【3648】 美少女双子姉妹全力で本気出した  (環 2012-04-15 13:55:07)


ごめんなさい。
勝手に『令』と『三奈子』が双子設定にしております。


* * *

「ねぇ、三奈子。そろそろ起きなさいよ」
両肩を『ゆっさゆっさ』と揺すっても、ピクリとも動きはしない。
まるで、死人が横たわったかの様だが、決して死んでいるわけではない。
その証拠に、顔を覗くと赤ちゃんみたいに安らかに眠っている。

「もぅ、寝顔だけは本当に可愛いんだけどね」
そう言うと令は愛用の『猫じゃらし』を握りしめ、未だ寝ている三奈子の鼻をくすぐりだした。

「…んっ……うぅん…」
何とも艶やかな甘い声が洩れてくる。
いつも、家ではおろか学校ですら令を掻き回す三奈子であったが、この時ばかりは令の玩具になっている。

「ふふふ、ほらほら起きなさい」
無意識に払いのけようとする三奈子であったが、勿論『猫じゃらし』は見えないので奪われたりはしない。

「…んっ…ふぇっ…ふぇっ…へクチンっ」
あっ起きてしまった。
何とも可愛らしいクシャミをする。

鼻がむず痒いのだろう、軽く人差し指で掻いた後『ぷぅ』っと頬を膨らませ「もぅ…普通に起こしてよ」と言う。
『始めは普通に起こしたよ』と言いたい。
けれども、『嘘だ〜私これでも記者を目指しているんだから一声あれば起きるわよ。そもそも令は……』と小言を言われるのが関の山なのだ。
意識が次第にはっきりと覚醒する三奈子に口で勝てる自信は全くない。

「ごめんね、三奈子」と言うと、「まぁ、いいけど…」何て言って窓のカーテンをさっと開けた。
三奈子は眩しそうに目を細め暫く外を眺めていた。

何を見ているのか気になって一歩近づくと、ちらりとこちらを振り向きドキっとする様な微笑みで「そうだ…令、おはよう」と言った。
「ええ、おはよう」
私は普通に言えたであろうか?
意識はしていないけれど、何故か三奈子に『きゅん』としてしまう。
……正直に言えば、隣に住んでる『由乃』にもそうだし、姉(グラン・スール)の『江利子』にも『きゅん』とする。
私って惚れっぽいのだろうか?何て考えながら窓の外を三奈子と同じように見つめると、とっくにお日様は顔を出していた。

それもそのはず。
私は休みだからといって朝の六時には目を覚まし、日課である道場で素振りをし終えすでに支倉家自慢の『檜造りのお風呂』を済ましたのだ。

ふと隣の三奈子の様子が可笑しいのに気がついた。
平静を装っているけれど、生まれてきた時から一緒にいるのだ。
何でも無いって顔をして手を小さく振っているけど、明らかに様子が可笑しい…。
ん?手を振っている?誰に?

三奈子が手を振っているであろうその視線の先には、隣に住む島津家、由乃の双子の妹である『真美』が窓辺に立っていて、呆れた顔をしていた。
私も、一応『おはよう』の意味を込めて小さく手を振って、それに気付いた真美は慌てて小さくお辞儀をした。
私には全然気がつかなかったらしい…真美は小さい時から三奈子を意識していたのは知っていたけれど、ちょっぴり寂しい複雑な気分である。

「ねぇ、三奈子?真美ちゃん何か怒ってる気がするんだけど?」
「……えぇ、確実に真美たんは怒っているわね…」
苦笑いで答える三奈子は理由があるのだろう。
部屋のクローゼットの扉を『バン』っと勢いよく開けた。

「今日公開する映画があって、真美たんと行く約束をしていたのよ」
罰が悪そうに頭をポリポリと掻きながら、困ったぞと顔にしながら言った。
『私聞いてないわよ』と言いかけた時に、「ほら、今回上映する映画ってホラーだから、令の趣味じゃないでしょ?」と苦笑いしながら気遣ってくれた。
確かにホラーは見たいとは思わないけれども、一言ぐらいあってもいいのでは?と思ってしまう。
解っている…ヤキモチだと解っているのだ。
けれども、そんな事は絶対に三奈子には言えないし、顔にも出したくなかった。
イソイソと服を選んでいる三奈子を見ながら話題を変えようと、何気なしに机を見た。

