【3634】 甘く危険過ぎる香り秘密の会議室  (bqex 2012-03-17 20:19:46)


宣伝と称してネタバレ……というより好き勝手やってやります。もうどうにでもなりやがれ。


「事件です」

 お約束通り乃梨子が薔薇の館の会議室に足を踏み入れた時、その場所には志摩子さんしかいなかった。

「あれ、今日二人? いいや、うp主も二日も遅れちゃったことだし。えーと、『マリア様がみてる フェアウェル ブーケ』が2012年4月28日に発売されます。前回『釈迦みて』宣伝でご存知のように短編集です。というか、もう『マリみて』は短編集しか出ません。ええ。私には永遠に妹はできません」

 がっくり、と乃梨子は肩を落とす。

「乃梨子、もうやる気のなくなった緒雪先生の年金収入に協力お疲れさま」

「自らそんなこと言わないで下さいよおっ! いつものwktk感はどこに行ったんですかあっ!?」

 乃梨子は涙目で突っ込んだ。

「もうどうだっていいの。C○baltをBLノベル誌にしたいけどこのご時世予算が取れなくて確実に振り込む『マリみて』オタ向けに我々どころかマリア様が見ていらっしゃろうがが見ていらっしゃらなかろうが関係のないただの女子高話に『マリみて』のタイトルつけてたまに掲載したり、全プレCDに中途半端なドラマでぶっこんだりするような大人たちのお先棒を担ぐだなんてもう疲れたわ」

「ぶっちゃけすぎですよ! 希望は!? 希望はないんですか?」

「ないわね」

 乃梨子はぶっ飛んだ!
 バーゲンセールに突進するおばちゃんの群れの前に放り出された新入社員のようにぶっ飛んだ。

「あ、間ののりしろみたいな部分では出番があるのにそれを言うんですかっ!?」

 よろよろと立ちあがりながら乃梨子は言った。

「乃梨子、2012年3月号に掲載された『おっぱいクッキー』は入るの? 入ったら、私はどういう風に『おっぱいクッキー』につながるフリをすればいいのかしら?」

「ぐっ……」

 言葉に詰まる乃梨子。

「二次創作ではそりゃあいろいろやってるわよ。乃梨子に○○して××して、△△な感じで☆☆したあと凸凹×に至るなんて日常茶飯事だけど――」

「伏字にすればいいってもんじゃないですよね! さらっとそんなこと言わないで下さいよ!」

 信じられない志摩子さんの暴言を伏字なしで聞いちゃった乃梨子。お察しください。

「でも、仮にも公式で私たちは『おっぱいクッキー』のフリをしなきゃいけないのよ。どういう展開になるのか予想できて?」

 なんという『公式が病気』。

「そ、それは……『変な形のクッキーが』とか内容に合わせてなんとかかんとかうまいことやるんですよ、プロの先生は」

「大人なんてもう信じちゃだめよ! どれだけ汚れてると思ってるの!?」

「いや、この話読む限り今日の志摩子さんはダメですよ。NGです。がちゃSの黒歴史です。スパムと一緒に消されてください」

 志摩子さんは頭を振った。

「乃梨子、もう『マリみて』は終戦どころか戦後なの。陽の当たらないエログロ耽美ナンセンスなんでもござれのカオス世界に突入したの」

「いや、今までもそういう感じでしたけど。って、うp主はまず自分の話を見直そうか」

「百合の世界に少女と少女が二人きり。目と目があって、手と手が触れて……さあ、いらっしゃい」

「何を言ってるんですかっ! おかしいでしょ! このうp主の話で文字色がピンクで百合注意って書いてあったらキスぐらい期待するでしょう。『ガチ乃梨子』だったら喜ぶかもしれません。でも、私は『マリみて』の宣伝のためにきた『真面目乃梨子ちゃん』なんですから、やめましょう!」

 乃梨子は突然崩れ落ちた。

「……な?」

「あらあら。口では嫌がっていても体はいやがってないじゃない」

「ちょっと待ったーっ!」

 会議室の扉が勢いよく開いて聖さまが駆け付けた。

「うわっ! 麻酔効果のあるお香なんか焚いちゃって、やめなさいっ!」

 聖さまは当身で志摩子さんを気絶させた。

「ど、どういうことなんですか?」

「ごめん、夕べ『ガチエロ志摩子』モードに切り替えて今朝戻すの忘れちゃって」

「なんか、宣伝に不適当な語句と内容が並んでいますが」

「今はスルーして。とにかく今すぐに戻すから」

 志摩子さんの首筋にある謎のスイッチを押す聖さま。

「ん……」

 間もなく志摩子さんは目覚めた。

「あら、私はどうしたのかしら? ……ここは薔薇の館? まあ、お姉さま。乃梨子も。一体何事?」

 『ふわふわ志摩子さん』に戻ったようだ。乃梨子と聖さまはとりあえずホッとするが。

「ええと、今の状況は……」

「うわーっ、この話読み返しちゃダメーっ!」

 遅かった。
 乃梨子と聖さまは脱兎のごとくビスケットの扉を出たが。

「ロサロサギガギガギガンティア〜っ! 魔法少女志摩子に変身! 何でも解決! 銃で!」

 背後からただならぬ殺気が発せられていた。

「なんで朝戻さなかったんですかっ!」

「夕べ激しすぎて寝坊しちゃって……ゴメンね」

「聖さまのばか〜っ!」



 中庭で祐巳さまと瞳子が日向ぼっこをしている。

「お姉さま、そういえば、『マリア様がみてる フェアウェル ブーケ』が2012年4月28日に発売されるそうですよ」

「ふーん」

 どか〜ん!

「……なんだろう、今の?」

「薔薇の館からでしょうか。まあ、魔法少女志摩子にはよくある出来事ですよ」

「そっか。リリアンは今日も平和だね」

「そうですね」

 二人は「助けて〜っ!」「私は被害者なのに〜っ!」という叫びを無視して優雅に午後のひと時を楽しむのであった。


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