【3508】 貴女は私の太陽なの  (ex 2011-05-11 18:46:27)


「マホ☆ユミ」シリーズ 第2弾 (仮題「祐巳の山百合会物語」)

第1部 「マリアさまのこころ」
【No:3404】【No:3408】【No:3411】【No:3413】【No:3414】【No:3415】【No:3417】【No:3418】【No:3419】【No:3426】

第2部 「魔杖の名前」
【No:3448】【No:3452】【No:3456】【No:3459】【No:3460】【No:3466】【No:3473】【No:3474】

第3部
【No:3506】【No:これ】【No:3510】【No:3513】【No:3516】【No:3517】【No:3519】【No:3521】第3部終了(長い間ありがとうございました)

※ 4月10日(日)がリリアン女学園入学式の設定としています。(カレンダーとはリンクしません)
※ 設定は 第1弾【No:3258】〜【No:3401】 → 番外編【No:3431】〜【No:3445】 から継続しています。 お読みになっていない方はご参照ください。

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〜 7月7日(木) お昼休み後半 薔薇の館 〜

☆★☆

「あまりに暑すぎて忘れていたわ。 祐巳、目的の人物は見つかったの?」

「はい。 やはり、と言うべきか・・・。
 覇気放出系は剣術部門では可南子ちゃんだけです。
 可南子ちゃん、出会った頃は覇気がダダ漏れで危なかったですけど、とても落ち着いて覇気をコントロールできるようになってきています。
 格闘技向きか、とも思っていたのですが、やはり槍術は出色です。
 剣術を専攻している中で、放出系で強いのは可南子ちゃんしかいない、って思います」

 そうだった。 今日集まった主な目的がこの議題。
 あまりの暑さで話が脱線どころか、最初から話題にも上らなかった。

 やはり、なかなかお姉さまの域まで達しないわ・・・、と祥子は少し反省しつつ祐巳に話を振る。
 水野蓉子であれば例えどんな状況でも最優先すべきことはきちっと抑えておくのだろうが。

「可南子ちゃんのことは、祐巳ちゃんが最初からすごい覇気がある、って言ってたけど・・・。
 これだけ一年生がいて可南子ちゃんだけだったの? 格闘技部門は?」

 令も会議の主旨を思い出したように祐巳の答えを待っている。

「格闘技部門は由乃さんが基礎訓練ばかり行っていたので実戦での力量はまだわかりません。
 でも、全員と2回手合わせしたのですが乃梨子ちゃんを含め該当者はいませんでした。
 それと、覇気コントロール系は剣術部門には多いのですが、力量的に問題がありました。
 その点だけなら格闘技部門の乃梨子ちゃんだけが期待どおりの力を持っています。
 結局それぞれ一人ずつしか見つかりませんでした。 あとは志摩子さんのほうですけど・・・」

 と、祐巳は志摩子を見る。 志摩子はそれに頷き返すと祥子に報告をはじめる。

「まだ祐巳さんがこちらに来ていないので何ともいえませんが、多分向いている生徒はいないと思います。
 実力的には内藤笙子さんが抜きん出ています。
 驚いたことには江利子さまの様に、自由自在に覇気をコントロールできるようなのです。
 でも他人の覇気まで自分の覇気と同様に扱うことは無理だと思います。」

 と、少々申し訳なさそうに志摩子が答える。

「まぁ、お姉さま並みの力を持てる人なんてそうざらにはいないよ。 祐巳ちゃんに見てもらうまで候補の一人にしておいてもいいんじゃいの?」
 と、令がとりなすように言う。

 だが志摩子は、
「あの子はこのリリアンにとって無くてはならない存在になることは間違いありません。
 多分、本人も気付いていないでしょうが覇気のコントロールだけに関してはわたしより上です。
 祐巳さんと体格は変わらないのに、和弓で5連射をこなすんです。
 そんな人、江利子さま以外に見た事がありません。
 でも、この件に関しては向いていない、と思います」
 と、否定の言葉で返す。

