【3281】 凄い人気と人望案外人見知りなの  (ex 2010-09-08 20:58:51)


「マホ☆ユミ」シリーズ   「祐巳と魔界のピラミッド」 (全43話)

第1部 (過去編) 「清子様はおかあさま?」
【No:3258】【No:3259】【No:3268】【No:3270】【No:3271】【No:3273】

第2部 (本編第1章)「リリアンの戦女神たち」
【No:3274】【No:3277】【No:3279】【No:3280】【No:これ】【No:3284】【No:3286】【No:3289】【No:3291】【No:3294】

第3部 (本編第2章)「フォーチュンの奇跡」
【No:3295】【No:3296】【No:3298】【No:3300】【No:3305】【No:3311】【No:3313】【No:3314】

第4部 (本編第3章)「生と死」
【No:3315】【No:3317】【No:3319】【No:3324】【No:3329】【No:3334】【No:3339】【No:3341】【No:3348】【No:3354】
【No:3358】【No:3360】【No:3367】【No:3378】【No:3379】【No:3382】【No:3387】【No:3388】【No:3392】

※ このシリーズは一部悲惨なシーンがあります。また伏線などがありますので出来れば第1部からご覧ください。
※ 4月10日(日)がリリアン女学園入学式の設定としています。

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☆★☆ 4月18日(月曜日) ☆★☆

「ごきげんよう」
「ごきげんよう」

 危機保安レベル靴継続中の東京都下。
 リリアン女学園では、新体制となって初めての登校日となる。

 リリアンのマリア様の前でお祈りをする3人の生徒。

 ロサ・キネンシス=水野蓉子と、ロサギガンティア=佐藤聖、そして・・・

「まぁ、紅薔薇様と白薔薇様に挟まれてるあの方は・・・」
「福沢祐巳さんです。ロサ・キネンシス・アンブゥトン・プティスール。今年の一年生総代です」
「あぁ、先週剣術訓練で、12人掛かりを軽くいなしたという・・・」
「思ったより、可愛らしいですわ」
「可愛らしくて、強くって・・・素敵ですわね」

 こちらを眺めて噂しているのは、3年生のリーダーに引き連れられたグループのようだ。

「さすがに、ロサ・キネンシスと、ロサ・ギガンティアが一緒だと、目立ちますね〜」
 恥ずかしそうな祐巳。
「だんだん、慣れてくるわよ」
「そうそう、わたしたちも、ブゥトンやプティスールの頃は、同じように思ったもんだよ」
「はぁ、そういうものですか・・・」

 蓉子が、噂話をしているグループに近づいて声をかける。

「ごきげんよう。ちゃんと小隊6名で登校できてるわね」
「はい。リリアンの信頼をなくすわけには参りませんから」
 力強い小隊のリーダーの言葉。

 蓉子は、嬉しそうに頷く。
「下級生の安全のためにがんばってね。それでは、ごきげんよう」



 蓉子、聖、祐巳の3人がマリア様の前で一緒にお祈りをしていたのは、訳がある。

 日曜日の買い物のとき、結局一人暮らしの祐巳を心配した蓉子が、

「どうしても、祐巳ちゃんのおうちにお泊りする!」 といって聞かない聖と共に福沢家に泊まったのだ。

 支倉令、島津由乃は自宅と学校が近い。 江利子も同様である。

 祥子も泊まりたかったに違いないが、小笠原家の娘が外泊するのはそれなりに難しい。

 『ロサ・ギガンティアひとりが祐巳の家に泊まるのは危険です』 と、祥子が泣いて頼むので、蓉子も祐巳の家に泊まることになった。
 ・・・・・・魔物より、聖のほうを危険視しているのは、明白だったが。

 結局、買い物の最後は、お布団一式をはじめほぼ引越しと同じような買い物になり、宅配業者を手配することになった。

「レベル群鮟まで、同居することになりそうね」
「祐巳ちゃん、よろしくね」 聖はとても嬉しそうである。

 (祐巳ちゃんと、蓉子、両手に花だ〜) 危ない薔薇様である。



「お姉さま、ロサ・ギガンティア、ごきげんよう」
 そして祐巳を見つめ、「祐巳、ごきげんよう」 にこやかに笑いながら祥子が近づいてきた。

「「ごきげんよう、祥子」」 
「ごきげんよう、お姉さま」

 祥子の後ろには30名ほどの生徒が続いている。

「祥子、早朝からごくろうさま。乗り物に弱いのに無理を言ってごめんなさいね」
「いえ、これくらい・・・それに山村先生、鹿取先生と、中等部の青田先生もこのバスを利用されるということで、心強かったです」

