【3560】 桜色の世界  (Rosshi 2011-10-06 22:17:17)


『ご注意ください』

このおはなしは、一見ケテルさまの【3559】「記憶と書いて夢こころをこめて」の続きのように見えますが、
全く関係のないただの妄想SSです。

【3559】を読んで感動された方、及び未読方は、本SSをスルーされることを推奨します。
読み終えてから、由乃んと同じことを叫ばれても責任持てませんので、ご注意ください。



《―― その、受け継がれたモノに…》


「追いついたよ、瞳子ちゃん。確かに、届いたよ私に・・・。ごきげんよう、瞳子ちゃん・・・。」
アイちゃんから手渡されたロザリオを握り締めながら、祐巳さんは涙をボロボロ流した。
「瞳子、よかった、本当によかったね。」
ロザリオを握った祐巳さんの手を包み込むように手のひらを重ねながら、
乃梨子ちゃんもドロップみたいな涙を流しながら、何度も何度も頷いていた。
およそ300人の桜薔薇さま、ロサ・カニーナによってリレーされ、受け継がれてきたロザリオ。
いったいどれだけの想いを一緒に運んできてくれただろうか。
私は背中から2人の肩を抱いて、感動にうち震えていた。溢れる涙なんて拭おうとも思わなかった。

しばらくたって落ち着きを取り戻した私たちに、
「これが現在の山百合会のメンバーです。」
そう言ってアイちゃんが差し出したのは、この時代の写真だった。
厚みや大きさは、私たちの時代のプリントされた写真と変らないものの、
写真は奥行きのある3Dで表示されている。
専用眼鏡も使わないで、綺麗に立体に見えるのよね、コレ。

写真には、楽しそうに笑いあう7人の少女が写っていた。
バックには、祐巳さんが言っていたように昔と変らない薔薇の館。
しかし、私達3人の視線はある1点に集中していた。
まさか、まさか・・・。
祐巳さんの顔を見ると、眼を大きく見開いて固まっていた。
乃梨子ちゃんは、口を大きく開けて凝固。
一番早く正気に戻った私が、アイちゃんに尋ねる。
「あのね・・・、アイちゃん」いかん、声が震える。
「この人・・・」
私が指さす先をアイちゃんは写真を横から覗きこみ、元気に答えてくれた。
「桜薔薇さまです。その前に座っているのが私のお姉さまで・・・」
頬を桜色に染めながら、そう続けるアイちゃんの話を私たちは聞いちゃいなかった。
私は搾り出すように言葉を重ねる。
「こっ、この髪型は・・・」
「ハイ、桜薔薇さまは必ずこの髪型にするように、義務づけられているんです。」
桜薔薇さまの髪型。それは、とっても立派な縦ロールだった!
義務付けられてるって何? ロザリオ以外にそんなモノまで受け継がせたの?
「実は桜薔薇家にのみ伝承されている、旧い紙のノートがありまして。その中に盾ロールの作り方が詳細に記され・・・」
さらに続くアイちゃんの話に私は耳を覆いたくなった。
「瞳子・・・、アンタなに考えてんのよ。」
乃梨子ちゃんは両手を床につき、がっくりと首を垂れたまま力なくつぶやいた。
ようやく復活した祐巳さんは、引きつった笑顔とともにポツリと言った。
「瞳子、ちゃん。これはいらないかな・・・」
そして、私の頭のなかには、縦ロールを纏った300人の桜薔薇さまのイメージが渦巻いていた。

私の、私たちの感動を返せ〜。


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