「内藤笙子さんの力は多分、今、祐巳さんがしているのと同じ。
 普段は無意識に覇気をゼロに抑えているんだと思います。
 なぜその様なことが出来ているのかはわかりませんが、これまでに何か特別の事情があったのではないか?と思われます。
 でも、出来るのは覇気を抑えることと、弓を引くときに全開にすること。
 ほんとうにこのコントロールだけは祐巳さんに引けを取りません」

「へぇ。 すごい子がいるねぇ。 でも、残念ながら今回は候補外、ってことか」
 令は少々残念そうだ。 姉である鳥居江利子が弓道だったので、少しばかり思い入れがあるのかもしれない。

「もともと弓道は個人種目的なところがあるから、今回の目的には適さないんだと思います。
 それにしても、放出系は体術、コントロール系は剣術、って予想してたんですけど、全く反対の人選になっちゃいました」

 祐巳は志摩子と令の会話を黙って聞いていたが、予想どおりの結論だったので納得顔だった。
 そして乃梨子に視線を移して話しかける。

「乃梨子ちゃんの覇気コントロールの力にはほんとに驚いたの。
 まさか、蓉子さま以外に他人の覇気に干渉できる人がいるとは思わなかったんだ。
 まぁ、蓉子さまみたいに自由自在に、って訳には行かないけど、乃梨子ちゃんの力は他の人の覇気に影響をあたえることができる。
 ん〜。 なんていうかなぁ。
 自分の覇気だけでは出来ないことでも、他の人の覇気と力を合わせることで達成することが出来る、ってかんじ?
 だから、今回の目的には最適なんだよ。 ほんとに奇跡的!」

「あの、祐巳さま。 わたしにそのような他人の覇気をコントロールする力がある、とは思えないのですが。
 それに、もしその力があるとして、どのようにすれば覇気の力を合わせることができるのかわかりません」

 乃梨子は、祐巳の言っている言葉に理解できない部分があった。

 覇気を放出する、と言うのはわかる。
 戦闘においては、同一条件であれば覇気の強いもののほうが勝つ、ということは常識だ。
 もっとも、戦闘の経験や得意とする条件で勝敗は決まるのだろうが、覇気は強ければ強いほど良いに決まっている。

 覇気をコントロールする、と言うことはもっとよくわかる。
 乃梨子自身、覇気は常に一定に保つ訓練を積んできたからだ。 
 忍びとしての第一歩、と言っても良い。 SPとなるためには影にさえ同化するほど覇気を抑えることもある。

 しかし、他人の覇気に干渉する、とか、覇気を合わせる、ということは聞いたこともない。
 しかも、先代のロサ・キネンシス=水野蓉子は他人の覇気に干渉した、というではないか。

 自分にそのような力があることなど自覚したこともなかったし、使い方もわからない。

「うん。 乃梨子ちゃんはまだ知らないと思う。 でも安心して。 ちゃんとできるようになるから。
 ほんとうは一番の適任は志摩子さんのお姉さま、先代ロサ・ギガンティアなんだけど、もう一人、すごい人がいるの。
 さっきから名前が挙がっている鳥居江利子さま。
 令さまのお姉さまで、先代ロサ・フェティダ。 この方に教えていただけるわ」

 そう乃梨子に告げた祐巳は祥子に顔を向ける。

「わかったわ。 江利子さまにはわたくしからお願いしてあげます」
 と、祥子も祐巳に頷き返す。

 すでに祥子の頭の中ではこれから先の作戦が出来上がりつつあるようだ。

「と言うことで、細川可南子ちゃんと二条乃梨子ちゃん、この二人が最終候補です、お姉さま」

 と、祐巳は祥子に直接戦闘部門の最終結果を報告する。

「では、剣術、格闘技、弓道からは可南子ちゃんと乃梨子ちゃんの2人だけ、と言うことね。
 魔法部門はまだ祐巳が半分のクラスしか見ていないし、攻撃魔法は2学期からだから断定は出来ないけれど・・・。
 祐巳のほうはどうなの?」

