【3625】 男子校との交流まさかの行動に  (くま一号 2012-02-07 07:50:13)


「ゆみでーす」
「とうこでーす」
「怪盗紅薔薇華麗に登場!」
「とおぉっ!」

「今回は、登場短かったですね」
「予告(【No:3607】)したやつも書けてないからね」
「大丈夫ですよ。時差の関係でこのあたりは節分が来てもバレンタインが来てもクリスマスはまだまだ来ませんから」
「いやあの、そういうことになって、こんがらがってるからタイムパラドックスものは困るんだよねえ」
「S-キンシップは織り込み済みだったのに、超難解問題集が超難解問題になるとはなあ……」
「マリみてサイドは祥子・祐巳編に一応決着がついて、今なら落ち着いて書き放題と思ったのが甘かったのですわ。反省してくださいお姉さま。間違っても海○さまのせいにしないように」
「うっく。しかも」
「連投阻止支援にもどうやら失敗したようですわねorz」

「そーゆーわけで、かわりにってわけじゃないんだけど、怪盗紅薔薇本編、行っちゃおうか」
「ですからあの、怪盗紅薔薇に本編なんてありましたっけ? 前回の内輪ウケネタを本編と主張します?」

「違うわよ、今回はほんとにやるの。

  ☆マリみてパラドックス 第4.1話☆

です」
「てんいちって……バグ修正?」
「そんなようなもんよ」


 †  †  †


「4つしかない7つのパラドックスをいまさら再開しようという話ですか」
「『その4』の、その後の研究成果を出そうってわけ」
「その4ってなんでしたっけ?」
「マリみて主要キャラの命名規則を追求して16世紀の日本史にツッコミ、桂さんの名字の謎に最終解答といえる決定的な答を出したアレよ【No:659】……3桁だ……ちゃんとリンクできたかな……」
「あー、なんか黒歴史の闇に埋もれたのがありましたわねえ。でも、あの時点で菜々ちゃんまで既に出ていましたわ。続きなんてあるんですか?」
「うん、まあ、補足的にいろいろと、ね」

「いろいろとこじつけてましたからねえ」
「でも、その後の登場人物から考えて、6年以上経った今でも外れてはいないわよ」
「えー?」
「だってあの時の結論ってさあ

   1.主要登場人物の姓は主に戦国時代の人物から取られている。
    (武将が多い。なので、明治維新後の華族の家名と必然的に重なりやすいイメージ)
   2.薔薇の館入りとか、重要なキャラかどうかは、どうやら徳川家康(松平元康)との関係がどうだったかで決まっているらしい?
   3.『福沢』は別枠。付け加えて『二条』は『その4』のネタに使っただけで、やっぱり別枠だと思う。
   4.桂さんの姓はないといったらない。というのはともかくとして、並薔薇さまに姓はない。スールであろうとない。瑞恵ちゃんガンバレ、キミは内親王だ。

 だから、家康こと瞳子ちゃんが真の主人公なんだぞ、えらいんだぞ、という説を打ち立てたのよね」

「まだ『家康こと瞳子ちゃん』を引っ張るおつもりですか? この姉たぬき」
「人のことをうどんみたいに言わないでよ。姉とか妹とかついてても家康と結びつくとどうにも萌えない単語だよね、妹たぬき」
「だからたぬき言うなあぁ。『福沢祐巳』と家康の関係ってたぬきつながりなのかしら?」
「そ、それはひどすぎる……」

「で、菜々ちゃん以後に主要登場人物なんて出てきましたっけ? ええ? いないのではないですの?」
「そうよ、いないわよ。だから外れてないでしょ?」
「おーーーーーい」

「うそ。ちゃんとあるわよ。『ハロー・グッバイ』以後で考えましょうか。『ステップ』はアレだから登場人物の姓はアレにきまっているわよね」
「はいはい、ネタバレ回避乙ですわ」
「『リトル・ホラーズ』の短編は除く」
「結局、誰もいないじゃないですか!」

