【No:3643】→【No:3646】→これ
* * *
洗面所で顔を洗っていると何処からともなく、「蓉子ちゃん、お早う」と声が聞こえた。
『え?』っと声のする方を見ると、トコトコと微笑みながら近寄って来る。
『誰?』と思わず言いそうになったけれど、そこはグっと我慢。
よく見ると、可愛らしいセミロングの天然パーマの女の子だ。
顔とアンバランスに豊かなお胸が『たゆんたゆん』と揺れている。
「えへへ、どうしたの?そんなニヤケた顔して」と言って、私の腕にしがみついてきた。
『ちょっと、当たってる』何て嬉しい悲鳴もあげれず、私のニヤケ面が物悲しい。
私の腕に捕まっているのが嬉しいのか更に、お胸を押し付けてくる。
これではいけないと思い、悲しいけれど『ちょっと離しなさい』と言いかけた時に、『トトトト』と廊下を走る音が聞こえた。
「し、笙子ちゃん!私のお姉さまから離れなさい!」
ふむふむ。
この子は笙子ちゃんというのね。
それにしても、『私のお姉さま』何て…って、志摩子、顔が怖いわよ。
聖母マリアじゃなくって黒い志摩子さまじゃない。
「いいじゃん、昨日しまちゃんは、心配だからって顔を紅にして蓉子ちゃんと寝たんだから」
「それはそれよ。いいからその手を離しなさい」
「ええ〜」
渋々、笙子ちゃんは私の腕にしがみ付いてた手を離した。
それにしても…次から次へと、私の姉妹は何人いるのかしら…。
思い切って聞いてみる事にした。
「え…え〜と、志摩子?家は何人姉妹なの?」
「三人ですが?」
「そうよね。幾ら何でもこれ以上姉妹は増えないわよね」
「……忘れるのも仕方ないですが一年に数える程しか帰って来ない兄がいます」
「そ…そうだったわね」
知らない何て言えなかった…。
「え…え〜と、し、笙子…ちゃんは勿論リリアンよね?」
「うん、やっと中等部三年生になるの」
ふむふむ。
まだ中等部なのか。
これから更に上が目指せるとは、むふふ。
将来の発育が楽しみね。
「志摩子は、リリアンの付属の大学生になるのよね?」
「え、え〜と、まだ高等部一年生になったばかりなので、将来の事はまだ…」
『え〜』と思わず叫びそうになった。
高等部って何?又一年に戻ったのかしら…『嫌』違うわね。
なるほど、これは俗に言う、『タイム・スト……スリップ』という事か。
これでも他大学の法学部まで上り詰めたのだ。
その理論で言うと、私は高等部三年生という事になるわね…ふふふ、さすが紅薔薇は伊達じゃないってとこかしらね。
「じゃあ、私は高等部三年生ね」
「……」「……」
何?その沈黙…間違ってるの?それとも私だけやっぱり大学生なの?
志摩子も笙子ちゃんも目が笑っていない…寧ろ哀れんでいる。
「…お姉さま」
「は…はい」
ねぇ志摩子さま。お願いだから、この世の終わりみたいに私を見ないでちょうだい。
『私は可愛そうな子じゃないのよ』と、声を大にして言いたいけど、そんな事も言ってられる状況じゃない。
「お姉さまは…高等部二年生です…」
「……そう」
「ちなみに江利子は?」
「……高等部三年生です…」
「………」
『ガーン』という効果音が頭の中で鳴り響き、その場で倒れそうになったのを、慌てて志摩子が受け止めてくれた。
「お、お姉さま?」「よ、蓉子ちゃん?」
ああ…志摩子。
目をウルウルさせて心配しなくてもいいから…もっと強く抱きしめてほしいな…。
一歩遅れたのか笙子ちゃんは私の手を握ってブンブン振りながら『蓉子ちゃん、蓉子ちゃん』と呼び続ける。
ええ…笙子ちゃん。
大丈夫だから、そんなにブンブン動かしたらダメよ…胸が、豊かな胸が揺れているから…。
* * *
最後まで読んで頂きありがとうございました。
そして連投ですみません。
余りにも趣旨と違うようであれば、管理人さんの都合で消して頂けたら幸いです。