「そうですね〜。 みんなまじめでよく頑張っているんですけど。 可能性があるとしたら一年桃組の高知日出美ちゃん、椿組の敦子ちゃんくらいでしょうか。
 でも、たぶん・・・」

「無理、ってことね?」

「はい。 注文が難しいのは仕方ないので、乃梨子ちゃんと可南子ちゃん、二人だけでも見つかってよかった、って思わないといけないのかもしれないですね」

「剣術では、俊子ちゃん、美佐江ちゃん、藍子ちゃんとか、結構有力候補だと思ったんだけどね」

「はい、剣術部門は平均レベルが高いと思います。 自分自身の覇気コントロールは全員合格点を上げることができるレベルなのですが・・・。 でもみんなこの方面には向いてない、と思うんです」

「それにしても、祐巳ちゃんの”血”、って言うのか、その力は不思議だね。 祐巳ちゃんのお母様にもその力があるんでしょう?」

「祝部の娘ですから。 でも全員がそうなるわけではない、とおばば様がおっしゃっていました」

 山百合会では、ある目的に沿った人物を探していたのだ。
 それは、覇気の強さ、コントロールの出来具合などが影響するため、本気で戦っているところを祐巳自身が見る必要があった。
 そのため、体術部門と剣術部門に祐巳が直接出向き、戦闘訓練の相手をしたのだ。

 祐巳は、人体に流れる覇気の強さを見ることが出来る。
 それは、祝部神社の巫女に受け継がれてきた血。 祐巳が知っている限り、この力を持っているのは祐巳以外では三人しかいない、と言うことだった。
 去年まで祐巳はそのような力はすべての人にあるものだと思っていて、その力が祝部の娘特有のものだと知ったときには驚いたものだ。

「それぞれたった一人しかいない、と言うのなら、乃梨子、あなたにはこの役目、是非引き受けてもらいたいのだけれど」

「うん、志摩子さん。 大丈夫。 瞳子は親友だし、こちらからもお願いします。 でも、ちょっと可南子さんは問題かも」

「可南子ちゃん、どうかしたの?」

「可南子さん、ああ見えてクラスでは見た目ほど目立った存在ではありません。
 休み時間も一人でいることが多いようです。 一匹狼と言うか・・・」
 ちょっと言いにくそうに乃梨子が説明する。

「一匹狼? まるで乃梨子ちゃんみたいじゃない」 と、ちょっと失礼な由乃。

 そういえば、乃梨子も可南子も高等部からの編入組だ。 生粋のリリアンっ子が多い中では一匹狼にもなるだろう。
 しかも、ともに実技トップの腕前で周囲から多少浮いた存在にもなる。
 
 乃梨子はその任務ゆえおとなしく目立たぬように過ごしてきたし、可南子もお嬢様トークはあまり好きでないようで休み時間には読書をしていることが多い。

「乃梨子は声をかけてあげないの?」
 と、志摩子が不思議そうに聞く。 一ヶ月ほどとはいえ一緒に薔薇の館で過ごした仲間なのでよく話をしている、と思っていたのだ。

「事務的な会話なら出来るんですが、雑談には全く乗らないんですよ。 でもわたしと可南子さんはなんていうか・・・、信頼しあっているからこそあまり話しをしない状態、です。 私は可南子さんのことも親友だと思っています。」

「瞳子ちゃんは? お世話しそうだけど」
「だめです、ほとんど天敵」

 志摩子の問いにばっさりと切り捨てる乃梨子。

 えええぇ〜、と困った顔になる祐巳と、そりゃそうだ、と納得顔の由乃。

「それは困ったなぁ・・・。 可南子ちゃんが一番の適任だ、って思ったのになぁ。 仲良くなれないのかな?」

「ねぇ、祐巳さん。 私言ったよね? 二人がここに来ていたとき」
 と、由乃が気の毒そうな顔で祐巳を見る。

「へ? 何て言ったんだっけ?」

「ぶっ・・・。 憶えてないの?! ”どっちか早く妹にしなさい” って言ったじゃないの!
 ほんとにもう・・・。 二股かけちゃってこの天然下級生たらしめ。
 あの時も二人からバッチバチ覇気が飛んできてウザいったらなかったんだからね!」