 緊急連絡体制や、集団での登校を決めたとき、どうしても他の生徒と通学路の違う生徒が30名ほどいた。
 このことを解決するため、スクールバスをだして、そのような生徒の自宅を巡回。
 巡回の途中に自宅のある教師3名を乗せながらリリアンまできた。
 その警備責任者が小笠原祥子だった。

「「「ごきげんよう、薔薇様方」」」
「「「ごきげんよう」」」
「ごきげんよう、水野さん、佐藤さん、それと、福沢さんね。たいへんだけどしっかりね」
 蓉子たちの横を、30名ほどの生徒と3名の教師が過ぎていく。

「ごきげんよう、祐巳さん」
「あ、ごきげんよう、志摩子さん。志摩子さんもこのバスだったんだ」
「えぇ、うちは遠いから、皆さんに迷惑をかけて申し訳なかったわ」

 志摩子の家は、リリアンの生徒の中でも特に遠距離で、志摩子のために30分ほど遠回りになる。

「このまま、レベル靴長引くと、休学するしかないかも・・・」 志摩子は寂しそうである。
「えっ!志摩子さんが学校に来なくなるなんて嫌だよ!」 祐巳も悲しそうな顔になる。

「ごきげんよう、あなたが藤堂志摩子さんね」
「はい、ロサ・キネンシス。ごきげんよう」
「なるほど・・・ねぇ」 蓉子が訳知り顔で頷く。

「ごきげんよう、祐巳ちゃんのお友達?」 聖が近づき、志摩子の顔を見る。

「あ・・・あなた」 聖の顔が一瞬こわばる。
「桜の・・・桜の木のところであったわ」

「ごきげんよう・・・ロサ・ギガンティア」  聖の涼しげな瞳をまぶしそうに見ながら志摩子が挨拶する。
「あれ?志摩子さん、お知りあいだったの?」
「ううん。でも薔薇様だし」

「ロサ・ギガンティア」 祐巳が聖を見上げて言う。
「藤堂志摩子さんです。私と同じ一年桃組で、私の始めてのお友達です」

「あ・・・ありがとう、祐巳ちゃん。そう、あなたが・・・」
 普段と違う聖に、祐巳も少し驚いた。



 お昼休みの薔薇の館。

 山百合会メンバーのうち、蓉子、聖、祥子、祐巳の4人に、ひとり来客。
 藤堂志摩子である。

「さ、いろいろ話もあるけど、先にお弁当を食べてしまいましょう」
「はい」
「主、願わくは我らを祝し、また主の御惠によりて我らの食せんとするこの賜物を祝したまえ・・・・・・」
 祐巳(巫女)と、志摩子(お寺の娘)が声をそろえてカトリックのお祈りをする。
 蓉子と、聖、祥子もそれに続き、「アーメン」と唱えてお祈りを終了。 ・・・不思議な光景かも。

 祐巳は、先週まではミルクホールで昼食を買っていたのだが、今日は蓉子、聖が一緒だったのでお弁当を作ったのだ。
 それに、朝早くから警備責任者として働いた祥子にも、
「お姉さまの分もしっかり作ってきます。楽しみにしておいてくださいね」 と作ってきたのだ。

 4人全員同じお弁当。
「祐巳、おいしいわ」
「ほ〜んと、祐巳ちゃんって料理上手だね〜」
「ありがとうございます」 嬉しそうに笑う祐巳。

「みんなで食べるから、おいしいんですよ〜」
「そうね。こんなにお弁当をおいしく食べるのは久しぶりだわ」

「うわ〜。志摩子さんのお弁当、綺麗!」
「え〜、どれどれ? ほ〜これはすごい。でも、和風だね〜」
「ちょっと意外な感じ。志摩子さんって、サンドウィッチとか似合いそうなのにね」
「人は見かけによらないね」

 (祐巳さんがいると、緊張する空間なんてなくなるのかもしれないわね)

「志摩子さんもそう思うでしょ? 祐巳ちゃんってすごいわよね」 と、蓉子が志摩子を見ながら言う。

 (心を読まれた?!) 志摩子が驚く。

「あなたも祐巳ちゃん同様、顔に出やすいわね」 蓉子は楽しそうに笑った。



 祐巳が志摩子を薔薇の館に連れてきた理由は、
 一緒にお弁当を食べ、このあと一緒に剣術の武道場に行くから、ということもあるが、

「ロサ・キネンシス、志摩子さんのお家、遠いんです。通学も大変で・・・
 レベル靴隆屬世韻任癲△匹Δ砲なりませんか?」
 祐巳は、休学するかもしれない、という志摩子をなんとか説き伏せたかった。