「ちゃんといるって瞳子。おにぎりタマちゃんとモモっちの『私の巣 マイ・ネスト』コンビが」
「朝倉百と筒井環……あ! 『朝倉』と『筒井』、なるほどまだ続いてるんですね。でも、ずいぶん微妙なところを突いてきてますねえ」
「うん。単行本一冊の主役を張っているけど、今後山百合会に絡むかどうかはわからない。その辺の微妙さが出てるよね」
「『朝倉』は、家康の前半生の宿敵、越前の朝倉義景でしょう」
「織田・徳川連合にとっとと滅ぼされちゃう」
「『筒井』は筒井順慶……ほんとに微妙ですわね」
「日本史の教科書に出てくる、『歴史上微妙な人ベストテン』をやったら、絶対ベストスリーにはいるわね」
「『洞ヶ峠の日和見』のことですか? 本能寺の変で織田信長が死んだあと、明智光秀と豊臣秀吉のどっちが勝つか眺めていたという?」
「うん。実際は秀吉方についていて、日和見していたわけではないっていうのが定説みたいなんだけどさ」
「えーと、調べてみると、筒井家は関ヶ原以後家康方についているんだけど、豊臣との内通を疑われて当主切腹、断絶なのだそうです」
「朝倉、筒井、ともに絶家なのよ。明治以後のお嬢様に結びつかないの。逆に薔薇の館のメンバーの中で、明治まで残らなかった絶家って令さまの『支倉』だけなんだよ」
「支倉道場がもともとあった場所が場所ですから、ひょっとしたら支倉姓には意味があるのかもしれませんね」
「絶家がありならば、加東景さまって清正かもしれないわ。佐藤聖→加東景のネタだけじゃなくてね」

「九州が多いですわ」
「九州、特に長崎に収斂する伏線っぽいものがずいぶん残ってるよね。なにかあるのかも」
「意味ありげに伏せられていたけどステップもそうですよね? ですよね? どちらもキリスト教絡みかしら」
「明治維新後の華族と考えれば西国の大名が多いのも当たり前ではあるんだけどねえ。でも、真美さんと日出実ちゃんを含めるとさあ、あとひとり長崎から鍋島さんとか出てくれば薩長土肥が揃うわね」
「はあ?」
「黄薔薇と新聞部が手を組んで桂さんを押し立てて倒幕に走るかもしれないわよ。由乃さんとキャラかぶってるんだから気をつけなさいね、たぬき家康瞳子ちゃん♪」
「たぬき言うなあぁ! そのときはお姉さまは味方してくださらないんですか!? 瞳子泣きますよ? 号泣しますよ?」
「福翁自伝によれば、福沢さんは慶應義塾の門下生が倒幕佐幕両派に別れて互いに血を流す内戦は馬鹿馬鹿しい、とにかく生き延びろって塾生には説いて、自分は屋敷の塀の隙間とかに隠れて手を出さなかったそうよ」
「えーーーーん、お姉さまに見捨てられる〜〜〜」

「キャラの姓と、史上実在のその姓の人物とのつながりがわずかでもありそうなのって、唯一令さまだけなんだよね」
「実在のその姓の人と関係ないように、特定の個人がモデルと思われないように、周到な配慮がしてあるようにもみえますね」
「うん、瞳子は徳川・松平家と関わりそうもない。由乃さんと島津侯爵家とか絶対関係ない。実在小笠原礼法家元さんは財閥と関係ないし、もちろん私は慶応大学となんの関係もないわ」
「綾小路、京極、西園寺、って、『本物ならば』薔薇の館のキャラたちみたいな戦国大名に比べたら遙かに古い家柄か宮家で、成り上がりの徳川なんてケッ、というくらいの格ですよね、本来は」
「そこをあえて逆転させて、柏木・小笠原・松平の方が由緒ある家柄にしちゃった。そういう種類の配慮が随所にあるように見えてくるんだよ」
「『本物じゃなければ』?」
「戦国時代って、結構勝手に名字を名乗ってるよね。明治維新後に名字のない人に全員名字をつけたときもそう。そういう時代に政治的に実力がない家の名前だったら名乗れちゃう。それはそれでつじつまは合うでしょ?」
「なるほど」

「実在しそうもない姓を作るのではなくて、実在した華族の姓を借りてくるからには、いろいろ考えたんじゃないのかなあ」
「現代物ですから。某野球娘。みたいな90年前なんて、一番やりにくいのではないかしら」
「あれは実在モデルがほとんど特定できるキャラが結構いるし、個人でなくてもたとえば岩崎といったら三菱本家しかないし、最近のラノベにしてはずいぶん割り切ってるよね」
「まるっきりフィクションとわかる野球娘。みたいな場合、これでもいいんでしょう。阿良々木さんとか戦場ヶ原さんとかでは雰囲気変わっちゃいますもの。わたくしのような女優でなければ噛みますし」
「まったいらさん!」
「わたくしの胸あたりを見ながらわざとらしく噛まないでくださいお姉さま! 私は松平瞳子ですっ!」
「違う、わざとだ」
「違ってな〜〜〜い!」