「あ〜〜〜。 それかぁ・・・。 でも二人とも 『スールになりたい』 って一言も言ってないし・・・」
「あたりまえでしょ? お姉さまになるほうが申し込むものなの! 祐巳さん、自分のときの事、忘れたの?」

「忘れたわけじゃないんだけど・・・。 スールかぁ・・・。 困ったねぇ」

 まいった。 ここに来て妹問題が浮上するとは思わなかったぞ、と祐巳の百面相が語っている。

「あの、祐巳さま。 とりあえず私が仲を取り持って上手くやりますから。
 それに、二人とも祐巳さまのことが好きなことは傍から見ていればよくわかります。 なんとかなりますよ」

 さすが乃梨子。 苦労人らしく仲裁役を買って出るようだ。 がんばれ!

「乃梨子ちゃん、苦労かけるけどお願いね。 ではこの件は可南子ちゃんと乃梨子ちゃんに任せることにします。
 もうすぐお昼休みも終わるわね。 会議はこの辺にしましょう。
 ・・・ あぁ、乃梨子ちゃんと志摩子」

 会議を締めくくった祥子は、最後に白薔薇姉妹に視線を移す。

「あさって、土曜日の午後小笠原研究所に行くわ。 着替えを準備しておきなさい。 車はわたくしが手配します」

「「わかりました」」 と声をそろえる白薔薇姉妹。
 まだ姉妹になって日が浅いというのに、しっかりと息が合っている。

「それから可南子ちゃんだけど・・・。 明日の実技指導の時に伝えておいてくれるかしら。
 了解が得られれば一緒に連れて行くわ。 合わせるのは早い方がいいでしょうし。 令、祐巳、お願いね」

 いよいよ、土曜日から祥子たちの武道訓練がスタートするようだ。
 ちょっと楽しみ、と全員が思っていた。


☆★☆

 2年生3人と乃梨子を薔薇の館から先に退出させた祥子と令は、二人並んで後片付けをしていた。

 『お姉さまにそんなことさせられません!』 と祐巳たちも言っていたが、『あなた達は先に実技の準備をしてきなさい』 と言って追い出したのだ。

「結局、入学式の日に祐巳ちゃんが見立てた二人が候補になったね」
 と、令が祥子に語りかける。

「そうね。 それに、『可南子ちゃんと乃梨子ちゃん、この二人、やはりすごいです!』 って実技訓練に参加した初日から言ってたものね」

「やはり、奇跡、ってのは起こるものなのかなぁ。 望むべきもない特性を持った3人が同時にリリアンに揃うなんて、ね。
 しかも、可南子ちゃんも乃梨子ちゃんも外部入学でしょ? 普通、考えられないよ」

「もしかしたら、祐巳の 『この世に希望をもたらす』 と言われる力が呼び寄せたものなのかもしれないわね。
 わたくしたちの出会いもほんとうに不思議なものだったものね」
 と、感慨深げに祥子が答える。

「それにしても、祥子が武道をする、なんて驚いたよ」 と、令。

「そうね。 わたくしは武道をまったくしてこなかったので素人同然。 その分、楽しみでもあるの」
 祥子は手を止めずに令に答える。

「祥子は社交ダンスをしているからね。 ダンスの動きは武道にも通じる。 きっとすぐに上達するよ」

「それでも身につけるのが出来たのは瞬駆までだったわ。 あなたのように瞬身や幻朧が使えるわけではないし、祐巳や志摩子のように風身が使えるわけでも無い。
 武道をする、と言っても直接の攻撃力を上げることが目的ではないの。
 私が欲しいのは瞬発力と持続力。 もうあんな思いをするのは嫌だもの」

