【3237】 ハートフルがポイント  (福沢家の人々 2010-08-01 17:31:14)


「ねこ耳祐巳の冒険(仮)」

「ごきげんよう」

「ごきげんよう」

 さわやかな挨拶が、澄みきった青空にこだまする。

 マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。

 汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。

 スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。

 もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。










 そして









 放課後のリリアン女学園高等部体育館

 今ここで、とある集団による集会が行われていた。

 リリアン生の大半が集まっている、ねこ耳、ねこのしっぽを着けて。

 ステージの真ん中に立つ1人の少女。

 中指を立て右腕を堂々と真上に掲げ叫んだ。




「我が生涯に一片の悔い無し。」




 シ〜ン




「い、いっぺんやってみたかったの・・・てへ。」

「・・・・・・。」

「・・・コホン・・・失礼。改めて。」




 ここ、放課後のリリア・・・っておい!

 省略。省略。




 ステージの真ん中に立つ、白いリリアンの制服、ねこ耳、ねこのしっぽを着けた少女が1人。

 人差し指を立て右腕を高々と掲げて叫んだ。




「うにゃ〜」

 集ったリリアン生も負けずに。

「うにゃ〜」




 少女が叫ぶ。

「諸君、我々はねこが好きなのだ〜。」

「うにゃ〜」

「異な、正確には、ねこ耳、ねこのしっぽ、および、ねこのパーツが生み出す、うにゃ〜で、はにゃ〜で、アレな感触、感性、キャラクター性が、大好きだ。」

「うにゃ〜」

「いや〜あ、それでは足りない、愛している、ラブしている、L・O・V・E、を、I・N・G、している〜」

「うにゃ〜」

「しか〜し!我々は、騙る偽者だ、偽者で満足するしかなかったのだ。」

「うにゃ〜」

「それは何故か、それは我々が猿から進化した生物であるが故にだ〜」

「うにゃ〜」

「これは、呪いだ。」

「うにゃ〜」

「しかし、先日、我々の上に福音が現れた〜。」

「うにゃ〜」

「見よ」




 ステージスクリーンに、映像が映し出される。

 ねこ耳を生やした紅薔薇のつぼみこと、福沢祐巳

「本物のねこ耳。」




 ねこ耳、ねこのしっぽを着けた少女達が。

「うぉ〜・うにゃ〜・うぉ〜・うにゃ〜」




 ねこのしっぽを生やした祐巳の映像がアップに・・・。

「ねこのしっぽだ〜。」

「うにゃ〜」

「すばらしい〜なんたるマリア様の采配、マリア様のお慈悲、運命の偶然のような必然。」

「うにゃ〜」

「まさに、求めるものは救われる。」

「うにゃ〜」

「我々の前に本物のねこ耳少女が現れるとは〜。」

「うにゃ〜」

「ここに、私は宣言する。」

「うにゃ〜」

「我ら、ねこ耳姉妹子猫の足裏は、この人物を真の教祖としてお迎えし崇める、これより、作戦名 うにゃ〜君 を発動する。」

「うにゃ〜」




 少女が、右腕を高々と掲げ叫ぶ。

「うにゃ〜」

「うにゃ〜」

「うにゃ〜」


 終わる事なきシュプレキコールが・・・。








 2日前の早朝、祐巳は、自宅洗面所、鏡の前で呆然としていた。

 頭の上に、アレがピョコンっと。

「な、なによ〜これにゃ〜。」

 慌てて、両手で口元を押さえる。









一つ戻る   一つ進む