 †  †  †


「と、いうわけなんだけど、これまで花寺ボーイズの命名規則推定をはっきり言えなかったのは、存命どころか現役バリバリの先輩の名前を緒雪さまが使う? まさか? という疑いがあって」
「あのころ言っておけば、やーい、予想してたんだぞーって言えましたのに。また後出しって言われてしまいます。実在推理作家の有栖川有栖さんのことが気になったのでしょう?」
「うん。わかってみれば、花寺生徒会メンバーの名前って、だいたい推理小説つながりなんだよね。サブキャラに広げると、『本』ということになるのかなあ。本の題名、作家名(有栖川さん以外は故人)、登場人物、特に名探偵の名前。本はコミックスも含む」
「そこまではっきりしてみれば、『有栖川有栖』というのは作家名ではなくて、登場人物・名探偵としての有栖川有栖なんですね」
「うん、『その4』を書いた頃は有栖川作品を読んだことなかったし、薬師寺兄弟と高田君はいまでもわかんないし、小林君はマリみてサイドで『ショーネン』って呼ばれたことなかったし、とても確信まではなかったよ」
「それが釈迦みてになったら優お兄さまってば、初対面からいきなり『おまえはショーネン』って決めちゃってますからね。祐麒さんのユキチも。まったくもう」
「柏木さん流の人心掌握術なんだろうけどねえ、呼ばれる方はたまったもんじゃないわよ」

「祐巳さまと同じく祐麒さんは推理小説つながりの除外として、問題は薬師寺さんたちと高田さんですわね」
「高田君は、ほんとに全くわかんない。だれか手がかりがあったら教えてください」
「薬師寺さんたちは、あからさまに薬師寺の日光菩薩月光菩薩ですよね、他につながりようがなくて、かえって理由が分かりません」
『情報求む、です』

「じゃあ、キャラ名解読、一気にいきましょうか」
「……一応、やるんですか」
「まあ、一応」
「あっそ」

「面倒だから箇条書きで行くわよ。

 福沢祐麒(ゆうき=ユキチ)
   福沢諭吉 これは間違いないでしょう。

 小林正念(まさむね=ショーネン)
   小林少年=明智小五郎シリーズ(江戸川乱歩)の少年探偵。

 有栖川金太郎(アリス)
   有栖川有栖。エラリー・クイーンみたいな作家名=探偵名として、作家有栖川有栖の作品に出てくる名探偵。ちょっとキャラの違う、二系統の有栖川有栖がいる。若い頃と後の姿と思って良いのかなあ? あまり読んでなくてごめんなさい。金太郎は一発ネタだと思いたい。

 高田 鉄(まがね=テツ) わかりません、まったく。

 江戸川正史(ランポー)
   江戸川乱歩(エドガー・アラン・ポーをもじった筆名) + 横溝正史。……詩人のランポーはないよね?

 安藤礼一(よしかず=アンドレ)
   あからさまに『ベルサイユの薔薇(池田理代子)』のアンドレ。但し……額っていうか眼の傷は、主人のオスカルを守った時についたんじゃなかったと思うんだけどな。ロザリーをかばったんだっけ? いまベルバラが手元になくて、誰か教えてください。トミさんをあのばあやに置換すると笑えます。男装の麗人のオスカルを柏木さんと置換すると耽美かキモイかぐろいか御自由にご想像ください。

