた。
 乃梨子ちゃんが瞳子ちゃんの顔を見た。

「あの、私、いいんですか?」

「はあっ!?」

 乃梨子ちゃんはそう言うと、重なった手から自分の手を引きぬいて、瞳子ちゃんの手を握った。

「今さら何言ってるの? いいも悪いも祐巳さまのために頑張りたいかどうかってだけじゃないの」

「乃梨子ちゃん、強要は──」

「瞳子は祐巳さまのこと、どう思ってるわけ?」

「私……」

 決心がつかないのか、瞳子ちゃんはうつむいた。

「瞳子ちゃん」

 祥子は呼びかける。

「大正時代で再会した祐巳が私の顔を見て一番初めに何を言ったか想像がついて? 『瞳子ちゃんは?』って、あなたの無事を聞いたのよ」

「え……」

 瞳子ちゃんは驚いて目を見開く。

「もし、あなたが祐巳のことを少しでも心配してくれているのであれば、一緒に行動して祐巳に元気なところを見せてあげてはくれないかしら?」

 瞳子ちゃんはじっと考えて、結論に達すると、乃梨子ちゃんに手を取られたまま、全員の手に重ねた。

「これで九人ね。野球なんてやったことがないけど、頑張りましょう。祥子のことだから、どうせ勝って祐巳ちゃんを連れ戻すなんて格好つけてきちゃったんでしょうしね」

「お、お姉さまっ?」

「あら、違ったの?」

 祥子は沈黙した。それは肯定しているのと同じだったが仕方がない。
 やっぱりかなわない、と祥子は思った。

 そこから先は大騒ぎだった。
 道具のレンタル先を探し、ユニフォームはホームページの写真を参考にネット通販で揃え、練習場はその気になれば車の運転の練習さえ可能な小笠原邸の庭を使用することまでがなんとか決まったが、すっかり遅くなったので、今日は解散となった。

「出来ればコーチも誰かに頼みたいわね」

 江利子さまのつぶやきに蓉子さまが答える。

「それはそうね。私たちはあまりにも野球のことを知らな過ぎるもの」

 話し合ってわかったことは、由乃ちゃんと令は野球を見る分には詳しいが、やったことはなく、他のものも知識として知っているだけで野球をやった事のあるものはいなかった。

「別にプロ級じゃなくてもいい。ちょっとでもやったことがある人なら私たちよりはマシなはず」

「それでしたら、私が心当たりがあるので聞いておきます」

 瞳子ちゃんが請け負ってくれたのでそちらは任せた。



 そんな事が前日にあったなんて知らなかったが、とにかく全員が揃ったのは夕方だった。

「瞳子ちゃん、心当たりって柏木さんだったの?」

 蓉子さんがちらりと柏木優先輩の顔を見て言った。

「たしかに僕は野球経験がないからご不満だろうけど、彼は中学で肩を壊すまでは野球をやっていたそうだから、大丈夫」

 そう言うと柏木先輩は急に呼び出されて面食らっていた福沢祐麒の両肩に手を置いて、女性陣の前に差し出した。

「じゃあ、祐麒だけ来ればいいじゃない」

 不満そうに聖さんが言う。

「こういうことは人手が多い方がいいと思うよ。球拾いや雑用も必要だろう?」

「いいじゃありませんか。もう」

 割って入った祥子さんからは、この話はここまでにしましょう、という空気が流れている。

「あの、皆さんはどうしてこんな時に野球なんかするんですか?」

 祐麒は素朴な疑問として聞いた。
 シーズンオフといっていい時候の問題だけではなく、現在姉の祐巳が行方不明になっているというのに、その仲間たちが揃って祐麒に野球の教えを乞おうというだなんて、奇妙な話だった。
 蓉子さんが一歩前に出て祐麒と話を始めた。

「詳しい事情は話す事が出来ないけれど、祐巳ちゃんは今、どこ国の警察や軍隊にも手が出せない場所にいるわ。その祐巳ちゃんを連れ戻すためには向こうの野球チームと私たちが野球の試合をしなくてはならなくなったのだけど、その場所には私たち九人しかいくことが出来なくって。だから、どうしても私たち九人は野球を覚えなくてはならないのよ」

