※全力で各種ネタバレをしながら宣伝をします。
「2011年7月29日に実写版『マリア様がみてる』のDVDとBDが発売されることになりました」
『ごきげんよう』も『事件です』もぶっ飛ばして祐巳は薔薇の館の二階会議室兼サロンに現れるとそう言った。
「いきなり本題ね、祐巳」
祥子が相槌を打つ。
「今日は手短かに済ませようと思いまして」
「なぜ?」
尋ねられて祐巳は答えた。
「こちらの作者が『劇場で鑑賞したので買う予定はない。自分が買わない物を宣伝するSSをうpするのは忍びない』というので……」
「祐巳。ひびき玲音先生デザインのプチキャラにアニメ版の中の人が声を当てたオリジナルマナーCMがあったわよね――」
「買わせていただきます」
祥子が言い終わっていないのに祐巳は即答した。
「確かにマナーCMやいろいろな特典がつくのはwebコバルトにも書いてあったけど、態度が変わりすぎではなくって?」
あきれて祥子が突っ込む。
「いいえっ! お姉さまの中の人は間違いなく女神です(断言)」
「中の人はって……あなたにとって私は何なの?」
「お姉さまです(即答&断言)」
複雑な表情でにらみつける祥子。
何か間違っただろうかと首をかしげる祐巳。
「とにかく、2011年7月29日に実写版『マリア様がみてる』のDVDとBDが発売予定なのね」
「5月の新刊ラインナップにも今野先生の作品が入ってなかったからどうなるかと思ったけど、これはこれでいいんじゃない?」
蓉子と聖がまとめに入る。
「それでは、まだ見ていない人が見たくなるように映画版『マリみて』のすばらしいところをプッシュしましょう」
「え?」
江利子の言葉に思わず令がつぶやいた。
「ちょ、ちょっと! 『え?』って何よ、『え?』って! 見てない人が不安になるでしょう?」
「ご、ごめんなさい。原作の都合上出番が少なかったので、つい……」
平謝りに謝る令だが、劇場公開版ではかなり少なかった。ディレクターズカットとかになってるといいね(泣)
「それでは、実写版のポイントを順番に。スタート!」
祐巳
「某朝の情報番組のリポーターも決まった美少女が頑張ってます」
祥子
「映画版は私と祐巳が主役ということなので忘れないでください」
蓉子
「いろいろなサイトで『蓉子様よかった〜』とお褒めの言葉をいただきました」
聖
「カメラちゃんの方がインパクトがあるらしくて……私、悪くはなかったんだけど」
志摩子
「皆さま『髪が茶色じゃない』しか言ってくれませんが、実写で茶髪は不良っぽくありませんか?」
江利子
「声が中の人に似てます」
令
「由乃が可愛いからいいや」
由乃
「ちょ、ちょっと。原作で台詞ほとんどない私にその振りって……えーと、うーんと、『笑う大天使』のような大惨事にはなっていません」
どうするんだ、この空気。
「黄色い人たち、出番が少なかったからって適当に済ませないでよ!」
「誰も買わないじゃないですか! ここでポシャって『マリみて』『釈迦みて』共倒れになってこの世界が打ち切りになったらどう責任取ってくれるんですかっ!」
猛抗議する紅い人たち。
そこへ、ぎしぎしと階段を鳴らして影の主役がやってきた。
「写真部でーす。私が必要とされてる空気を感じてやってまいりました」
蔦子さん登場。
「よかった! みんな適当なことしか言わないから本当に大惨事になるところだったよ」
涙目の祐巳が蔦子にすがりつく。
「え?」
「蔦子さん、2011年7月29日に実写版『マリア様がみてる』のDVDとBDが発売予定なんだけど、この白けた空気を救って!」
「そういうことでしたら」
と、蔦子はカメラ片手に語りだした。
「実写版『マリア様がみてる』は原作無印の世界が現実に存在したらこんな感じだろうなという映像に仕上がっています。実写ならではの演出もありますが、ストーリーは忠実で、名シーンはきちんと再現されています。ぜひお買い求めください」
「さすが蔦子さんだよ!」
祐巳は感動した。
「と、いうわけで。ギャラの代わりに撮ってもよろしいでしょうか?」
「ギャラ!?」
「ちょっと待って、あの――」
困惑する山百合会メンバーをよそに『美少女集団撮影会』を敢行する蔦子さん。
その顔には『わが人生に一点の悔いなし』という言葉が書かれていたという。