【3305】 私に素敵な魔法を  (ex 2010-09-28 19:26:40)


「マホ☆ユミ」シリーズ   「祐巳と魔界のピラミッド」 (全43話)

第1部 (過去編) 「清子様はおかあさま?」
【No:3258】【No:3259】【No:3268】【No:3270】【No:3271】【No:3273】

第2部 (本編第1章)「リリアンの戦女神たち」
【No:3274】【No:3277】【No:3279】【No:3280】【No:3281】【No:3284】【No:3286】【No:3289】【No:3291】【No:3294】

第3部 (本編第2章)「フォーチュンの奇跡」
【No:3295】【No:3296】【No:3298】【No:3300】【No:これ】【No:3311】【No:3313】【No:3314】

第4部 (本編第3章)「生と死」
【No:3315】【No:3317】【No:3319】【No:3324】【No:3329】【No:3334】【No:3339】【No:3341】【No:3348】【No:3354】
【No:3358】【No:3360】【No:3367】【No:3378】【No:3379】【No:3382】【No:3387】【No:3388】【No:3392】

※ このシリーズは一部悲惨なシーンがあります。また伏線などがありますので出来れば第1部からご覧ください。
※ 4月10日(日)がリリアン女学園入学式の設定としています。

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 8月中旬、東京近県。 「丘の上の松平病院」でかすかな異変が起きる。

 もう10年も寝たきりで、栄養チューブによって生かされ、植物人間状態であった祐巳の父母。
 福沢祐一郎とみきが、突然謎の言葉をしゃべった。
 それは、巡回していた看護士が聞いたものであったが、これまでに聞いたこともない言葉だった、という。

 二人の回復の予兆ではないかと医師団は色めきたち、常時監視・撮影機器が二人の病床の脇に置かれる。

 そして、2度目に祐一郎とみきがしゃべった姿が録画された。

 この知らせを受けた松平医師、小笠原融、清子夫妻は急遽「丘の上の松平病院」にとんだ。
 しかし、祐一郎とみきは、意味不明の言葉をしゃべったのちは、再度植物人間状態に戻っている。

 この録画された映像は小笠原研究所に送られ、分析されることになった。



 小笠原研究所での分析の結果、祐一郎の言葉の一部から、古代エジプト語の単語が聞き取れた。

 それは、「復活」を意味する言葉。

 「復活」 という意味の古代エジプト語に焦点を当て、他の言葉にも古代エジプト語を当てはめてみる。
 すると、「復活」 のほかに、「千年王国」 「復讐」 「永遠の命」 「カナン」 などの単語が聞き取れた。
 
 これは何を意味するのか・・・。

 小笠原研究所の研究員が頭を悩ませる中、清子だけが「やはり・・・」とつぶやく。

 10年前、福沢祐一郎、みき夫妻を襲ったA級の魔物。
 そのときは、偶然であったであろう、その出現を期に、ソロモン王は自身の千年王国の実現を思い出したらしい。

 ソロモン王が復活する。 しかも近い将来。
 さらに、福沢祐一郎、みき夫妻を植物人間状態から解き放つ手段も・・・。
 すべて清子にはわかってしまった。

「これまで恐れていたことがついに起きます。 しかしすべて準備してきたことです。 至急異空間対策本部に知らせてください」
 
 異空間対策本部に、魔法・魔術騎士団に、そしてI公園に緊張が走る。
 障壁を構築できる魔法使い、神通力や法力を持った結界師たちが集められる。

「もうすぐ、現世と魔界が繋がります。 最大にして破られることのない結界を作ってください!」

 魔界と現世の戦いが目前に迫っていた。



〜 8月27日(土)〜

祐巳と志摩子の二人は小笠原の車で東京に向かっていた。
 運転手は松井。
 迎えに来たのは祥子だけであった。

「祐巳、もう左手と右足は違和感なく動くの?」
 祥子が心配そうに聞く。
「さっき、車に乗るときは小走りで走ってたけど。 痛みとかは無いの?」

「はい! 全然平気です。 やっぱり薬湯の効果ってすごいですね〜
 毎日毎日よくなって、もう痛みなんてどこにもないです!」
 (うそついて・・・ごめんなさい・・・おねえさま)