「祥子・・・」

「これまでも危ない時にはお姉さまや祐巳に助けてもらったわ。 でも、これからは自分の身は自分で守ることも必要になってくる。
 祐巳は感じているのよ。 この先、きっと大きな事件が起こる。
 だから無意識に急いでいるんだわ。
 その時にわたくしのせいでみんなを危機に陥れるようなことになるわけにはいかないもの」

「祐巳ちゃんが感じている・・・か。 あまり想像したくはないけどやはり事件が起こるのかな?」

「そうではないことを祈っているわ。 でも備えあれば憂いなし、ですもの。 祐巳とこのリリアンを守りためならわたくしにできることは何でもしておきたいの」

 やはり祥子はすごい、と令は思う。
 水野蓉子の指導を受け、福沢祐巳の光を知った祥子は、自らの輝きに一層磨きをかけようとしている。

 黄薔薇十字捜索作戦では、瞬発力と持久力不足を妖精王から指摘され魔界探索に同行できなかったことを泣いて悔しがった祥子。
 それを補って余るある支援をしてくれた祥子に令は心から感謝していたのだが、祥子自身は人生の汚点として自らの進化を心に誓ったのだ。

「祥子、瞬駆はね、つま先一点に覇気を集中させることで体力の浪費を抑えながら加速することが出来る。
 体力の消費が少ないから使ったとしても短時間で疲れも解消していく。
 集中する点が小さくなればなるほどスピードも上がり回数も増やせる。
 それに対し、瞬身は全身の関節をばねにして跳ぶ。 当然スピードは瞬駆をはるかに超えるけど体力を浪費する。
 いざというとき以外には使わないこと。
 風身、は祐巳ちゃんや聖さまと志摩子のように風の精霊の力を借りて行うものなので、私たちには無理。
 幻朧は全身の細胞レベルまで覇気を練りこみ爆発させる。 体力を半分くらい持っていかれるから私でも一回の戦闘で一度しか使わない。
 祥子が覚えたとしても戦いには使わないこと。 逃げるときだけに使って」

 祥子は自分に出来ることなら何でもする、と言った。

 自分の知っていることで教えることが少しでもあるのなら祥子の役に立ちたい。
 その想いが令の口を突いて出る。

 祐巳や志摩子も信じられないくらい早い動きをする。 由乃はその膨大な覇気を生かし一度の戦闘で4回の幻朧を使って見せた。
 それでも、一撃必殺、スピードと剣戟の破壊力はリリアン一、と自負する令。

「わたしは、祥子と同じ学年としてこのリリアンですごせることを誇りに思うよ。
 しかし、まったくここはすごい人間の集まりだね。 付いていくだけでやっとさ」

 片付けを終えた令はにっこりと微笑んで祥子の手を握る。

「あら、 ”リリアンの武神”、剣聖・支倉令ともあろう人がよく言うわ。
 わたくしもあなたと共にこの学園で過ごせることは大きな誇りなのよ」

 祥子も力強く令の手を握り返す。

「ねぇ令。 2年前を思い出して。
 薔薇の館にはじめて二人が出会ったときのことよ。
 わたくしが蓉子さまの妹になってはじめてこの薔薇の館に来た日。 それはあなたも江利子さまの妹になった日だった。
 4人で薔薇の館の前で鉢合わせをした時の蓉子さまと江利子さまの楽しそうな顔ったら無かったわ。
 もともと、戦闘訓練を専門にしてこなかったわたくしにとってあなたの強さは憧れだった。
 その時から、あなたはわたくしの太陽だったのよ」

 2年の月日を経て初めて語られる二人の出会い。

 令のほうこそ、真性のお嬢様である祥子は太陽のように眩しく輝いて見えていた、というのに。

「あなたと出会えてよかった。 ありがとう」

「いいえ、どういたしまして」

 真面目な令の言葉に、祥子はコロコロと笑い出すのだった。



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