ごきげんよう、お姉さま方
×××
ある日、うつ伏せで寝ていると突然胸の当たりが苦しくなり、目が覚めた。
「うーん、苦しい、なんだ、枕でも下敷きにしたか?」
枕は目の前にあった。
「?」
俺は寝ぼけたと思い、また寝る事にした。が、未だ寝苦しい。何かを潰したと言うよりも、何かを潰された、と言うのが正しい表現のようだった。
俺はその違和感の正体を確かめるべく、意を決して胸の当たりを確かめた。
「!?」
胸の当たりに何かがある。あると言うよりも、むしろ柔らかくて暖かいものが、そこにはあった。
俺はパニクりそうになったが、今は真夜中。騒ぐわけには、いかない。「落ち着け、冷静になるんだ、俺」と心の中で自分に言い聞かせた。
次にとる行動は決まりきっていた。「下」の確認である。無い。すがすがしいまでに何も無い。自分で言うのも何だが、決して「立派な物」ではなかったが、いざ無くなってしまうと寂しさで泣きそうになった。
次は部屋の確認である。「まさか祐巳と入れ替わったのか?」という考えが頭をよぎったからた。
「祐巳の部屋ではない。俺の部屋に似てはいるが少し…違う…」
部屋は俺の部屋ではあったが、微妙にファンシーになっていた。衣類も調べてみる事にした。…女物だった…俺は声を殺して泣いた。
三十分位泣いたらふと、トイレに行きたくなった。戸惑ったが、漏らす訳にもいかず、トイレに行くことにした。
幸いなことに真夜中だった為、家族の誰に逢うことなく無事済ます事が出来たが、自分の物とはいえ、ノゾキをしている気分になった。下は見なかったが…。
トイレも無事終了し、部屋に戻る為に階段を上っている時だった。溜め息混じりに目をつぶって登っていたのが悪かったらしい。後一段というところで足を滑らせ、落ちた。
心の中で
「俺は女になったまま死ぬのか?」
と思った。
すごい音が聞こえたにもかかわらず、家族の誰も起きては来なかった。白状者と思いつつ、俺は気を失った。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ…
朝だった。階段の下にいるはずなのに、俺はなぜかベッドの上で目を覚ました。「誰かが連れて来れたのか?」という疑問もあったが、部屋が元通り?だったので、夢だったようだ。少し残念なような、ほっとしたような、複雑な気分だったが、まあ、良しとしよう。
祐麒は気付かなかったが、ベッドの下には、ぬいぐるみ達がひしめき合っていた…