「ふ〜ん・・・」 祐巳の顔をじっと見て祥子は不思議そうな顔になる。 
 なんだこの違和感は・・・。
「まぁいいわ。 あなたが元気になったのなら。 志摩子も長い間ありがとう」

「いえ、祐巳さんのお世話が出来て、わたしもよかったです。
 それに、おばばさまからたくさん鍛えていただきました。 かなり強くなったと思います」

「そう。 おばばさまの修行、きつくなかった?」

 志摩子の脳裏におばばさまの『お仕置き』が浮かぶ・・・・。

「すごく・・・怖かったです・・・」

 真っ青になってがたがたと震えだした志摩子を見て、祥子は
 (私が残らなくて、正解だったかも・・・)
 と恐怖心で顔を引きつらせた。



「それで、祐巳、あなたもおばばさまのところで、ただ左手と右足を癒していたのではないでしょう?
 なにか・・・なにか別の修行をしてたんじゃないの?」

「えへへ、さすがお姉さま。 やっぱりわかっちゃいますよね〜」
 祐巳が本当に嬉しそうに祥子に答える。

 そして、急にまじめな顔になり、
「私の罪を・・・。許されない罪ですけど・・・。すこしだけ償わせてください」

「あなた・・・、やはり何かあるのね」
「はい。 おかあさまに・・・。足をお返しします」

 えっ? と祥子は驚く。
「足をお返しするって・・・。どういうこと?」
「口で説明するより、見ていただいたほうが早いです。 志摩子さんに手伝ってもらって足をお返しします」



〜 同日午後、小笠原邸 〜

 祥子に伴われ、祐巳と志摩子が山梨から帰ってきた。

「祐巳ちゃん! それに志摩子さんも!」
 清子が車椅子に乗って玄関で出迎える。

「祥子も、ご苦労様。 志摩子さん、長い間ありがとう。 疲れたでしょう? 奥で休んで頂戴」

「あの、清子様、少しお願いがあるのですが」
 と、着いた早々、祐巳が清子に向かって言う。

「なにかしら?」

「清子様の部屋に、お医者様を呼んでください。それと、志摩子さんと私が休める部屋もお願いします」

「お医者様? なにをするの?」
 突然の祐巳の言葉に驚きを隠せない清子。

「わたしの罪を償わせてください。 自由に歩いていただきたいんです。
 これまで、つらい思いをされてきた清子様に。 
 やっと、わたしが出来ることを見つけました。
 そのために、手術をさせてください。 必ず成功させますから。
 手術のための準備をお願いしたいんです」



 祐巳の言う準備が整い、清子は自分の部屋のベッドに横になる。

「まず、ご説明します。 これからお医者様に清子様の全身麻酔をお願いします。
 麻酔が効いたら、志摩子さんと私で、清子様の足を復活させます。
 復活するまで、おそらく丸一日掛かると思います。
 多分、そのあと私と志摩子さんは眠っちゃうので、部屋に連れて行ってください」

 理路整然とこれからの手順を話す祐巳。
 祥子と志摩子は、事前に話を聞いていたので驚きもしないが。

 しかし、驚いたのは清子とそばについている医者だった。
「足を復活させる、だって?」
「どういうことなの?」

「おばばさまのところで、ある不思議な魔法を教えていただいてきました。
 そして、志摩子さんの持っている 『理力の剣』 と、わたしの 『フォーチュン』 の力が合わさったとき、
 体の組織の復活を行うことの出来ることがわかったんです。
 ・・・偶然の事故がヒントだったんですけど。
 でも、この魔導式に間違いはありません。 演算も何度も復習してきました。 お任せください」

