【3294】 そして動き出す時  (ex 2010-09-20 22:07:05)


「マホ☆ユミ」シリーズ   「祐巳と魔界のピラミッド」 (全43話)

第1部 (過去編) 「清子様はおかあさま?」
【No:3258】【No:3259】【No:3268】【No:3270】【No:3271】【No:3273】

第2部 (本編第1章)「リリアンの戦女神たち」
【No:3274】【No:3277】【No:3279】【No:3280】【No:3281】【No:3284】【No:3286】【No:3289】【No:3291】【No:これ】

第3部 (本編第2章)「フォーチュンの奇跡」
【No:3295】【No:3296】【No:3298】【No:3300】【No:3305】【No:3311】【No:3313】【No:3314】

第4部 (本編第3章)「生と死」
【No:3315】【No:3317】【No:3319】【No:3324】【No:3329】【No:3334】【No:3339】【No:3341】【No:3348】【No:3354】
【No:3358】【No:3360】【No:3367】【No:3378】【No:3379】【No:3382】【No:3387】【No:3388】【No:3392】

※ このシリーズは一部悲惨なシーンがあります。また伏線などがありますので出来れば第1部からご覧ください。
※ 4月10日(日)がリリアン女学園入学式の設定としています。

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☆★☆ 5月14日(土曜日) 後半 ☆★☆

「うぁぁっぁぁっぁぁぁぁ!! 許せないっ・・・! 許せないっ・・・!! 許せないっ・・・!!!」 
 祐巳の体が怒りに震える・・・

「どうしてっ! どうしてわたしは守れない!!」

 真紅の覇気が祐巳の体から立ち上る・・・
「アカシャアーツ!!」
 拳闘士隊隊長の得意技であったアカシャアーツを祐巳も身に纏う。

 可視化した覇気の流れで髪の毛がバサバサと揺れる。 髪のリボンが吹き飛ぶ・・・。
 ブチッ・・・微かな糸のちぎれる音。
 祐巳の手首に巻いていたミサンガが弾け飛ぶ。

 左手に握った『フォーチュン』が黄金の光を放つ

 右手に持っていた金剛杖が、祐巳の握力に耐え切れなくなって真ん中から爆ぜる。

「ハーーーーーッ!!」
 一声奇声を発した祐巳は、ゲート周辺に居るオルトロスとキマイラの群れに突っ込んでいく。

「無茶だ!!」 「やめろ!!」 後方で騎士団員が悲痛な声で叫ぶ。

(わたしは・・・弱い!!)
 祐巳は一番手前に居たオルトロスの額に正拳を叩き込み、無残に砕く。
 その勢いのまま体を回転させ、キマイラの首を足刀でなぎ払い空に舞わせる。

(守りたいものも・・・守れない!!)
 着地と同時に回転させた体がオルトロスの背骨を砕く。
 左手に握った細い魔杖がレーザーメスのようにキマイラの首を跳ね飛ばす。