「志摩子さんだけを特別扱いにするのも・・・
 でも、30分も他の生徒の通学時間が長くなるのも考えものね」
 蓉子も考え込む。

「一つだけ、解決方法はあるんだけど・・・・・・」

「え!いい考えがあるんですか?!」 祐巳が歓声を上げ、尊敬の目で蓉子を見る。

「志摩子さん、あなた、下宿する気はある?」
「下宿・・・ですか。 考えたこともありませんでした」
「では、考えてみて頂戴。 下宿する気があるのなら、いいところを紹介するわよ」
 蓉子がいたずらっぽく笑った。

「両親にも相談してみないとなりませんので、明日まで待ってもらえますか?」
「志摩子さん・・・。学校を休学するなんていわないでね」
「わかったわ、祐巳さん。 わたしも祐巳さんとはなれたくないし、両親を説得してみるわ」
「うん、許してもらえるといいね」 
 祐巳は志摩子の手を握り
「ロサ・キネンシス、ありがとうございます」 蓉子を見ながらお礼を言った。

「あら、お礼を言われるのはおかしいわ・・・・だって、紹介するところって祐巳ちゃんの家だもの」

「「「ええ〜〜〜〜っ!!」」」
 蓉子さま、ほんとうに驚かせてくださいます。

「だって、わたしも聖も、ずっと祐巳ちゃんの家に泊まるわけには行かないわ。
 志摩子さんが一緒だと安心なんだけど・・・どう?」

「そうですね・・・・・・。うん、志摩子さん、OKもらえるといいね!」



「それと、志摩子さん」
「はい」
「いま、薔薇の館には、紅薔薇姉妹3人、黄薔薇姉妹3人、白薔薇1人しかいないの」
「はい」
「この・・・」 と聖を見ながら、
「ロサ・ギガンティアが、妹を作らないから少し手が不足しているの。
 下宿をすることになったら祐巳ちゃんと一緒に帰ることになるから、それまでの時間でいいわ。
 下宿している間、お手伝いをしていただきたいのだけど。
 ・・・・・・もちろん、ロサ・ギガンティアの妹になれ、とか言わないわよ」
「わかりました。わたしでよろしければお願いいたします」

 わぁ、と嬉しそうな祐巳。
「志摩子さん、ずっといっしょだね!」

「祐巳」
「はい、お姉さま」
「志摩子さんに、あまり迷惑をかけるんじゃないわよ」
「祥子ったら・・・素直に『祐巳をよろしく』って言えばいいのに」
「なぁに? 祥子、志摩子さんに嫉妬してるの〜?」
「そ・・そんなんじゃありません! ただ、わたくしは祐巳のことが心配で・・・」
「はい、はい」
 やはり薔薇様には、いくら祥子といえど勝てそうもない。

「あはは・・・、あ、それではお姉さま、午後の授業が始まるので、これで失礼します。
 志摩子さん、行こう!」
「ちょっと待って、祐巳。わたしも、もう出るわ」
 祐巳が祥子の腕に手を回し、反対の手で志摩子の手を引いて出て行く。
「ごきげんよう、薔薇様方」 祥子、祐巳、志摩子の3人が並んでペコリと挨拶をしてビスケット扉を閉めた。



「蓉子・・・・・・。 あなたねぇ」
「えぇ、わかっているわ。 おせっかいだって。 でもね、聖。 江利子も私もあなたのことが心配なのよ。
 それにね、今は、祐巳ちゃんがいる」
「うん」
「あの子がいれば、あなたは変われる。 どう、楽になっているでしょう?」
「あぁ、わかっているよ。 祐巳ちゃんはすごい。 何も言わないでも私の心を軽くしてくれる。」
「だからね、あの子がここにきても、あなたは大丈夫。 わたし、あの子たちの様子を見て確信したわ」
「なにを?」
「うふふ、これ以上言ったらぶたれそう。 でも、今のあなたなら安心よ」
「わかった。 蓉子がそういうんならきっとそうだね」
「そうよ。 ロサ・ギガンティア・アン・ブゥトン」
「ありがとう。 ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン」

 ふたりは、先月までお互いを呼び合っていた称号を口にし、話を締めくくった。
 それは、「まだまだお互い、大人になれないね」の自嘲だったのか・・・

(聖・・・・・・、やっぱり私はあなたのことが好きなのね・・・)