「そんな・・・。信じられません。 体の組織の復活など・・・。しかも皮膚程度ではなく、
 足ですぞ。 骨もある、神経もある、血管も! それを復活させようというのですか?!」

「はい。 ですから時間も掛かります。 ものすごい激痛もあります。 だから麻酔が必要なんです。
 よろしくお願いします。 でも、おか・・・清子様にもう一度自分の足で歩いていただきたいんです!
 わたしの・・・わたしの罪を償わせてください!!」

「わかったわ・・・祐巳ちゃん。 あなたがそこまで言うのなら確信があるのでしょう。
 わたしは、あなたを信じるわ。 
 それで・・・。 手術の前にわたしに何かできることはないかしら?」

「はい! では清子様の魔力も、この 『フォーチュン』 に流し込んでいただけますか?
 清子様の力も合わさると、きっと上手く行くと思うんです」

「わかったわ。 こうかしら?」
 清子は祐巳の差し出す魔杖・フォーチュンに魔力をこめる。
 すでに明るく輝いていたフォーチュンの宝石が一段と輝きを増す。

「ありがとう・・・。ありがとうございます、清子様!」

「うふふ。 いいのよ。 では、先生、麻酔をお願いします。」
 清子はすべてを祐巳に委ね、ベッドで目を閉じた。



 清子の部屋を殺菌し、無菌室状態にする。
 そのうえで、清子に全身麻酔を施し、医師はいったん部屋を出た。

 部屋の中には、手術着に着替えた祐巳、志摩子、祥子の3人のみ。

「では、志摩子さん。 『理力の剣』 をおかあさまの足、ひざ下に真っ直ぐ当てて。
 私が『今』 って言ったら、足を切断して。 いいわね」
「任せて」
「お姉さまは、切断がすんだらすぐに止血剤をお願いします。 すぐに魔法で血は止まりますが、
 少しは血が流れ出ると思いますので、出来るだけ素早く」
「わかったわ」

「では、いきますよ。 ・・・・・・『癒しの光っ!』」
 祐巳の『フォーチュン』にはめ込まれた宝石が純白の光を放つ。
 その光を放つ宝石で志摩子の『理力の剣』に刻まれた紋様をなぞる。
 志摩子の『理力の剣』が、『癒しの光』を受け止め、白銀に煌き始める。

「志摩子さん! 『今っ!』」



 祐巳は、『フォーチュン』を握り締めながら、一心に呪文を呟いている。
 杖と、清子の切り落とされた足の間から、目に痛みすら与える純白の光が漏れ、じゅう、なんていう油を引いた鉄板に肉を乗せたような音がした。
「なにをしているの?」
 小声で、祥子が志摩子に問う。
「まず、傷口を・・・足を魔力を纏った『理力の剣』で切ったので、その場所の蘇生です。
 その後は、『癒しの光』の魔力を型にして足を再生させます。
 祐巳さんによれば、足の再構築、だそうです・・・。 同じものを作るわけではありませんから」

 祐巳は恐ろしく複雑な演算を続けている。
 額には汗が浮かび、あごから落ちそうになっている。
 志摩子は祐巳の汗をふき取りながら、体を支えている。

 祐巳は目を閉じたまま、『フォーチュン』を空中で躍らせる。
 すると、祐巳の周囲に雪のような、あるいは舞い踊る蛍のような青白い光の粒が無数に浮遊する。
 祐巳は、杖先でその光を掬い取ると、まるで指揮者のように切断されたひざ下へといざなう。
 浮遊する光の群れはゆるやかに移動し空中で渦を巻く。
 二度、三度と円軌道を描いたそれは、やがて清子の傷口に流れ込んだ。

 傷口に集った粒子はその場で留まり、静かに旋回運動を開始した。
 まるで川面に太陽の光が反射しているように、その光は僅かに揺れ動き、表面に幾多もの波面を形成している。