 まるで・・・魔神のような動き。
 もはや、騎士団員の動体視力をしても祐巳の動きを追えるものは居ない。

「急いで装置を作動させろー!!」
「今のうちに、ゲートを塞げー!!」
 異空間操作装置が据えられ、魔術騎士が操作を始める。

 異空間操作装置の前には、紅の薔薇が花弁を散らすように魔物たちの血飛沫が上がる・・・
 目にもとまらぬ動きで次々と魔物を屠っていく祐巳。

「すごい・・・。 なんて動きだ・・・」
「目で追えない! リリアンの戦女神・・・。 聞きしに勝るっ!!」

 すでに、装置に近づける魔物は居なくなっていた。

 異空間操作装置は順調に作動。
 ・・・異空間ゲートが次第に小さくなり・・・ついに消えた・・・

 奥のほうでも、歓声が上がっている。
 奥のゲートも封鎖が完了したのだ。

「終わったか?!」
「いや、まだだ! 残りの魔物が集結を始めている!」

 魔界と現世をつなぐゲートが無くなったことにより、現世に取り残された魔物が20数体集結しつつあった。

「あとは、あいつらだけだ!」
「いくぞ!!」
 魔術騎士団が集結した魔物に突撃をかけようとした瞬間・・・・
 騎士団の目の前を真っ赤な閃光が走る。

「マハラギオン!」 祐巳の高熱魔法!
 祐巳の手のひらの中で 『フォーチュン』 の宝石が真紅に輝く。

 真っ赤に燃え盛る高温の球体が光速で飛翔し、集結した魔物たちを覆い尽くす。

 グォォォォーーーン!と・・・次の瞬間、轟音と共に球体が爆ぜ魔物たちの体が吹っ飛ぶ。
 さきほどまでの祐巳の 「マハラギオン」 より数倍の威力を持ったその呪文。

「な・・・何が起こった?」
 目も開けていられない閃光が去ったとき、魔術騎士団員たちは信じられない光景を見る。
 直径10mにも及ぶクレーター・・・。
 すでに体の原形をとどめていない魔物やモンスターの残骸。

「お・・・・・終わった・・・・のか?」
「勝った・・・・! 勝ったぞーーーー!!」
 魔術騎士団員たちの勝利の咆哮が天にこだまする。



「あの子がやったのか?」
「フラロウスともやりあったあの子だ!」
「リリアンの戦女神・・・あの子がそうなのか?」
「信じられん・・・この数を一人きりで・・・」
「いったい何体いるんだ・・・」
「それに、さっきの魔法も、この子か・・・」

 先ほどまで異空間ゲートがあった場所にたたずむ祐巳を取り囲む魔術騎士たち。
 祐巳の周りは、二十数体の魔物やモンスターの死骸が転がっていた。
 祐巳は返り血を浴び、凄惨な姿で立ち尽くしている。
 まったく動こうとしない祐巳。

「君・・・大丈夫なのかい?」
 ひとりの魔術騎士が恐る恐る近寄り、声をかける。

「おいっ! 君っ!」
 祐巳の尋常でない顔色に気付いたその魔術騎士はあわてて祐巳の体を支える。

 祐巳は・・・立ったまま気を失っていた・・・。



 同時刻、I公園に続く吉祥寺通りを小笠原祥子と藤堂志摩子の乗った車が走っていた。
 祐巳が江利子の兄とI公園に飛び出した直後、志摩子は祥子に連絡を取り、二人でI公園に急いだ。

「志摩子、それで祐巳はロサ・フェティダのお兄さまと一緒にI公園にいったのね?」
「はい、騎士団本部で緊急警報が鳴って・・・・。
 必死で止めたんですが・・・・。祐巳さん、走ってでも行くって・・・」
「そう・・・。あなたでも止められなかったのね」
「すみません・・・」
 志摩子は引き止めることの出来なかった自分の力不足を祥子にわびていた。

「しかたない子ね。いったい、わたくしをいくら心配させる気なのかしら」
「あの・・・。祐巳さんの受け取った杖なんですが」
「あぁ、魔杖を一本いただける、ということだったわね」
「はい。それで、その杖はマイト・ワンドという種類の杖なのですが、名前が『フォーチュン』=『幸運』だって言ったんです。
 それで、警報が鳴ったときに、『杖が行こうって言ってる』って言ったんです」

「どういうことなの?」
「さっぱりわからないんです。 でも杖の言うことを聞くのがあの時は正しいことだ、と祐巳さんは思ったようです」
「杖の声が聞こえる? 意味がわからないわね」
「はい」
「それも、祝部の神通力の力なのかしら・・・。それともマイト・ワンドになにか力があるのか・・・」
「祐巳さんに聞けばわかるでしょうか?」
「そうね・・・。お母様に聞けばあるいは・・・」



 I公園の手前1km。

 祥子と志摩子の乗った車は、全面封鎖された道路で立ち往生していた。

 魔法・魔術騎士団の警備団員が祥子と志摩子を押しとどめる。

「この先は現在モンスターとの戦闘が行われています! 非常に危険ですので誰も通すことは出来ません!」
「この先に妹が居るんです! そこを退きなさい!」
「ダメです! 他のルートをおとおりください! この先は全面通行禁止です」

