【3646】 藤堂江利子  (環 2012-04-08 15:18:46)


【No:3643】→これ

* * *

先に立ち上がった志摩子が優しく右手を差し出してくれた。
私はその右手を掴み、「どうもありがとう」と言って、立ち上がろうとした矢先に、部屋の扉がノックも無しに勢い良く開いた。
「朝から、ウルサイわよ!」
「ひゃっ!」「…あんっ」
思わず驚いて、私は志摩子に飛びついた。
志摩子ったらちょっと抱きついたくらいで、可愛い声だして…もぅ。
って、ダメよダメダメ。しっかりするのよ蓉子!

志摩子の温もりを堪能したかったけれども仕方ないが泣く泣く離れ、ノックも無しに入ってきた愚か者を見る事にした。
…リリアン中等部で知り合った親友の一人。
『鳥居江利子』が目の前で鬼の形相で立ち尽くしている。
しかも、寝間着なのか何なのか分からないが、大きめのTシャツ一枚しか身に着けていない…。
白く長い脚がスラリと伸びて、女の私でもドキドキしてしまう。
くぅ〜、グッジョブよ!何て言えるわけでもなかった。

「え…江利子」「…お母さま」
『え?』っと思わず志摩子を凝視した。
嫌々、お願いだから目があっただけで恋する乙女みたく頬を紅く染めないでよ、こっちまで照れるじゃない。

江利子がお母さま…。
何?そういう設定なの?設定…じゃなくて志摩子は何て言った?

「そろそろ、貴方達離れなさいよ。見てるこっちが恥ずかしいじゃない」
「え、ええ」
それにしてもと思う。
いくら日本の法律で16歳で結婚できるといっても、学生結婚何て…でも江利子なら有り得るわね。
でも、熊さんはどうなったのだろう?

「え、江利子?」
「…蓉子、いくらなんでも、志摩子みたいに『お母さま』とか若しくは『ママ』とか、いっその事『エリリン』とかって呼べないの?」
素朴な疑問を聞こうと思ったけれども、間髪いれずに、無茶な事を言う。
エリリンって…真顔で言われても呼べるはずがない。
「……」
「…まあ、いいわ。蓉子も志摩子も朝ご飯の用意を手伝いなさい。ダーリンがそろそろ経を終えるから」
うわ『ダーリン』何て言ってるんだ。
しかも『ダーリン』の所で江利子が紅くなった。

「…何よ?その含み笑い」
「何でもないわよ」
「そう?それより蓉子。何でもいいけれど上着のボタンくらいつけなさい。志摩子がさっきからチラチラと見て紅くなってるから」
「きゃあ!」
思わず私はその場にしゃがみ込んだ。
迂闊だ…そもそもパジャマに着替えた覚えさえないのだが。

「お堅い蓉子が遂に志摩子をその道に連れ込むとは…おもしろい」
「え?」
何を言っているのか分からない。
その道?どの道?こんな道?何て何を考えているのだろう。

「姉妹の一線だけは越えちゃだめよ?」
「なっ!」
私をからかって満足したのであろうか。
お日様満点の笑顔で部屋を出て行こうとするも、一度こちらを振り向いた。
まるで、獲物を狙ったかのように…鋭い目をギラギラとしていた。
そして、何事も言わずに出て行った。

怖かった。
恐ろしかった。
何を思いついたのであろうか?きっとあの江利子の事だ。
このままですむ筈は無いというのは分かった。

「ふうっ」と一つ深い溜息が漏れた。
志摩子は心配そうな顔で私を見て、両手で優しく私の手を握ってくれた。
まるで聖母マリアさまみたいな子だ。

「大丈夫ですから。私はお姉さまの味方ですから。例えお母さまでも倒しますから」と、力づけてくれるのだけれど、志摩子の目は笑ってなかった。
前言撤回だ…。
「それに…」
もじもじと両手を口に当て小さな声で呟いているけれど何を言っているのかは聞こえない。
もう、何て可愛らしいのかしら!志摩子が妹でよかった。


志摩子と目が会う。
ほら…ポっと赤面して恥らう姿が可愛らしい。
それに…。
志摩子は出る所はしっかりと出ていて…でも江利子だって出る所は出ている。
しかも大きめのTシャツからすらりと伸びた足が、まだ目の奥に焼きついている。
目の前の志摩子も棄てがたいし…って…まるで『水野蓉子』は変態さんじゃないの!
いいのか…だって私は『藤堂蓉子』なんだし…あれ?あれ?まあいいや!今の私は『藤堂蓉子』なのだ。

* * *

誤字、脱字や文章がおかしかったりと色々読みづらいとは思いますが、調子に乗って二作目を書かせて頂きました。
趣味の領域で書いているので、温かく見守って下さると嬉しいです。
では、最後になりましたが読んで頂きありがとうございました。


一つ戻る   一つ進む