 光は渦を巻く。 徐々にその姿を変えてゆく。
 そして粘土細工のように次第に足の形を作り、その姿を固定させる。

「足が・・・足ができたわ!」
 祥子は驚愕した。
 これまで、どれほどの数の医師が体の再生を夢見、挑戦してきたことだろう。
 しかし、トカゲの尻尾のように人間の体が再生するわけではない。
 まさに、神秘の光景であった。

「まだ・・・まだです。 いまは形が出来ただけ。
 このあと、骨や血管、神経や筋肉など必要なものを再構築します」

 一瞬、祐巳の体がふらつく。 祐巳も必死なのだ。

「祥子様・・・わたしに魔力はありません。 祐巳さんの体が倒れないように支えることは出来ますけど。
 お願いします。 祐巳さんに力を分けてあげてください。
 祐巳さんの手を包んで、祥子さまの魔力も『フォーチュン』に流し込んで!」

「わ・・・わかったわ!」
 祥子が祐巳の手を包み込み、自身の持つ魔力を精一杯流し込む。

 清子と祥子、稀代の魔法使いの親子と、ふたりに本当の娘、妹として育てられた祐巳。
 3人の魔力が一本の『フォーチュン』に流れている。

「この杖は、 『幸運』 ですもの。 祥子様。 きっと成功します!」
 志摩子は力強く言い切った。



「終わった・・・」
 小さな声で祐巳が呟く。
 
 隣には祥子と志摩子が祐巳を抱きかかえていた。
 二人に抱きかかえられながら、祐巳は、
「お姉さま・・・。志摩子さん・・・。ほんとうにありがとう。 おかあさまの足・・・治ったよ」

