【328】 不条理な出来事山百合プロデュース必殺技  (くま一号 2005-08-08 23:23:15)


これは、琴吹 邑さんが書かれた、【No:306】 横槍を入れるシチュエーション の続きです。

 可南子ちゃんが帰っていくのを呆然と見送って、瞳子ちゃんが立ちつくしている。
ここはもう一押しね。
「ごきげんよう、瞳子ちゃん。」
「あ、ご、ごきげんよう白薔薇様。」
「聞いていたわ。振られちゃったわね。」

「あの、あの、白薔薇様も乃梨子さんも何を考えていらっしゃるかわかりませんわ。」
本当に困ったように訴える瞳子ちゃん。ふーん、だいぶ素の瞳子ちゃんが出てきたわね。

「カンタンなことよ。今の祐巳さんに瞳子ちゃんは渡せないわ。」
「だからといって、乃梨子さんのお気持ちはどうなるんですか。」
「納得してるって言ったでしょう? 嘘じゃないわよ。」

「乃梨子さんが納得するわけないじゃありませんかっ!」
「あなたも、かわら版の読者と同じなのかしら?」
ちゃらり、と腕に巻いてあるロザリオを上げてみせる。

「乃梨子に貸してあげたロザリオ、あなたに又貸ししたってぜんぜん構わないわよ。」
「そんな無茶な!」
「無茶じゃないわ。このロザリオをあなたの首にかけたとするわね。そうしたら私の妹はだれ?」
「・・・・・・乃梨子さん、ですわ。」
「正解。」

 志摩子はロザリオを外して、瞳子の首にかけた。
「でもね、その正解がわかっていない祐巳さんだったら、瞳子ちゃんは渡さない。」
「白薔薇様・・・・・・・。」
「姉一人妹一人の姉妹でなければいけないって、ただの習慣よ。祐巳さんがわからずやのままだったら、妹二人だってかまわないわ。」
「それこそ、無茶です、白薔薇様。」
「それくらいの無茶をしなければ、乃梨子が泣くわ。」
「え?」
「あなたのために泣いてくれる人たちがみんな後押ししてる。大丈夫よ。」
「白薔薇様、ありがとうございます。でも、そんなお芝居みたいなことしなくたって、瞳子は」
「芝居だと思ってるの? 本気よ。」
「まさか。」
「妹二人っていうのも、ほんとに本気よ。覚悟していらっしゃい。」
「は・・・・・。」

「それじゃ、ごきげんよう。瞳子ちゃん。」
「ご・ごきげんよう、白薔薇様」

 さらに呆然とした瞳子を残して、志摩子が去る。


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