「埒が明かないわね・・・。 あなた、騎士団員ならこれはご存知よね?」
 祥子が手首に巻いた薔薇十字を見せる。
「それが何だというのですか。 何があってもお通しできません!」

「仕方ないわね・・・『ノーブル・レッド』」
 祥子の薔薇十字が顕現する。

「まさか・・・それは薔薇十字!! あなた・・・リリアンの『爆炎の淑女』、 小笠原祥子さんですか?」
「ええ、そうよ。 これでも通してくださらないかしら?」
「しかし・・・薔薇十字所有者がわれわれ騎士団と共に戦ってくださるのですか?」
「妹を守るためなの! さぁ、道を開けなさい!」

 その時、公園内のスピーカーから放送が流れる。
「ただいま、異空間ゲートはすべて封鎖した! 繰り返す、異空間ゲートはすべて封鎖した」
「死傷者多数。 医療班員は公園内C地点に至急集結せよ! 繰り返す、医療班員は公園内C地点に至急集結せよ!」

「祥子さま!」
「ええ、行くわよ、志摩子!」
「あっ!待ってください!!」
 騎士団員の制止を振り切り、駆け出す祥子と志摩子。

「祐巳!! 祐巳ーー!!」
「祐巳さーん!! 祐巳さーん!!」
 救急車のサイレンがなり、多数の救急隊員が公園内になだれ込む。
 必死の形相で祐巳を捜し求める祥子と志摩子。

(祐巳・・・無事でいて!!) 祥子は必死に祈りながら走っていた。



 この日の戦闘で、騎士団の損害は甚大だった。
 死者数、23名。 重傷者数、65名。 軽傷者、337名。
 戦闘に従事し、負傷していない団員は一人もいなかった。

 これまでに経験したことのない悲惨な戦闘。
 昨日まで、共に鍛え、共に笑った仲間がもう動かない。
 腕が引きちぎられ、足がつぶされ、内臓がえぐられた死体にシーツがかぶせられ、霊安室に運び込まれ安置される。
 生き残った者も、半身不随になった者、障害が一生残るひどい火傷を負った者など、目を背けたくなるようなひどい状態であった。

 I公園から2kmほど離れたK総合病院をはじめ、I公園の周辺の病院は騎士団員の苦痛のうめきで満ちていた。

 そして、現場に残された魔物やモンスターの死体を黙々と処理する騎士団員たち。
 悪臭と、汚物、この世のものとは思えない醜悪な獣面。千切れた四肢。
 破壊された異空間操作装置は黒煙を上げている。
 魔術騎士団の折れた剣、熱で溶けた弓。
 巨大な重機が運び込まれ、大型のトラックでそれらを運び出す。

 そして・・・騎士団員の遺体の一部であったものを大事に布にくるみ運び出す団員達の姿。

 現れた魔物のほとんどがC級の魔物、モンスターであった。
 オルトロス約100体。 キマイラ約70体。 パピルサグ約20体。
 D級のモンスターもスライムやグールが約10体ほど混じっていた。
 合計で約200体もの魔物が短時間でI公園に出現した。
 古今未曾有の大惨事であった。



 土曜日、夜7時のK病院の霊安室。
 鳥居家の家族は、長兄の亡骸の前で呆然と立ち尽くし悲嘆の涙に暮れていた。
 江利子の母は、遺体にすがりつき嗚咽を漏らす。
「母さん、この子は立派だった。わたしの自慢の息子だった・・・」
「兄さんは僕の誇りだった。 兄さんは僕らを守るために戦い続けたんだ・・・」

 普段は感情をめったに出さない江利子が目を真っ赤に泣き腫らし母の背中にしがみつく。
「兄さん・・・兄さん・・・」 あの江利子が弱々しく涙を流している。



 同時刻、K病院、最上階の個室には小笠原清子、祥子親子と志摩子が居た。
 ベッドに横たわっているのは祐巳。

 病院に運び込まれる間に怪我がないか診断を受けたが、特に外傷はなかった。
 救急治療に当たった医者は、
「ひどい衰弱です。 外傷はありませんが、筋繊維に炎症が認められます。また僅かですが断裂している可能性があります。 
 それと内出血を起こしている箇所もあります。 ただ信じられないことに切り傷などは一切ありません。
 この程度なら・・・そうですね。魔導医療薬を使用すれば一両日中にも完治するでしょう」
 驚きの顔で告げた。