 そう小さな声でもう一度つぶやくと、祐巳は意識を手放した。
 実に・・・手術を開始してから、20時間以上が経過していた。

 倒れた祐巳を抱きかかえる祥子も、ふたりを支えていた志摩子ももう限界であった。

 3人で清子の眠るベッドの横に倒れこみながら、それでも3人は幸せそうな笑みを浮かべていた。



〜 8月29日(月) 小笠原邸 〜

 蝉の鳴き声が遠くで聞こえる。 
 カーテン越しの夏の日差しが柔らかに部屋に差し込む。

 清子が目を覚ました時、ベッドの隣で心配そうに見つめる祥子と祐巳、志摩子の3人と目があった。

「お母様・・・」 祥子の心配そうな声。
「おかあさま、痛みはありませんか?」 祐巳も清子に声をかける。

 なんとなく、ぼんやりとした感覚の中、清子は全身麻酔で眠っていたことに思い至る。

「いえ・・・。特に痛みはないわ・・・。足が・・・少し重いわ」

 祥子が清子に手を貸し、上半身を起こす。
「お母様、祐巳が・・・。お母様の足を治したんですよ。 わかりますか?」

 祐巳が、布団を体からずらし、足が見えるようにする。

「あ・・・。足・・・」
「ええ・・・。いかがですか?」
「治ったの? 治ったのね!?」
 清子が信じられない、という顔で祐巳を見つめる。

「はい。 動かせますか?」
「ええ。 ええ! 動くわ!感覚も・・・。感覚もある! ・・・足って重いのねぇ」
「お母様!」

「立ってみませんか?」 
 祐巳が祥子を見ながら言う。

「おねえさまとわたしで、二人で支えますから」

 清子の足が、ベッドから下ろされ、床につく。
 清子の左右を祥子と祐巳が支える。

 3年半ぶりに・・・。清子は自分の足で立ち上がろうとする。

 しかし、ずっと車椅子に慣れていた体は真っ直ぐ立つことすらままならない。
 体が真っ直ぐ立つためのバランスを忘れているのだ。

 ふらつく清子を左右から祥子と祐巳が支える。

 実の親子と、それ以上の絆で繋がる清子と祐巳。

 3人の力で清子はなんとかバランスを取ってその場に立つ。

「おかあさま・・・。 歩けますか?」
 祐巳が心配そうに清子に問う。

「歩く・・・。 わたしが歩くのね・・・」
 生まれて始めて歩く赤ちゃんのようにおずおずと清子が一歩を踏み出す。

 必死でバランスを取りながら。 祥子に支えられながら・・・。

 そして、数歩前で手を差し伸べる祐巳に向かって一歩一歩、歩みを進める。

「お母様! お母様が立った! お母様が歩いた!!」
 祥子の大きな目から涙があとからあとから溺れ落ちる。

 祐巳のもとまでたどり着き、祐巳と抱き合っている清子に祥子もすがりつく。

 ベッドの横で3人で抱き合いながら涙を流す3人を見て、志摩子も幸せそうな顔をしていた。



〜 9月1日(木) リリアン女学園 〜

 この日、祐巳と志摩子は、3ヶ月ぶりにリリアン女学園に復帰した。
 1年桃組では、まるでヒーローの凱旋のように祐巳と志摩子を迎える。

「祐巳さん、志摩子さん、おかえり!」
「ごきげんよう、みなさん。 長い間留守にしてごめんなさい。 これからまたよろしくお願いします!」

 明るい声が一年桃組にこだまする。
 魔界の脅威はあるものの、連日のように薔薇様の活躍を聞いているクラスメイト達は明るい表情をうかべていた。

 そして、剣術部門の生徒6人。
「ふっふっふっ〜。祐巳さん、志摩子さん、午後からは覚悟してね!
 私たち、すごく強くなってるからね!」
「お〜、それは楽しみ! 志摩子さん、がんばろうね!」
 祐巳と志摩子は、顔を合せて笑いあった。



「飛燕斬っ!」 「一文字切りっ!」 「旋風斬!」 「打突三連戟ぃ!」
 祐巳の脇を目にもとまらぬ高速の連続技が行過ぎる。
 武道場では、祐巳対4人の模擬戦闘が行われていた。

「すご〜い! みんな早い!」
 三身一体どころか四身一体の攻撃が祐巳を襲う。

「みんな、キマイラなんかより、ずっと早い! すごいな〜」
 祐巳は感心した声を上げるが、その実、体にはまったくかすらせない。

 祐巳の隣では志摩子も同様に四身一体の攻撃を捌いている。
 ・・・・・・もっとも、こちらは無言だが。

「な・・・なんなのよっ! あなたたち! なんで当たらないっ!」

 もう、4月当初の1年生達ではない。
 1学期の間、いや、夏休みも返上で鍛えに鍛えぬいたのだ。
 いくら祐巳や志摩子が何歩も先を行っていたとしても、少しは追いついていいはずではないか・・・
 
 しかも、覇気のオン・オフにいたっては、ここに居る全員が1秒間に32回以上をクリアしたのだ。
 その鍛えられた技に、必殺の覇気を纏い挑んでいるというのに・・・。

 まるで、柳に風。 斬撃を受けるでもなく、体捌きだけでかわす祐巳。
 模擬剣で、斬撃をはじき返す志摩子。

 先に音を上げたのは、さすがに志摩子だった。

「祐巳さんっ! さすがにキツイよ。 はずしたらダメ?」
「しかたないなぁ・・・。その代わり8人だよ?」
「OK,それならなんとか・・・」
 志摩子のほっとした声。

「じゃ、わたし休憩〜。 8人で志摩子さんにかかって〜」
 あいかわらず、のんびりした祐巳の声。
 しかし、その声がした瞬間、祐巳は志摩子の脇を駆け抜ける。

「ふ〜。 楽になった・・・。 じゃ、お返しよ!」
 志摩子の雰囲気が変わる。

「いくわよ! みんな・・・・。 『利剣乱舞』っ!」
 志摩子の体がぶれる・・・としか8人の剣士には見て取れなかった。
 次の瞬間、志摩子の斬撃が、上から、下から、右から、左から、残像さえ見えない攻撃が8人を襲う。

 カラカラカラァァーン!! 8本の木刀や模擬剣が武道場に散らばる。

 その様子を見ながら白いミサンガを片手に武道場の片隅で微笑む祐巳の姿があった。


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