「ねこ耳祐巳の冒険(仮)」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
さわやかな挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
マリア様のお庭に集う乙女たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、白いセーラーカラーは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。
そして
放課後のリリアン女学園高等部体育館
今ここで、とある集団による集会が行われていた。
リリアン生の大半が集まっている、ねこ耳、ねこのしっぽを着けて。
ステージの真ん中に立つ1人の少女。
中指を立て右腕を堂々と真上に掲げ叫んだ。
「我が生涯に一片の悔い無し。」
シ〜ン
「い、いっぺんやってみたかったの・・・てへ。」
「・・・・・・。」
「・・・コホン・・・失礼。改めて。」
ここ、放課後のリリア・・・っておい!
省略。省略。
ステージの真ん中に立つ、白いリリアンの制服、ねこ耳、ねこのしっぽを着けた少女が1人。
人差し指を立て右腕を高々と掲げて叫んだ。
「うにゃ〜」
集ったリリアン生も負けずに。
「うにゃ〜」
少女が叫ぶ。
「諸君、我々はねこが好きなのだ〜。」
「うにゃ〜」
「異な、正確には、ねこ耳、ねこのしっぽ、および、ねこのパーツが生み出す、うにゃ〜で、はにゃ〜で、アレな感触、感性、キャラクター性が、大好きだ。」
「うにゃ〜」
「いや〜あ、それでは足りない、愛している、ラブしている、L・O・V・E、を、I・N・G、している〜」
「うにゃ〜」
「しか〜し!我々は、騙る偽者だ、偽者で満足するしかなかったのだ。」
「うにゃ〜」
「それは何故か、それは我々が猿から進化した生物であるが故にだ〜」
「うにゃ〜」
「これは、呪いだ。」
「うにゃ〜」
「しかし、先日、我々の上に福音が現れた〜。」
「うにゃ〜」
「見よ」
ステージスクリーンに、映像が映し出される。
ねこ耳を生やした紅薔薇のつぼみこと、福沢祐巳
「本物のねこ耳。」
ねこ耳、ねこのしっぽを着けた少女達が。
「うぉ〜・うにゃ〜・うぉ〜・うにゃ〜」
ねこのしっぽを生やした祐巳の映像がアップに・・・。
「ねこのしっぽだ〜。」
「うにゃ〜」
「すばらしい〜なんたるマリア様の采配、マリア様のお慈悲、運命の偶然のような必然。」
「うにゃ〜」
「まさに、求めるものは救われる。」
「うにゃ〜」
「我々の前に本物のねこ耳少女が現れるとは〜。」
「うにゃ〜」
「ここに、私は宣言する。」
「うにゃ〜」
「我ら、ねこ耳姉妹子猫の足裏は、この人物を真の教祖としてお迎えし崇める、これより、作戦名 うにゃ〜君 を発動する。」
「うにゃ〜」
少女が、右腕を高々と掲げ叫ぶ。
「うにゃ〜」
「うにゃ〜」
「うにゃ〜」
終わる事なきシュプレキコールが・・・。
2日前の早朝、祐巳は、自宅洗面所、鏡の前で呆然としていた。
頭の上に、アレがピョコンっと。
「な、なによ〜これにゃ〜。」
慌てて、両手で口元を押さえる。