 祥子は、病院に運び込まれると同時に祐巳の体についた返り血を洗い流した。

 ぐったりした祐巳は、騎士団員に抱きかかえられて祥子の目の前に姿を現した。
 祥子は、真っ青な顔で気を失っている祐巳を騎士団員と共に自ら抱きかかえてK病院まで走ったのだ。

 祥子は、ベッドで眠り続ける祐巳の手を握っていた。
 小さな手。
 冷たくなって、血の色が感じられないほど白くなった手。
 その左手には、『フォーチュン』
 祐巳は祥子がどんなに力を入れても『フォーチュン』を握り締めて放さなかった。
 『フォーチュン』の柄にはめ込まれたサーモンピンクの宝石は、ぼんやりとした光を放ちながら祐巳の手の中にある。

「お母様」 祥子が小さな声で母を呼ぶ。
「この杖のこと、何かご存知ですか?」 祐巳が握り締めたまま放さない杖のことを問う。

「ええ、知っているわ」 清子がつらそうに答える。
「なぜ、祐巳はこの杖を放さないのでしょう?」

「この杖はね・・・信じられないでしょうけど、木の精霊の意思が生き続けているの
 精霊はこの世を守護するもの。 そのために存在するの。
 祐巳ちゃんは、精霊に愛されているわ。
 祐巳ちゃんはだれよりも優しい。 精霊はそれに応えようとするの。
 でも・・・それは祐巳ちゃんにとって過酷なことだったわ・・・
 わたしはまた、間違えたのかもしれない・・・」

「祐巳さんは、この杖を『フォーチュン』=『幸運』と呼びました。
 杖が、そう名乗ったのだと。 祐巳さんに幸運をもたらす杖なのではないのですか?」
 志摩子が問う。

「祐巳ちゃんにとって幸運なのかどうか・・・
 『幸運』とは、この世の中の『幸運』を守るもの、という意味なの。
 この世の『幸運』を祐巳ちゃんは委ねられた・・・。 そういうことよ。
 それが、どんなに辛いことなのか・・・。 わたしは思い至らなかったわ」

「祐巳さんは、みんなの『幸運』が、じぶんの『幸運』だと思う人です。
 わたしは知ってます。 親友ですもの。
 祐巳さんは、なにがあってもこの『フォーチュン』をこの世のために使う人です」

「志摩子さん」 清子は驚いて志摩子を見る。
「あなたは、そこまで祐巳ちゃんを見てくださっていたのね」
「はい。 でも、清子さまも、祥子さまも、祐巳さんのことをそう思っている。 違いますか?」

「いいえ」 やっとすこしだけ嬉しそうな顔で祥子が首を振る。
「もちろん、祐巳がそう思う子だっていうことはわかっているわ。
 でもね、世界よりも祐巳が大事だ、って思ってしまうの。 わたしたちは、ね」
「それこそ、私も同じですよ。祥子さま」

 祥子と志摩子はお互いの手を握り、頷きあった。



 同時刻、リリアン女学園 園長室。

 水野蓉子、佐藤聖、支倉令の3人は、シスター上村の前のソファーに座っていた。

「水野さん、今日のI公園の出来事は聞きましたね?」
「はい・・・。江利子のお兄さまが亡くなったこと。 それに祐巳ちゃんが病院に運び込まれ、今、祥子と志摩子さんがついています」
「とても悲しい出来事が起きました。 鳥居さんのお兄さまは私たちのために身を粉にして防衛の任についておいででした。
 でも、これで終わりではない。 そうですよね?」