 薬師寺昌光・朋光(日光・月光) ? 薬師寺の仏像以外に、なんかあるかなあ。東塔と西塔のイメージでもあるんだろうけど……。

 モブキャラは何でもありみたいですねえ。口のでかいワニ君が丹羽君だったり。
 現時点の生徒会メンバーはこんなところね」

「つっこみどころは、沢山あるのですけれど。そもそも優お兄さまはどうしましたの?」
「ちょっと問題なの。『無印』から『源氏物語の柏木帖→光の君』って書かれていたから、『本』の定義に一応当てはまるように見えたんだけど……」
「ちがいますの?」
「よく見て。柏木さんを除いて、生徒会執行部全員フルネームでネタになっているのよ。リリアンサイドより花寺サイドの方が規則のシバリがキビシイの」
「あ、そういえば、そうですね。並薔薇さまは逆に姓だけみたいですし。でも、そうするとお姉さま、祐巳さまよりも祐麒さんの名前の方が先に決まったってことになりませんか?」
「うん。祐麒も無印からでてるからね。恐ろしい疑惑がでてくるよね」
「……やっぱり」
「『釈迦みて』が『マリみて』のスピンアウトなのではなく、当初の構想ではむしろ『マリみて』が『釈迦みて』の導入部に過ぎなかったのではないか疑惑」
「いやあぁぁぁぁ。ぁぁぁぁぁ」


 †  †  †


「冗談はともかく」
「1997年という時期を考えると! 当時のコバルトの状況を考えると! 冗談ですませられない気がします!」
「冗・談・は・と・も・か・く!」
「はひっ! 腐っても青表紙属性に腐ってはいけません!」
「優もともかく!」
「は!?」
「いや、『優』という名はとりあえずおいといて、『柏木』の姓だけを先に考えようってことなんだけどね」
「いきなり、なにかとおもいますよ。あーあ、とうとうお姉さまがお兄さまとそういう関係になってしまったかと」
「柏木さん、柏木さん、ああ、どうしてアナタは柏木さんなの?」
「って、えーーー、ジュリエットですか? ほんとにらぶですか? そーなんですかあ?」
「ちがうよ、単純な疑問」
「なんですかそれ」

「最初に無印を読んだときに、不思議だと思わなかった? 『光の君』という通り名を引っ張り出すためだったら源氏物語五十四(タイトルだけの巻を含めて五十五)帖のどのタイトルでもいいはずなのに、なんでわざわざ『柏木』なの?」
「源氏物語の内容に踏み込みますか」
「うん。マリみてのシリーズであれだけ何度も強調されていればね。いずれはそこに行き着くとは思ってた」
「やっぱり超難解問題集のことですね。祐麒さんの、花寺高校一年生二学期の、古典の期末試験内容のとんでもなさ」
「うん。源氏物語の『光源氏が主人公の部分、四十一帖全部』が試験範囲って、どこの大学の国文学研究科なのよ?」

「ですよねー。このネタ振りはなんなんでしょう」
「読者も源氏物語を読んでいなければネタが判らない、なんてことは多分ないと思うの。マリみて、釈迦みてって海外何カ国語かに翻訳されてるものでもあるし、子羊〜イン・ライブラリーあたりから特別でないただの一日あたりの頃みたいに緒雪さまが焦ったように読者に本を読めって勧めることもなくなったし」
「焦ったように、ですか?」
「そんな感じ、しなかった?」
「ずいぶん古典が出てくるなあとは思っていましたけれど、お嬢様学校の教養としては不自然ではありませんでしたから」
「花寺だったらちょっと不自然じゃない?」
「少なくとも、花寺の生徒は、全員源氏物語を原文で一度は読んでいる、という意味の伏線になってしまいますね」
「うん。54って数字は週一回の講義で一年分とするとちょうどいいのよね」
「二学期の期末試験で四十一巻まで来ているとすると、残りの宇治十帖を含むいわゆる第三部十三帖、薫が主人公の部分を三学期の授業でやって一年でぴったり終わります」
「そうそう、ちょうど1月から3月で1クール13回分の放映になるのよ」
「……アニメじゃないんですけど」

「これって『光の君』って呼び名の根拠なんて生やさしいものじゃない、なんか大ネタが仕込んでありそうじゃない?」
「お姉さま、まさか、源氏物語を全文原文で読んで……」
「ない」
「安心しました」
「『あさきゆめみし(大和和紀)』で充分わかるはなしよ。いえ、恋愛関係に絞って人のつながりを追いかけようと思ったら、むしろ原文や現代語訳よりもコミックス訳の方がわかりやすいかも」
「ただし、初期の版は宇治十帖の部分がだいぶ短い上に、元の源氏物語とちがうオリジナルのプロットを含むのだそうです」