「昨日もまた徹夜したの?」
「えぇ…まあね。書き出したらペンがとまらなくてさ」
『えへ』と三奈子は小さく舌を出す。
『ヤレヤレ』何て顔をしていると人差し指を『ビシ』っと突き出した。

「話題は生ものなのよ!常に世界は動いているのよ!」
「そんなに毎日ネタ何て転がってないでしょ?そもそも学校も春休みなのに…」
「わかってないわねぇ、ネタ何てそこら中にあるじゃない。もっとも私にとっては黄薔薇さまの蕾が家にいる事で得してるけど」
「ちょ、ちょっと三奈子。又私の事でも書くの?」
驚いた私は慌てて机にある走り書きを覗き込んだ。

そもそも中等部の頃は新聞部というのがなかった。
仮にあったとしても中等部は先生達の指導も厳しく、好き勝手にできなかったであろう。
しかし、三奈子は高等部に上がりすぐに新聞部に入部した。
入部した三奈子はすぐに開花し、新聞部で絶対的な存在になってしまった。
それはもう見ているこちらもすごく楽しそうに見えた。
三奈子はスクープと言っては極端な記事を書き、リリアン瓦版に載せるのだ。
ネタがない時は作ればいい…何て黄薔薇の蕾の妹になった私は散々瓦版の餌食になってしまった。
同じ屋根の下に暮らしているのだ。
書くネタなんて私に限ってはいくらでもあるのかもしれない。
小さい出来事が、すごく膨らんで大袈裟な記事になるのだ。

一通り読んでみたけれど、極端にひどい内容は見当たらなかった。
メモ用紙を机の上に置こうとし、何気に時計が目にはいった。
「あら?もう11時30分だけれど、時間大丈夫なの?」
「へっ?もうそんな時間なの?いけない、12時に真美たんを向かえに行くって約束したのに間に合わないよ〜」
オロオロとしながら、「何でもいいや」と言い適当に服を着ようとするのを私は慌てて止め「これにしなさい」と一着の服を選んだ。

「…うーん。まぁ令がそう言うなら」
『これ私に似合うのかしら?』何て顔をしているけれど、誰が見ても似合ってると言ってくれるはずだ。
三奈子の選ぶ服は言ってはあれだがセンスが全くない…。
可愛らしい服もいっぱいあるのに、何故か自分で選ぶと滑稽に見えてしまう。
すごくもったいないと思う。

イソイソと三奈子はパジャマを脱ぎ、あらわとなった肌は決め細やかな白い肌をしている。
思わず顔が緩んでしまうほど、どうしてこうも色っぽいのだろうと同じ双子なのにと思ってしまう。
こうして改めて三奈子を見ると、型のいい美乳で腰から太ももにかけてのなんとも悩ましい曲線を描いている。
『令』はベリーショートヘアに加え、更に長身で美少年のように見え、何となくスカートやワンピースといった洋服は無縁の世界に生きている。

シックなワンピースを袖を通した三奈子はやはりとても可愛らしかった。
何が気に入らないのか三奈子は「う〜ん」と唸っているけど…。

「ほら、三奈子後ろ向いてよ。髪を梳かしてあげるから」
三奈子の髪は私より遥かに長く、羨ましいくらいに綺麗な髪質で真っ直ぐなストレート。
私は大きめのブラシで梳かし、トレードマークのポニーテールにしてあげた。

「どう?」
姿鏡の前でゆっくりと一回転しながら「えへへ、令ありがとう」と照れくさそうに言った。
私は「どういたしまして」と、軽く肩に両手をのせ、「ほら、行っといで」とドアに向かって三奈子を押した。
ドアノブに手を掛け一度こちらに振り向き「行ってきます」と笑顔で部屋を出て行くった。

「そんなに『真美』ちゃんがかわいいかね?」
部屋に取り残された私は、誰に聞かせるのではなく独り言を呟き、散らかり放題の三奈子の机を片付けだした。


『令』も『三奈子』も知らない。
近所では絶対的な双子の美少女で通っている事を…。

『由乃』と『真美』は知らない。
近所ではとても残念な双子の美少女で通っている事を…。

* * *

誤字、脱字や文章がおかしかったりと色々読みづらいとは思いますが許して下さい。


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