「……は?」

 一度で信じられなかったとして、誰が祐麒を責められよう。

「信じられないのはわかるわ。でも、理由もないのに、この子が野球をやるなんて変だと思わない?」

 そう言って、蓉子さんは祥子さんを指した。

「まあ、それは、そう思いますけど」

「じゃあ、祐巳ちゃんのためにお願い。2週間でいいから」

「へっ!?」

 何をからかっているんだ、この人はと思った祐麒だったが、山百合会の人たちは全員大真面目な顔をしていた。

「お願い、祐麒くん」

「お願いします。ちゃんと練習します」

「他に方法はないの。私たちは祐巳ちゃんを助けたい。お願い」

「いや、あの……」

 祐麒は無意識に右腕を押さえた。
 肩を壊し、二度と野球が出来なくはなったが、野球を愛していないわけではない。
 むしろ、野球が好きだった。
 教えているうちに気持ちが高ぶって球を投げてしまうかもしれない。無茶をしてしまうかもしれない。そうなったら、自分でもどうなってしまうのかわからない怖さがあった。

「ユキチ」

 柏木先輩に呼ばれて顔を上げた。

「別に君に野球をやれって言ってるわけじゃない。彼女たちは野球を教えてほしいって言っているだけだ。ユキチは見ていて指示することに徹すればいい。もしも、実際にやってみせる必要があるのであれば、その時は僕が代わりに動くことにしよう。なに、今さら遠慮する必要はない」

 そこまでいわれては断れない。

「先輩……わかりました」

「引き受けてくれるのね」

「はい」

 祐麒がうなずくと皆ほっとした表情になった。

「じゃあ、早速準備体操から。野球に必要な筋肉をほぐしてもらいます」

「はい」

「じゃあ、僕も」

 女性陣の中に入る柏木先輩に聖さんは露骨に『お前もか』という顔をするが、それに気づいて柏木先輩が言う。

「君も聞いていただろう? ユキチは身体が動かせないから代わりに僕が動くと。それに、祐巳ちゃんが関わっているならなおさら引けない。祐巳ちゃんには大きな借りがある。それも、この程度じゃ返せないくらいのね」

「ほら、そこ。もめないの」

 蓉子さんにまで注意され、聖さんは舌打ちしただけで大人しくなった。
 まったく野球をやった事のないお嬢さまたちに、祐麒は一から教えていった。
 ボールの投げ方、捕り方、バットの握り方、構え方。
 すんなり出来る人、なかなかできない人、いろいろだが、全員が真剣に取り組んでいた。
 試験休みに突入すると、高校生組は祐麒が到着する前に自主練習すらしていた。
 練習のやり過ぎが原因で肩を壊した祐麒は慌てて練習時間の上限を言い渡すが、こっそりと練習していたようだった。
 全員から祐巳を助けたいという思いがひしひしと祐麒に伝わってくる。
 その思いに祐麒も応えようと決意をして、翌日、小笠原邸に向かった。

「あの、これを使ってくれませんか?」

「これは?」

 それは祐麒が肩を壊すまで愛用していたグローブだった。

「僕はもう野球をする事が出来ませんし、皆さんと一緒に行くこともできません。でも、祐巳を助けたいという思いは一緒です。ですから、せめて僕の気持だけでも連れて行ってくれませんか?」

「でも、それは大切なものなのでしょう。これをお借りしてもいいの?」

 祥子さんが聞く。

「ええ。道具は使ってもらうためにあるものです。誰かに使ってもらえるのであれば、グローブだって喜びます」

 祐麒がそう言うと、祥子さんがそっと両手で受け取った。

「ありがとう、祐麒さん。大切に使わせていただくわ」

 そう言って祥子さんは祐麒のグローブをはめた。
 二週間はあっという間に過ぎていった。

 ◆◇◆

 大正十四年八月十五日。

「祐巳ーっ!」

「……」

「祐巳ったらっ!!」

 ──ボコン!

