修学旅行イタリアからの帰り。
機内が慌ただしくなり、何事かと見ていると客室乗務員が言った。
「お客様の中にお医者さまはいらっしゃいますか?」
はい、と一人が名乗り出ると案内される方へ向かった。
実際にこんな事あるんだ。と祐巳が感動しているとまた慌ただしくなり、客室乗務員が言った。
「お客さまの中に剣道をなさる方はいらっしゃいますか?」
「一応」
と由乃さんが名乗り出ると案内される方へ向かった。
友達がそういう事になるなんて、と感動しているとまた慌ただしくなり、客室乗務員が言った。
「お客さまの中にカメラマンはいらっしゃいますか?」
「アマチュアですが」
と蔦子さんが名乗り出ると案内される方へ向かった。
またそんな事にと思っているとまたまた慌ただしくなり客室乗務員が言った。
「お客さまの中にお経を唱えられる方はいらっしゃいますか?」
無言で真っ赤になった志摩子さんが名乗り出る。
お経唱えられるんだ、と見送っているとまたまたまた客室乗務員が言った。
「お客さまの中にオニギリの大食いに自信のある方はいらっしゃいますか?」
「多少は」
藤組の、環さんといったか、彼女が名乗り出る。
特技のある人は大変だな、と思って見送った。その点、特技のない祐巳は自分は呼び出されないだろうと安心していた。
しかし、次の客室乗務員の言葉はそれを否定し、祐巳は名乗り出ることになった。
「お客さまの中に安来節を踊れる方はいらっしゃいますか?」