 蓉子のこころの声は、誰にも届かない。



 午後の授業の20分ほど前。
 島津由乃は、『闘武場』にきていた。

 訓練開始までにはまだ時間があるが、格闘部門の生徒たちはそれぞれ柔軟体操などを行うため、すでに闘武場に揃っていた。
 レベル靴龍枋ゴ兇如◆屬い討發燭辰討發い蕕譴覆ぁ廖,函体を動かしたい生徒ばかりだ。

「一週間遅れのスタートですが、よろしくお願いいたします」

 由乃は祐巳のアドバイスに従い、体術を身につけるため闘武場での格闘訓練を受けるためにここにきた。

「由乃さん、よろしくね」
「心臓のほうは大丈夫なの?」
「うん、手術後の経過はいいの。でも格闘は素人なので、これからビシビシ鍛えてください」
「わかったわ。一緒にがんばりましょう!」

 同級生の間では、由乃の心臓病は有名だった。
 それだけに、病気を克服し、格闘の場に身をおく決心をしたことに、驚き、その勇気に感心したのだ。
 由乃の周りに、歓迎と励ましの言葉が飛び交う。

「でも、由乃さんみたいに可憐なお嬢様、って人が格闘に来るとかちょっと意外」
「そうね、魔法か弓道、って感じなのに」

「これでも、本当は剣術したかったんだ〜。家の隣が支倉道場でしょ。剣術するには最高の環境だもの」
「あら、支倉道場なら体術もすごく強いわよ?」

 同級生の何気ない一言に、驚きの顔をする由乃。
「剣道の道場なのに、体術も強いの?」

「打つ、組む、投げるは古流剣術の支倉流では基本よ。武士は刀がなければ何も出来ない、とか思ってたの?」
「そうそう、ここにいるメンバーの2〜3割は支倉道場の門下生よ」

「いや、竹刀を振り回してるイメージしかなくって・・・」

「由乃さんも、支倉道場で自主練すれば? 令さまに教わればきっとすぐに上達するわよ」
「令さまの『震脚』からの『衝撃手』は、並みの格闘家では勝てないわ。
 剣術と体術の総合的な近接戦闘能力なら、聖さまと令さま、タメを張るわね。」

「わかった、アドバイスありがとう!」
 (も〜〜〜〜!令ちゃんったら! 昨日そんな事、言わなかったじゃないの!)

 令は由乃が体術をする、ということだけで頭がいっぱいでそれどころではなかった、というのが実情であるが。

 予鈴が鳴り、格闘部門の教官である鹿取先生が闘武場に姿をあらわす。

 新学期からの教え子たちに模擬戦の準備するよう指示した後、由乃のもとにきた。

「島津さん、ようこそ。格闘は厳しいわよ」
「はい、覚悟しています!」
 キッ!と由乃が鹿取先生を見上げる。

「うふふ、いい眼ね」
 鹿取先生は嬉しそうに笑う。

「じゃ、最初は柔軟運動と筋トレね。 地道な訓練だけどこれを乗り越えなければ格闘なんて出来ないわ」
 格闘技担当の鹿取教官により独自メニューが組まれ、由乃の格闘家としての一歩がスタート。

「では、格闘模擬戦、開始!」
 鹿取教官の号令のもと、戦闘訓練をする同級生たちを横目に、黙々とトレーニングを続ける由乃。

(いまに見てらっしゃい! この場でトップになってやるんだから!)

 由乃の燃え盛るような闘気はいささかも衰えることはなかった。



 この日の夜、志摩子は両親に下宿することを願い出た。
 両親は、下宿先が福沢家であることを知ると少し驚き・・・何も言わず許可をしてくれた。

 こうして、祐巳の家で、祐巳と志摩子の同居生活が始まる。

 もちろん、蓉子と聖が交代で二人の安全を守るため、福沢家に泊まることになった。

「祐巳ちゃん、これから毎朝5人分のお弁当、お願いね」

「え〜〜〜〜〜〜!」

 やっぱりこの世は無常である。
 祐巳は「あの・・・食料費が厳しいんですが・・・」と泣き言をいい、小笠原家から大量の食材が届いたのも、またお約束。

 ついでに冷蔵庫まで運び込まれたのには
「祥子・・・いいかげんにしなさい!」 と蓉子さまの雷が落ちたとか。


☆★☆ 次回予告 ☆★☆
 江利子さんのおはなしと、祐巳ちゃんと志摩子さんの戦闘シーンがあります。


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