 祐巳の頭に球が当たって引っくり返る。

「大丈夫、祐巳?」

 隣で守っていた静さんが声をかけてくる。

「ん? あ、ああ」

 祐巳は慌てて起き上る。

「祐巳、体調が悪いようなので、今日はこのくらいにして休みなさい」

 ノックをしていたミス・アンナがいい渡す。

「そんなことは」

「ここにいられると、こちらが困るのです」

 そこまでいわれて、ここに居残ることはできない。すごすごと祐巳は戻っていく。

「祐巳は風邪でも引いたのかしら?」

「さあ?」

 一同が祐巳の元気のない背中を見送る。

「このぶんじゃ、祐巳は試合には出せないわね」

 乃枝さんが首を振る。

「前回の試合、当たってたのに」

 小梅さんががっかりしたように言う。

「祐巳も心配ですが、私たちはもう少しやらなくてはいけません。午後からは明日に備えて休みましょう」

 にっこりと笑うミス・アンナに促され、全員が守備位置に着く。
 祐巳のいた二塁に鏡子さんが入り、外野中堅から胡蝶さんが一塁に戻って、練習が再開される。

(お姉さまと、戦う……)

 現在、祐巳の頭にはそれしかなかった。運命の試合は明日である。

【No:3211】へ続く


【マリア様がみてる派へのフォロー】
北見弘一(きたみこういち):朝香中のキャッチャー。朝香中との試合前に乃枝がランデヴーした相手。紳士的だが、「うかつな料理を出すと二度と来てくれない真剣勝負の客(小梅)」タイプ。『大正野球娘。4』から想像すると『すず川』にビフテキを食べに来た集団にいてもおかしくはない。

柳一馬(やなぎかずま):浅黄中のファースト。朝香中との試合前に巴がランデヴーした相手。頭の回転が速く、世相に通じてもいる。高原の態度には腹を立てている模様。『大正野球娘。4』から想像すると『すず川』にビフテキを食べに来た集団にいてもおかしくはない。

紀谷三郎(きたにさぶろう):『すず川』で働く料理人。洋一郎に気にいられ、小梅の許嫁になる。桜花会で料理がらみのイベントが発生するとその腕をふるっている。小梅一筋。彼の耐え忍ぶ姿はまさに男ヒロインである。

【大正野球娘。派へのフォロー】
水野蓉子(みずのようこ):某大学の法学部に通っている。「平均的な美少女」(聖談)妹は小笠原祥子。作中では突拍子がなくお茶目な一面もあるのだが、真面目な優等生キャラで通っている。周りの人のため奔走するが報われることはあまりなく、また、本人もそれに気づいているようなのだが、それでも奔走する姿が崇高なのある。

佐藤聖(さとうせい):高等部の隣にある系列の大学に通っている。アメリカ人のような顔の日本人。妹は二学年下の藤堂志摩子。抱きつき魔(対象は主に祐巳と乃梨子)でやられる方はたまったものではない。後輩たちをいつも優しく見守っていて、いざという時には頼りになる。『マリみて』のキスシーンを一手に引き受ける。

鳥居江利子(とりいえりこ):美大に通っている。美人だが、聖曰く「でこちん」。妹は支倉令。大概のことは努力なしに人並み以上にこなす。暴走モードの印象が強烈なうえ、由乃のせいでかなり無茶な人扱いされているが、本当はクールな優等生であり、暴走モードを知らない志摩子しか優しい先輩扱いしてくれない。

柏木優(かしわぎすぐる):蓉子たちと同じ学年で大学生。優の母と祥子の父が姉弟、優の父と瞳子の母が兄妹で、二人とも従姉妹にあたる。成績優秀、スポーツ万能、ハンサム、何でもできるが、初登場時の印象が強いために作中でのイメージは「一々気に障る」(蓉子)「ギンナン王子」(聖)顔忘れた(江利子)と散々である。

福沢祐麒(ふくざわゆうき):祐巳の弟。誕生日の関係で年子だが同学年、瓜二つの容姿からアニメ公式資料にすら双子と間違われた。肩を壊して野球が出来なくなった。現在の花寺学院生徒会長。その人柄は作中のみならずファンからも支持され、スピンオフ作品『お釈迦様もみてる』の主人公に出世した。


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