 †  †  †


「どんな伏線が隠れていると思われます? あまり原作の予想はしたくないですから簡単にどうぞ」
「そりゃあ、柏木さん、柏木さん、どうして、でしょ」
「どうして優お兄さまの姓が柏木なのか。祐麒さんがおっしゃっていたように『源氏物語を読んでいなくてもどんなお話かはだいたい知っている』という程度の知識ならともかくも……NTR?」
「柏木さんが光源氏だとするならば、そう言うことになるわね。でも、それだったらここまで何度もしつこく、源氏物語の主人公が二人だって強調する必要はないわ。」
「そうですね。今回の試験範囲の強調で三回目? 大事なことだから二回どころじゃありませんわ」
「柏木さん=柏木、というのも肝心の源氏担当者がいなさそうだから、柏木さん=薫が確率が高そう。そうなると……」
「そうなると? 優お兄さまのお父様、柏木の伯父様が源氏ということになりますか? じゃあ柏木は誰? 融小父様に振ってしまうと柏木の伯母様とは実の姉弟ですよ?」
「もう一声」
「でなければ融小父さまが源氏で祥子お姉さまが薫、柏木の伯父様が柏木……ええっ?」

「その設定で全校生徒が源氏物語の全文を読んでいるとするならば……『柏木』さんに『光の君』って名付けるのは……?」

「お、お姉さま! もし事実の裏付けがあったとしたら、それってひどいです! わたくしがあの三人に受けた仕打ちよりもはるかに陰湿でいやらしい、いじめ? イヤミ? そんなもんじゃないですわ、お兄さまの立場なら失脚追放ねらいになりかねませんわ!」

「でしょ? 瞳子なら黙っていられないはずね」
「!! 優お兄さまと祥子お姉さまの実兄妹説も、まだ捨てられないと思わないといけないの!?」
「お姉さまなら最初からそういうこともあり得る設定だもの、いろいろ難しいけど想定の範囲内よ。柏木さんの自分はゲイ発言の理由を一番強力に説明できる設定だしね。
 でもね、それより瞳子、あなた自身が柏木さんの実の妹だったら? 柏木さんと絡むかどうかは別としてS−キンシップには妾宅の子設定の人もあったわよね」
「まさか……ね。でもなあ、可南子さんのお父さんなんて、中学生の娘の先輩に無理やり妊娠疑惑だったのですから、それくらい重い設定があっても不思議ではありませんけれど、まさか……」

「まさかだからSSのネタになるんだけどね。今までこういう予想が当たったことないし」
「わ、私を振り回さないでくだいさませ〜〜! お姉さま、今回は意地悪を通り越して妹虐待ですぅ。瞳子泣きます! うえぇぇぇぇん」


 †  †  †


「どうどうどう。はい、深呼吸」
「かーーこーー、ルーーク、お前は私の母だ。レイアは愛人でハン・ソロは娘でC3POは姉でR2D2は孫だ。エンディングで主要登場人物みんな血縁だ。
 まあ、なんて昭和チックなシナリオの王道でしょう」
「わけわかんなくなってるよ瞳子!」

「祐巳さまの『プレイボーイ一代記』発言に、源氏物語の主人公は一人じゃないってツッコミを入れたのは由乃さまでしたね」
「由乃さんはいいの。その日の夜、大事なことだから二度言った祐麒の方が大問題」
「『源氏物語を読んでいなくても知ってる……』って、祐麒さん! なに誤魔化してるんですか! 祐巳さまの修学旅行前の段階で、祐麒さん、事情を全部知ってるってこと!?」

「そうね、そして多分瞳子も祥子さまも知らない」
「……なんてこと……お姉さまには意味不明だったはずの、姉弟古語辞典交換イベントっていつでしたっけ?」
「『超難解問題集』の裏だもの、『いばらの森』よ。一年生二学期の期末試験前。マリみて現在三十六冊シリーズの、第三巻。1998年、かな? でもやっぱり、冗談はともかく、よ」
「冗談はともかくですっ!」

「もうひとつ、ありますわね。光源氏が紫の上を引き取って育て、源氏自身が亡くなるまで住んだお邸は?」
「……二条院……か」


 †  †  †


「それにしても、キャラの命名だけをネタに、しょーもない妄想を暴走させますわね、いつもながら」
「ごめん、でも、新キャラが出てきたときになにかの参考になるかなーってね。源氏物語関係なら『華の名をかたる者』をチェックしていればわかりそうだし」
「その先入観は邪魔にしかならないと思いますわ……」


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