「異空間ゲートが何時現れるかわからない。 現に今こうしている間にも異空間ゲートは出現しているかもしれない、そう言いたいのですね?」
「辛いことですが、現実です。 本日の戦闘で騎士団は壊滅的な打撃を受けました。
 もう、異空間ゲートの出現を食い止めるのは騎士団の力だけでは無理・・・
 騎士団本部から、そのように言われました」
「まさか・・・」
「さすがにお分かりのようね・・・。そのとおりです」
「ですが、わたくしたちはまだ学生です。そんなことを本当に?」

「5月9日に、小笠原さん、藤堂さん、福沢さんの3人がS大前で戦闘を行いました。
 信じられないほど強い魔物を撃退した・・・そうですね?」
「はい」
「そして今日、福沢さんが・・・たった一人で、C級の魔物を50体以上倒したと・・・
 鳥居さんのお兄さまとの共同でもさらに何体もの魔物を倒したと伺いました。
 騎士団の中に、薔薇様や、薔薇様につながる人たちとの共闘をしたい、という意見が大多数だそうです。
 『リリアンの戦女神』たちの存在が、今の騎士団の支えになっている・・・そういうことです」

「わたしたち学生を戦場に送り込む、それを騎士団が望んでいるのですか?」
「誰もそれを願う人はいないでしょう。 
 わたしももちろん反対です。 あなたたちの安全を守るのが私の使命です」
「では、なぜそのようなことを?」

「もう、どこにも安全なところがなくなったからです。
 I公園の防衛網が突破されたら、この世は魔界に落ちます。
 それが今日のI公園の戦闘でますます明らかになりました。
 もはや猶予は出来ないのです。
 わたくしを始め、シスター全員は医療班として騎士団に協力することになります。 
 教師の方々も、すべて臨時の騎士団員としてI公園の警備に向かいます」

「シスター上村も!?」
 さすがに蓉子もこれには驚いた。
「ええ、わたくしは、”地の塩”になろうと思っています」
 齢六十を超えるシスターが、自ら騎士団への協力に乗り出す。

 蓉子は、薔薇十字を握り締めて聖と令を見る。

「あなたたち・・・・」
「なに悩んでんのよ、蓉子。はっきりしないあなたなんて、あなたじゃないわ。
 ちゃちゃっと、『行きます! 魔物くらいぶっ飛ばしてきます』 くらい言いなさいよ」
「ロサ・キネンシス。 わたしたちは妖精王に認められた薔薇十字所有者です。
 いまこの世を守る戦いに参加しないのであれば、わたしは薔薇十字を妖精王に返さなければなりません」

「うふふ・・・ わたしも焼きが廻ったわ。 聖と令からお説教されるなんてね」
 蓉子は、まるでなんでもないかのように笑った。

「シスター上村、わかりました。 わたくしたち薔薇十字所有者、騎士団に協力いたします」

「水野さん・・・。ごめんなさいね。 でも、これがリリアンの生徒全員を守る最良の方法だと思ったのですよ」
「ええ、わたしもそう思っています」
 蓉子は柔らかに笑顔を浮かべる。
「それにね、シスター上村。 私たちには素晴らしい仲間がたくさん居るんですよ」
「そ、山百合会はわたしたち幹部だけじゃありません。
 リリアンの生徒全員が山百合会なんです。 こんな素晴らしいことはありません」
「すべて、シスター上村の教えのおかげです。 私たちを信頼してください」

「水野さん、佐藤さん、支倉さん・・・・。わたしは本当に素晴らしい教え子をいただきました。
 主に感謝いたします」

「シスター上村、ではわたくしたちはこれで」
「ええ、しっかり励みなさい。 マリア様が見ていらっしゃいます」
「では、ごきげんよう」
「ごきげんよう」

 リリアンの薔薇が、ついに騎士団の先頭に立つ。
 
 過酷な運命が山百合会に降り注ごうとしていた。




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あとがき
 これまで拙い作品を読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。
 これで、このシリーズの第2部 (本編第1章)「リリアンの戦女神たち」は終了です。
 第2部では登場人物それぞれの紹介や登場人物をとりまく世界などをご紹介してきました。
 第3部ではこれまでにはった伏線や謎が次々に明らかになります。
 そして、本当の敵も。
 これからも、よろしくお願いいたします。
ex


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